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大人の発達障害

2015年日本精神神経学会「成人発達障害」も満員でした。2011年2012年にて企画を立案した宮岡等先生は内山登紀夫先生にお話をうかがう形で「大人の発達障害ってそういうことだったのか」を著しました。発達障害はこれまで児童精神科の範疇に留められてきましたが、メディアの啓発もあり成人、大人の事例も散見されるようになりました。銀座泰明クリニックへも様々な理由で受診されていますので、これを機にまとめておきましょう。

発達障害は自閉症スペクトラム障害、注意欠陥障害、学習障害などを含みますが、最も問題とされていますのが自閉症スペクトラム障害です。これは広汎性発達障害、アスペルガー障害、高機能自閉症など様々な呼び名がありますが、近年、「自閉症スペクトラム障害 Autistic Spectrum Disorder. ASD」 に収束しつつあります。基本となる症状は、「社会性、コミュニケーション、イマジネーション」いわゆる「三つ組みの障害」です。具体的には、人よりも物に関心がある、こだわり行動(物を並べる、特定の物を集める、変化を嫌う)、言葉の遅れ、言葉の偏り、感覚過敏などです。子ども時代には、ごっこ遊びができない、グループに入れない、イジメられる、孤立的になる、突飛な行動をとる、エキセントリック、オタク、コミュニケーションに乏しい、発達の凸凹が目立つことなどです。これが大人になると・・・会社で世間話をできない、宴会に参加できない、派閥に入れない、パワハラに遭う、孤立的になる、コミュニケーションに乏しいなど挙げられます。家庭では・・・夫婦間・親子間の会話に乏しい、触れ合いに乏しい、コミュニケーションに乏しい、そもそも、愛に乏しいということになります。このため、職場不適応、夫婦不和といった適応障害という主訴で受診することが多く、よくよくお話をうかがうと、背景に発達障害が見えてくるわけです。

「注意欠陥障害 Attention Deficit Hyperactivitiy Disorder」 は不注意、多動性、衝動性を特徴とします。具体的には、気が散る、じっとしていられない、思いついたらすぐ行動するなどです。「学習障害 Learning Disorder」は知的障害がないにもかかわらず、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」こといずれか一つ以上に支障を来たす障害です。

発達障害は生得的な特性であり、治る/治らないというものではありません。特性を多少緩めながら環境調整をしながら周囲と折り合い生きてまいりましょう。その際、特にASDの方は内省を苦手とするものですから、周囲が問題点を分かりやすく指摘するとよいです。さらに、聴覚情報も苦手とするものですから、視覚情報として、言葉を文字にして渡すとなおよいでしょう。

発達障害、「障害」と診断するには、仕事や生活に支障を生じているわけですが、その手前で支障を生じていない方々は自閉的な傾向などを活かしています。すなわち、高度な集中力や記憶力、さらに発想力などを発揮しています。その極めた形が「サヴァン症候群」といわれる天才の方々です。このように、能力にも光と影があり、うまく光輝くよう、周囲の方々が配慮して下さることを願う次第です。



銀座泰明クリニック
 
2015.07.26 Sunday 23:04 | - | trackbacks(0) | 

「心の病、はじめが肝心 早期発見、早期治療の最新ガイド」水野雅文著



筆者(茅野分)の恩師、水野雅文先生による新書が出版されました。「心の病」に関する一次予防(発病予防)・二次予防(早期発見・早期治療)・三次予防(リハビリテーション)について、最新の知見が余すところなく、分かりやすく書かれています。一読して、水野先生の講義を聴いているような、座談会にてお話を聴いているような錯覚を覚えました。

なかでも、第3章「心の病を重くしないコツ、病気は治り方が大事」の一節は読みごたえあります。「乗り越えた実感が大事、価値観を大きく変えなければ、がんばりきれません」「罹患することを、かえって奇貨と考え、新しい自分を獲得していくことが大事です。人生の価値、楽しみを積極的に見つけましょう。とくに、自己実現の方法を会社以外に見つけることは、どんなに人にも大切です。精神疾患からの回復記念に『生き方は一つではない』と考え直してみるのもいいことだと思います」は水野先生ならではの「リカバリー」の定義ではないかと思うほどに説得力があります。心の病になることは、病自体の苦しみもさることながら、「心の病」であることの「スティグマ(偏見)」に、周囲の視線、そして自尊心が傷つき、苦しみます。このため、本当の「リカバリー」とは水野先生のおっしゃるように、病を「乗り越え」、むしろより良い生き方や人生観を身につけることだと言えるでしょう。

