SELECTED ENTRIES
LINKS
SEARCH

内観研修所と医療施設との円滑な連携のために

第18回 日本内観療法医学会

内観研修所と医療施設との円滑な連携のために

○茅野分1) 水野雅文2) 真栄城輝明3)

1)銀座泰明クリニック 
2)東邦大学医学部精神神経医学講座
3)佛教大学・大和内観研修所

現代の医療施設、特に小規模のクリニックにおいて集中的なサイコセラピーを行うことは困難である。しかし、慢性化した気分障害や不安障害、そしてパーソナリティ障害など対象となる患者は数多い。これらに対して、これまで精神分析療法や認知行動療法など西洋のアプローチがしばしば用いられてきた。本発表では、東洋の「内観療法」を内観研修所と連携して施行した症例を提示して、生じた様々な問題を考える。

内観療法は6泊7日の「集中内観」を基本とし、内観研修所に宿泊、朝5時から夜9時まで、トイレやフロの時間も「1分1秒、惜しんで内観する」(吉本伊信)。一般の医療施設では不可能な治療のため、内観研修所へ「紹介」し、内観後は医療施設へ「逆紹介」する。

主治医は診療において集中内観について詳細な説明を行った。特に、「外観(迷惑をかけられたこと)」から「内観(迷惑をかけたこと)」へ転じる「3日目の壁」を乗り越えられるように激励した。そして、主治医は「診療情報提供書」、患者自身も「自分史(生育歴)」を執筆し、内観へ持参するよう指導した。「自分史」は「外観」を呈していることが多いが、患者が自分の半生をどのように認知しているのか理解する上で有益である。そしてこれが最終日の座談会においてどのような「内観」へ変容し語られるのかが集中内観の醍醐味とも言えよう。

内観面接者から主治医へは、集中内観の経過や結果が「フィードバック」された。課題としては、集中内観を完遂できる症例の「見極め」、中断した際の「フォローアップ」、そして「日常内観」への「動機づけ」などが挙げられる。いずれの場合においても、集中内観は「入門」であり、大切なのは「日常内観」であると説明する。しかし心病む患者が一人で内観を続けるのは困難であり、主治医は内観的な診療を意識しなければならない。

銀座泰明クリニック

2015.10.24 Saturday 18:23 | - | trackbacks(0) | 

内観療法のワークショップに参加して

内観ワークショップに参加して/第111回日本精神神経学会学術総会より

茅野分/銀座泰明クリニック、筆者は、内観療法に関心を持つ精神科医であり、日本内観医学会の会員でもある。


平成27年6月4日から6日にわたって、大阪国際会議場およびリーガロイヤルホテル大阪において、第111回日本精神神経学会学術総会(世界精神医学会(WPA)との併催)が開催された際に、内観療法のワークショップが行われるというので参加した。6月5日(金)のことである。当日は8時半という早朝からの開始であったにもかかわらず、170名収容の会場に120名前後の参加者を集めて行われた。ワークショップの演題は、「内観療法の実際−症例編−」。演者は3名。当日の講演順に内容の一部を抜粋して紹介しよう。



トップバッターとしてマイクを握ったのは、「医療法人清潮会三和中央病院長」の「塚崎稔先生」であった。「症例からみる内観治療」と題して病院臨床のなかでの内観療法をご紹介いただいた。エビデンス・ベイストなご発表で、アルコールはじめ物質による精神・行動の障害が過去11年間で296/396人と圧倒的に多いことに驚かされた。症例1はうつ病リワークプログラムに通院中の非定型うつ病、30歳、男性。我欲が強く、自己中心的で他者からの承認を求め悩んでいた。集中内観を経ると「自分が周りの人からどれほど支えられ生きてきたか実感でき、自分でも驚くほど穏やかな気持ちになれました」と述べたという。症例2は医療観察法通院プログラムにある50歳、男性、妄想性障害、アルコール依存症。幼少期から実父の虐待を受け、共感性を欠いて育った。45歳時、被害妄想から近隣住人を刃物で切りつけた。入院後も心を閉ざし、周囲と交流を絶っていた。そこで月2回、10ヶ月間もの内観療法を実施。すると「病弱な母へ迷惑をかけました、被害者へも申し訳ありません」と丁寧に述べるようになったとのことだった。

次に「心身めざめ内観センター主宰」の「千石真理先生」が演台に立った。「ハワイの内観研修背景と実践」と題して、北米文化圏における内観療法が紹介された。アメリカの終末期ケアや緩和ケアにおいて仏教や禅にスピリチュアルケアとしての役割を期待しているとのことだった。日本人としては誇らしい気持ちにさせられるお話であった。症例は60代、白人男性、アルコール依存症、3回目の結婚、日本人女性と離婚の危機にある。いずれの離婚もアルコール依存症が原因だった。千石先生との内観カウンセリングにより、幼少期からの父親との確執が解消し、アルコール依存は寂しさを紛らわせるという気づきが得られ、離婚の危機も救われた症例であった。

最後の演者は、「佛教大学特任教授・大和内観研修所長」の「真栄城輝明先生」であった。「病院臨床と内観研修所を舞台に」と題して、Psychotherapyとしての内観が紹介された。症例1は統合失調症の母親を持つ青年、母親へ甘えた記憶はないと内観を拒否し、父親の内観からはじめた。それでも、運動会の記憶の中、母親が深夜にお弁当を作ってくれている姿を思い出し、泣き崩れた。そして「母は僕のことを愛してくれていた。僕は愛が見えなかっただけ」と語り、一度も見舞ったことのない母親の病院へ行った。症例2は被害妄想を抱く高齢の女性。主治医の承諾を得ず、突然やってきた。他者と同様に静かに内観する条件で開始。すると、長男が高校時代に成績低下した時に本人を責めてしまい、結果、自死を遂げたと号泣した。この告白を機に女性は憑き物が落ちたように穏やかになった。「内観療法により統合失調症が治る」ことはないけれど、「物の見方が変わり、心に平安が訪れ、感謝報恩の気持ちで暮らせるようになる」とのこと。まさに内観療法の真骨頂といえよう。