さらに、第5章「『心に効く』生活習慣とは?」における「ポジティブシンキング」「『楽しいときを』を心に刻んでおく」「小さな趣味の大きな価値」「運動は『万薬の長』」「心の栄養−『地中海ダイエット』」「家族関係をつくり直す」は水野先生の人生観が具体的に語られているようで貴重です。「毎日、笑顔で」「ポジティブに」働くための生活習慣がいくつも紹介されています。心の病に罹(かか)られた方はもとより、健康な方も、より健康になるため、ぜひ一度ご一読くださいませ。


銀座泰明クリニック
2015.07.05 Sunday 09:30 | - | trackbacks(0) | 

内観療法

それでは怒りや憎しみを減じ、愛や喜びへ変えるにはどうすればよいのでしょう。一つの方法として、日本の伝統的な自己変革的な治療法である「内観療法」を挙げることができます。
 

吉本伊信らが1940年代に開発した自己観察法です。「悟り」(宿善開発、転迷開悟、一念に遭う、など)を開くことを目的とし、「いかなる境遇にあっても感謝報恩の気持ちで幸せに日暮らしできる」ために行います。
 

内観者は6泊7日の「集中内観」を基本とし、内観研修所に宿泊し、「内観三項目」「ご迷惑かけたこと」「お世話いただいたこと」「して返したこと」を母からはじめ、父、兄弟姉妹など、これまでの人生に関わった方々を順々に調べ尽くします。朝5時から夜9時まで、トイレやフロの時間も「1分1秒、惜しんで内観する」。その間、面接者が1−2時間おき、1日に8−10回、約5分の面接を繰り返します。


これにより、人生の不安・苦悩・動揺などから逃げず、目をそらさず、むしろ不安・苦悩・動揺に沈潜し、「生の実相」を覚知します。そして、自分の外部にある富や名誉・社会的地位、そして死などに対し、いわば「無関心」の態度を堅持することで、「自由」「心の平静」を得ることができるのです。


内観療法の治療機序は、内観三項目を想起し、主観的および客観的に自己観察(セルフ・モニタリング)を行うことにより、「自己発見」へ至ります。その際、母性的な「恩愛感」の庇護のもとに父性的な「自責感」を深めることで、「我執から解放」されることを特徴とする、東洋・日本ならではの心理療法です。



銀座泰明クリニック
 

2015.04.30 Thursday 22:29 | - | trackbacks(0) | 

半沢直樹/TBS・ドラマより

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バブル期入行世代の葛藤と苦悩に満ちた戦いを鮮やかに描き出す。
基本は性善説。ただしやられたら倍返し!
型破りのバンカー、半沢直樹の伝説の始まりだ!

いまさらですが、堺雅人さん主演のドラマと言えば「半沢直樹」をご紹介しないわけにはいきません。バブル崩壊後の都市銀行を舞台に中間管理職の葛藤と苦悩に満ちたドラマが繰り広げられます。

「部下の手柄は上司のもの、上司の失敗は部下の責任」「銀行は人事が全てだよ」「銀行は晴れた日に傘を貸して、雨の日に取り上げるって」「どんな仕事をしてもええ、せやけど人と人とのつながりだけは大切にせなアカン、ロボットみたいな仕事なんかしたらアカン」「人の善意は信じますが、やられらやり返す、倍返しだ!それが私の流儀なんでね」などの名言が聞かれました。

いずれも地位と正義が交錯するなかで、生じざるをえない矛盾といってもよいでしょう。実社会では分かっていても語られてことのない真実ですが、ドラマではデフォルメされ、セリフとなり語られました。そして半沢直樹に「倍返し」させることで、痛快な物語となりました。

しかし「倍返し」することはよいことでしょうか?上司らは涙を流し、土下座をし、半沢に軍配が上がりました。われわれ視聴者は胸のすく思いでした。ところが実際の世の中へ目を転ずるとそうも行きません。アメリカとイスラムの戦争しかり加害者と被害者は常に入れ替わり憎しみは連鎖します。したがって、お返しすることなく、むしろ「罪を憎んで人を憎まず」という「赦し(ゆるし)」が必要ではないかとも思う次第です。

銀座泰明クリニック
2015.04.29 Wednesday 13:41 | - | trackbacks(0) | 

Dr. 倫太郎/日本テレビ・ドラマより

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これはある精神科医の物語。彼の名前は、日野倫太郎(堺雅人)。傷ついた人々の心にとことん寄り添い、その病める心を解きほぐしていく。書籍も出版し、テレビにも出演する。彼の診療を待ち望む人々は増える一方だ。

そんな彼なのだが、自身の恋愛は全く不得手だ。「恋愛とは一過性の精神疾患のような状態である」とさえ言っている。ある日、大学の理事長、円城寺との会食で、一人の女性と出会う。彼女の名前は、夢乃(蒼井優)。新橋の売れっ子芸者だ。

この出会いが彼の人生を大きく変えていくなど、この時の倫太郎は知る由もなかった・・・
 

いよいよはじまりました。半沢直樹で大ブレイクした堺雅人さん演ずるスーパー精神科医のテレビドラマです。第1回目を拝見しました。型破り、それはない、という、コメディ、フィクションですが、そんな精神科医がいてくれたらいいのにな、という願望かもしれませんね。「傷ついた人々の心にとことこん寄り添う」ため、時間を惜しまず、場所を選ばず、診療を行います。第1話では通りすがりの方と飛び降り自殺に心中しました!(クッションの上に着地)。この先どのような展開になっていくのか・・・

倫太郎は夢乃との治療関係を逸脱していきます。医者と患者との倫理的な関係から、男女の情欲の関係に陥っていくのです。といいますのは、「Dr.倫太郎」には原作があり、そのような展開を迎えます(ネタバレを申し訳ありません、楽しみな方は後ほどお読み下さいませ)。「セラピューティック・ラブ」という小説です。「清心海(せいしんかい)」という精神科医が書いたそうですが、相当な実力の精神分析医です。500ページの大著ですが、テレビと合わせてお楽しみ下さいませ。

銀座泰明クリニック

2015.04.22 Wednesday 10:11 | - | trackbacks(0) | 

拡大自殺の疑い/ドイツ機墜落事故

【ベルリン共同】フランス南部のドイツ機墜落で、ドイツ捜査当局は27日、機体を故意に墜落させた疑いが持たれているアンドレアス・ルビッツ副操縦士(27)の自宅から、破られた医療機関の診断書を押収したと発表した。診断書は墜落当日の24日を含め「乗務不可」とする内容。精神的な病気を勤務先に隠していた可能性があるとみている。

 当局は副操縦士の自宅などから押収したコンピューターなどを分析。人間関係や金銭問題でトラブルや精神的なストレスを抱えていなかったかなど、動機や背景の解明を急いでいる。

「副操縦士の実家」の画像検索結果

 当局は病名を明らかにしていないが、ドイツ紙ビルトは27日、副操縦士が6年前に精神疾患を患い、合計1年半の間、治療を受けていたと報じた。墜落機を運航していた格安航空ジャーマンウイングスの親会社ルフトハンザ航空の関係者らの話として伝えた。また、治安当局筋の話で副操縦士が最近、交際女性との関係で悩んでいたとも伝えた。

 ドイツ紙南ドイツ新聞(電子版)は、副操縦士が以前から同国西部の精神科で治療を受けていたと伝えた。(47NEWS)



拡大自殺という概念があります。ひとつの定義をご紹介いたします。
1) 本人の死の意志
2) 1名以上の他者を相手の同意なく自殺行為に巻き込むこと
3) 犯罪と、他殺の結果でない自殺とが同時に行われること
4) 自己中心的な動機でなく、利他的な、あるいは偽利他的な動機から犠牲者を道連れにしようとしていること
5) 犯罪の結果について熟慮せずに自発的に行われていること
 
Meszaros K, Fischer-Danzinger D (2000). "Extended Suicide Attempt: Psychopathology, Personality and Risk Factors.". Psychopathology 33: 5–10.
おそらく副操縦士は重篤なうつ病、精神病に相当する状態にあったことでしょう。ただし、不可解なことは犯行の直前まで主操縦士はじめ周囲の同僚が異変に気づかなかったということです。これだけの大事件を起こす精神異常をきたしていれば、表情、発語など言動にいつもとは異なるところが見受けられたはずです。ルフトハンザ社は死後であっても個人情報はすべては公開しないと言っていますから、真相は闇の中ですが、これだけの尊い命が失われたのですから、何らかの情報は公開して欲しいものです。

銀座泰明クリニック
2015.03.28 Saturday 06:54 | - | trackbacks(0) | 

記憶喪失/全生活史健忘/解離性健忘

PC4台駆使、違法動画1000万円超荒稼ぎの男は「記憶喪失」の怪… 生活保護も不正受給、裁判には仮の名「鈴木太郎」で出廷の異例

動画投稿サイト「FC2」にテレビドラマなどを違法アップロードし1000万円以上を荒稼ぎしたとして群馬、栃木両県警の合同捜査班に著作権法違反容疑で逮捕された男が、自分の名前も言えないほどの「記憶喪失」で、生活保護まで不正受給していたことが分かり、詐欺容疑で再逮捕された。「唯一の身分証である生活保護の受給者証を失うわけにはいかなかった」と話す男の記憶は今も戻らず、「鈴木太郎」という仮の名で、公判に出廷している。平成20年03月に静岡県熱海市の路上で倒れているところを発見されてからの男の足跡をたどった。(大橋拓史/産経ニュース)
悩む/理解不能/謎の物体

「記憶喪失/全生活史健忘」とはどのような病気でしょう。精神医学的には「解離性健忘/ICD10/WHO」と定義され、「最近の重要な出来事の記憶喪失」であり、非常に強いストレスやトラウマ(心的外傷)を生じた際に起きる精神障害です。「遁走」(家庭や職場からの逃避)と伴うことが常であります。通常は2−3日で終わることがほとんどで、長期にわたる場合はでも、日常生活は保たれるものです。

今回の事件は数年間におよび、PC4台を駆使して、1000万円以上を荒稼ぎしたという、悪質ながら、稀(まれ)な症例であり、精神医学的には注目に値します。犯罪は用意周到、計画的で、精神鑑定をしても責任能力は十分に有していると判断されることでしょう。

でも、なぜ、このような現象が起きるのでしょうか。それは、非常に強いストレスやトラウマ(心的外傷)、生死や人生に関わるような事件に遭遇した人がとりうる、病的・心理的・防衛機制といえます。辛い出来事に直面できず、心理的に逃避した結果、起きる病的反応です。

一般的には数日間で現実に戻らざるをえない現象ですが、本症例は、数年間におよび、生活保護を受給しながら、著しい犯罪を生じたことは、学問的に特筆に値するとも言えるでしょう。

犯罪は刑法で裁かれなければならないことですが、精神医学的には、何が彼をそうのような行動や生活に至らしめたのか解明することは、学問的に、社会的に必要なことと思います。そして、精神科医としましては「罪を憎んで人を憎まず」の気持ちで事件の解明を見守る次第です。

銀座泰明クリニック

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2015.02.10 Tuesday 01:46 | - | trackbacks(0) | 

臨死体験/NHKスペシャルより



『私』という存在は死んだらどうなるのか、死ぬとき『私』は何を見るのだろうか――。 20年余り前、臨死体験について徹底的に取材し考察を深めてきたジャーナリスト/評論家立花隆さん。74歳を迎え、がんや心臓の病を抱えて死を間近に感じる今、再び臨死体験の最新研究の現場を見つめ、“死”について思索しようとしている。死の間際に一定の人が見る臨死体験。臨死体験が世界で注目され始めた1980年代以来、その解釈としては、脳内現象として科学で説明できるとする「脳内現象説」と、肉体が死んでも“魂(もしくは自我を感じる「意識」)”が存在し続けるという「魂存在説」―――これら二つの説が互いに相容れない、激しい議論が続いてきた。そうした中、立花さんは新たな臨死体験の掘り起こしをすると同時に、そもそも「意識(魂)」と呼ばれているものの正体とは何なのか、最新の脳科学・心理学・哲学にいたるまで、徹底した取材に基づいて正面から挑もうとしている。科学的に見て、死後の世界があると言える余地はどれくらいあるのか。死後の世界がないとしたら、『私(自分)』という意識(魂)はどう生まれどう消えていくのか。私たちが当たり前と思っている『私』という存在はいったい何なのか。有史以来、人類が答えを追い求め続けてきた生と死にまつわる壮大な謎―――その謎に挑む立花さんの思索の旅を通じて、大震災や紛争などで多くの命が失われる今、命や『私』の存在する意味を考える。

「臨死体験」として「神秘体験」を生じる方がいらっしゃるそうです。花畑を歩き回り、亡くなったはずの親や親戚に出会う、「幽体離脱」して、死に瀕している自分を部屋の上から眺めるのだそうです。このような体験が科学的に解明されるような時代になりました。大脳辺縁系をはじめとした脳細胞60兆個からなる神経ネットワークの織り成すまさに夢のような現象です。番組では人間の臨床検査はもとより動物実験も含めて検証を重ねる様子が放映されました。

「神秘体験」とは「生老病死」「死」という生物として避けることのできない現象を前に、高度に知性化した人間が恐怖することなく、死を受け容れられるよう、脳を発達させた形だと思います。古今東西、不老不死は人間の究極の夢でした。しかし、それは叶うことなく、誰もがいつかは死を受け容れなければなりません。そのために死の間際に「神秘体験」のような「夢幻現象」が求められるのではないでしょうか。ターミナルケアの現場においては、末期がんのため「適応障害、うつ状態」になる方が少なくなく、さらに術後や臨死の際に「せん妄」という幻覚・妄想を伴う意識障害に陥ることもあります。これらは「臨死体験」の背景にある精神病理と言えるでしょう。

ターミナルケアにおいては「医療」よりも「宗教」の方が有効かもしれません。医療は疼痛緩和や不眠・不安の対症療法にすぎません。最も重要なことは来たるべき死を素直に受け入れる「心の平安」で、これは信じること、祈ることにより得られます。キリスト教や仏教をはじめとしたあらゆる宗教が死後の救済を筆頭の題目に挙げ、「人智を超えた大いなる存在」に身を委ねることを説いています。

「精神医療」においても難治性疾患では薬物療法や認知療法など科学的な治療法が及ばない時には「祈り」が求められます。アルコール依存症の自助グループ"AA. Alchoholic Anonymous" では 自分の無力さを認め、Higher Power に自らを委ねることからはじまります。日本発祥の「内観療法」では屏風の中で合掌・お辞儀して、内観者の中に宿る「仏性」を信じることからはじまります。いずれも人間の無力さを自覚し、神や仏といった大いなる存在に自らを委ねることで、ようやく「解脱」「悟り」の境地に至るのでしょう。

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2014.09.19 Friday 17:32 | - | trackbacks(0) | 

ストーカー 殺意の深層 悲劇を防ぐために NHKスペシャル


 

昨年、被害件数が過去最悪の2万件を超えたストーカー事件。凶悪事件が後を絶たない中、注目を集めているのが“加害者へのアプローチ”だ。被害を防ぐために、加害者の心理を解明し、その危険性や要因を見極め、犯行にいたる行動や意識を変えていくという模索が始まっている。多くの場合は、警察による警告や処分などで収まるが、数パーセントから1割程度の加害者が、警告を聞かず殺意を全うさせようとするという分析もあり、対策は急がれている。今回、番組ではストーカー加害者に焦点を当て、その心理の研究を続けてきた専門家やNPO、対策に乗り出した警察などを取材。海外の先進事例も紹介し、ストーカーが殺意に向かっていく“心の闇”を紐解いていく。ストーカーはなぜ生まれるのか、加害者は何を考えているのか、事件を未然に防ぐためには何が必要なのか、検証する。

番組に関する情報を掲載しております。
NHK NEWS WEBホームページ ストーカー被害2万件


桶川ストーカー殺人事件、逗子ストーカー殺人事件、そして三鷹ストーカー殺人事件と世間を震撼させる「ストーカー殺人事件」が続きました。「ストーカー」とは、ある特定の人物へのつきまといをする行為をする者とされ、大半が「失恋」による「逆恨み」によるようです。小早川明子さん/NPO法人ヒューマニティの著書「『ストーカー』は何を考えているか」によると以下のように定義されています。
 

ヽ慮任燭訖翰的動機があり、正当性を妄想的に信じ込んでいる
∩蠎蠅魄貶的に追いつめ、迷惑をかけて苦しめていることをを自覚しながらも、相手に好意を持たれる望みをかけている
その望みが絶たれた、心のバランスは憎しみに反転し、自殺または相手を殺害することもある



危険度は高中低に渡るようですが、いずれにおきましても、精神医学の専門用語を用いますと、「見捨てられ不安」「しがみつき」「理想化と脱価値化」「不適切な激しい怒り」……といった「境界性人格障害」の診断基準に合致するでしょう。この障害は「慢性的な空虚感」「衝動的な行動」「自我同一性(アイデンティティ)障害」などに特徴づけられる人格障害です。相手を脅迫したり傷害をあたえたりしつつ、自らもリストカットや大量服薬のような自傷行為を行い、時には自殺企図を行います。殺人・自殺まで至るハイリスクな事例はまさにこれに相当するでしょう。

それより軽度の場合は「自己愛性人格障害」、すなわち「誇大性」「賞賛欲求」「共感の欠如」といった特徴を呈する人格障害と考えられます。この障害は「自己愛」を優先するため、相手を傷つけながら、自分は傷つかないよう、巧妙・狡猾な計算を行います。高知能・高学歴であることも少なくないため、社会的に成功している人物にも認められます。しかし背景には「脆弱で孤独な自己」「自己肯定感の低さ」が隠れています。弱くて寂しい自分を受け容れられないため、相手に誇示することで自尊心を満たすのです。恋人や妻へ DV. Domestic Violence を行ったり、部下や女性へパワハラ・セクハラを行ったりすることもあります。

いずれの障害も、あらゆる精神障害に共通する「遺伝×環境」の因子によります。不安・焦燥・抑鬱・憤怒などを生じやすい気質と幼少期からの親子関係の不全です。特に指摘されているのは、「心身への虐待」「過保護・過干渉」といった不適切な親子関係です。境界性人格障害の場合は虐待のような明らかな「暴力」を受けて育ち、自己愛性人格障害の場合は過保護・過干渉のような「条件づけの愛情」のもと育てられたケースが多いようです。これらは精神医療では DSM. Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders 精神障害の診断と統計マニュアル/アメリカ精神医学会においては、Cluster B 人格障害 (劇的群、感情の混乱が激しく演技的で情緒的なのが特徴的、ストレスに対して脆弱で、他人を巻き込む と分類され、福祉領域では「AC. Adult Children アダルト・チルドレン」(機能不全家族、家庭内不和にて育ったため、成人後も様々な心的外傷を引きずり、心身・行動の問題を生じやすい)と定義されています。

番組では小早川明子さんが加害者と電話やメールを交わし、時には誹謗・中傷されながらも、めげることなく、徹底的に話し合う姿が放映されていました。そしてご著書にその手順が以下のように紹介されています。

 

.好函璽ングは違法行為であることを教える
△匹鵑併でも、常識は伝え、言い放つ
H鏗下圓竜せちを伝える、多くは接触を止めて欲しいということ、理由も伝える
と鏗下圓謀舛┐燭い海函∧垢たいことがあれば私を通すように依頼する
ツ樟椶力⇒蹐呂弔まといになること、止めなければ警察に通報すると伝える
 #警告、または逮捕されたのちもカウンセリングを継続する
α佇の債権債務の整理をする(被害者にも落ち度がある場合がある)
Г海世錣觝拮瑤鬚箸發妨‘い掘答えである「鍵」を見つける
┫蕎陲蓮⊇衢者である自分自身に処理する責任があることを徹底理解させる、相手に感情処理の責任を持たせようとする立場から降りるのを待つ
相手に依存する心理、もとからあるコンプレックスや孤独を受け容れるサポートをする
解放の「扉」の先=未来の風景について話を聞く


ご著書によると自身がストーカー被害者であり、5年間に渡り、相手と格闘したことが活動の原点だったとのことです。とても勇気ある活動であることと心より尊敬を覚えました。唯一心配なのは、番組で彼女が携帯電話を片手に孤軍奮闘している姿のみが放映されていたことです。行為障害/人格障害の対応・治療というのは心理・医療・司法といった多職種・多人数によるチームワークが求められ、とても単体で遂行できる活動ではありません。精神医療の立場からは、抗精神病薬や気分安定薬など薬物治療も事例によっては必要ではないかと思いました。ご著書の最後にも書かれていたように、「ストーカー」とは「わかっちゃいるけど、やめられない」という、いわば「恋愛依存症」という「脳と心の病」なのです。

銀座泰明クリニック
2014.07.07 Monday 00:15 | - | trackbacks(0) | 

薬物依存/ASKAさん逮捕



残念なニュースが入りました。1990年代ミリオンセラーを連発したミュージシャン CHAGE and ASKA の ASKAさんが覚醒剤はじめ複数の違法薬物使用・保持で逮捕されたというのです。日本の歌謡界で頂点を極めた人がどうして、という思いの人も少なくないでしょう。しかし2000年代に入り次第に世間の注目は減ってきました。今年56歳となり、20-30代の頃のようには曲を作れず歌を歌えず、本人としてはもどかしい思いをされていたのではないでしょうか。

「薬物依存」という「脳と心の病気」は、寂しさや空しさといった感情と裏腹にあります。特に青春期に華々しい活躍をされていた芸能界の方々は、中年期・老年期に入っても、老化した自分をなかなか受け入れられず、アルコール、ギャンブル、セックス、そして薬物依存といった過剰な刺激で、心の隙間を埋め合わせてしまいます。

本人は「所持をしたことはない」とおっしゃっているそうです。事実はともかく、薬物依存は「否認の病」と呼ばれています。多くの薬物依存の患者さんは使用や問題などを過小視、矮小化します。しかし否認とは認めていないだけで、気づいてはいるものです。皆さん薄々「まずい、なんとかしないといけない」と思いながら、どうにもならず、問題が表面化してようやく堪忍するのです。

それでは、「薬物依存」という「脳と心の病気」をどのように「治療」していけばいいのでしょう。まず第一は「脳と心の病気」であることを素直に認めることです。違法薬物を所持・使用してしまったことは犯罪として償う必要がありますが、薬物依存から脱却するには、「医療」の力が必要です。これまで日本社会では拘置所や刑務所など法務省の管轄で処罰されるのみで、厚生省の管轄で治療へつながるケースは多くありませんでした。このため、出所後、間もなく再犯・累犯という事態に陥っていたのです。

このような問題への解決には「薬物依存」という「脳と心の病気」である認識のもと、「精神医療」が必要です。まずは、違法薬物の代替となる向精神薬を用いて離脱症状を抑えます。そして、違法薬物を必要とした経緯や、その前後に生じた様々な葛藤をゆっくりとうかがいます。皆さんはじめは否認や抑圧をしつつも、過去の栄光や挫折を少しずつ語りはじめ、そして現在の自分を受け容れ、最後に涙するものです。事件が原因となり、仕事や家族を失い、どん底まで堕ち(底つき体験)、死にたくなるほどの絶望感を漏らす方もいらっしゃいます。精神医療の従事者は、その訴えを真摯に傾聴・共感し、本人が再び立ち上がり、歩み出す援助を行ってまいります。

ただし、薬物依存をはじめとした依存症やアディクションと呼ばれる深刻な「脳と心の病気」は医療のみでは不十分です。一緒に病気を乗り越えていこうとする「仲間」が必要なのです。このため各依存症には「自助グループ」が発足しています。薬物依存には「ダルク(DARC. Drug Addiction Rehabilitation Center)」という組織が全国にあり、「皆で止め続けよう」と頑張っていらっしゃいます。この「続ける」ことが大事です。止めたと思っても再び使ってしまうことが少なくないのです。そのためには、一人きりにならず、常に誰かと一緒に、「止め続ける」気持ちを抱き続けることが必要なのです。ASKAさん逮捕は残念ですが、これを機に、ASKAさんはじめ、同じような「脳と心の病気」に苦しむ方々が一人でも多く救われることを祈る次第です。
JUGEMテーマ:ニュース
2014.05.18 Sunday 23:28 | - | trackbacks(0) | 
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