このところ内観療法は、この学会では3年連続でシンポジウムとワークショップを開催してきたという経緯が司会者(小澤寛樹先生・堀井茂男先生)からの紹介があり、毎年のように多くの参加者を集めてきたようである。質疑応答も活発に行われ、当日はセッション終了後にも演者を捕まえて質問している方もいた。21世紀は脳科学の時代といわれる時代に、なぜ内観療法なのか、それはやはり精神医学は「人間関係」を無視しては成り立たないからだろう。薬物療法が主体の精神科医療にあって、少なくない精神科医たちはそれを補う方法を探し求めているようである。ちなみに、今回の大会テーマは「翔たくわれわれの精神医学と医療−世界に向けてできること−」であった。たとえ精神疾患の原因が脳の部位に見つかったとしても、精神医学が「翔たく」ためには「体」はもとより、「心」や「社会」だけでなく、「魂」も含めた人間存在の全体を見渡す必要がある。そうなると、精神科医療者にとっては、内観療法への期待はますます高まっていくであろう。少なくとも、今回のワークショップに参加して筆者はそう感じた。

銀座泰明クリニック

 
2015.09.10 Thursday 17:06 | - | trackbacks(0) | 

共感の技術

[ - ]
前回「大人の発達障害」にて「自閉症スペクトラム障害」の基本症状として、「三つ組みの障害」すなわち「社会性、コミュニケーション、イマジネーションの障害」をご紹介しました。「自閉症」という名称の通り、他者との関わりを避け、自分の価値観にこだわる背景には、この「三つ組みの障害」があるわけです。さらにこの障害の心理特徴として「共感」の不足が挙げられます。

「共感」とは相手の気持ちを自分の気持ちのように感じる心理現象です。通常の社会生活を営む上では当たり前な心理のようですが、これを欠くことにより、様々な社会問題を生じます。職場不適応や家庭不和は典型例で、それが極まると犯罪や虐待などに至るわけです。従って、社会問題を解決・予防し、幸福な社会生活を営むためにも、「共感」を高めることが求められます。

そこで今回は、杉原保史先生の「プロカウンセラーの共感の技術」に学びましょう。共感するためには相手の立場や心理を想像すること(イマジネーション)が必要です。これは「言うは易く行うは難し」、なかなかできるものではありません。自分の立場や心理と異なるものは遠ざけてしまう傾向があるからです。特に、自分と利害の反する相手になるとなおさらでしょう。むしろ否認や拒絶の心理が生じてしまうものです。このため、共感するには「自分の視点から離れること」が第一だそうです。自分の立場や心理はひとまず置いて、相手の立場や心理を理解することに集中するのです。その際、価値や善悪の判断は抜きに、すべてをありのままに感じることが重要です。これはカウンセリングの基本姿勢であります。

具体的な技術としては、相手の話していることもさることながら、話していないことや話せないことへ想いを巡らすことが大事だそうです。カウンセリングを必要とする心理的な問題を生じている時は、矛盾や葛藤により混乱しているため、なかなか問題を「言語化」できません。さらに、心の深層に関わる問題になればなるほど表現は曖昧・混沌として言葉にならないそうです。そこで、カウンセラーは相手の視線、表情、姿勢などの非言語的な表現から、言外に語られている真意を推し量ります。そして、「あなたはその時どういう風に感じたのですか」と穏やかに言語化をうながしていきます。と言ってもすぐに回答を得られるものではありませんから、クライアントが自分の気持ちに注意を向けられるよう、繰り返し形を変え質問していくのです。

共感することの前提として、自分自身が共感された体験を持つことが求められます。まずは自分に対し肯定的な態度でいないと、相手に対しても肯定的な態度はとれません。いわゆる適度な「自己肯定感、Self- Esteem」を抱けているかどうかがポイントです。このため、精神分析家は教育分析といい、自分自身が精神分析を受けることを訓練として設けられ、まずは自分自身を肯定・受容できるよう取り組むのです。一般の方はそこまでの必要はないでしょうが、適度な自己肯定感や自己洞察は必要です。もしも相手を共感できない、自分の気持ちや考えに固執してしまうことを繰り返す際は、過去の体験や人生を振り返り、何がそれを妨害しているのか気づくことが望まれます。これを一人で行うことはとても難しいため、専門的なカウンセリングを受け、本当の自分を知ることをお勧めします。相手に共感するには、自分に共感することが前提なのです。



銀座泰明クリニック
2015.08.09 Sunday 10:58 | - | trackbacks(0) | 

大人の発達障害

2015年日本精神神経学会「成人発達障害」も満員でした。2011年2012年にて企画を立案した宮岡等先生は内山登紀夫先生にお話をうかがう形で「大人の発達障害ってそういうことだったのか」を著しました。発達障害はこれまで児童精神科の範疇に留められてきましたが、メディアの啓発もあり成人、大人の事例も散見されるようになりました。銀座泰明クリニックへも様々な理由で受診されていますので、これを機にまとめておきましょう。

発達障害は自閉症スペクトラム障害、注意欠陥障害、学習障害などを含みますが、最も問題とされていますのが自閉症スペクトラム障害です。これは広汎性発達障害、アスペルガー障害、高機能自閉症など様々な呼び名がありますが、近年、「自閉症スペクトラム障害 Autistic Spectrum Disorder. ASD」 に収束しつつあります。基本となる症状は、「社会性、コミュニケーション、イマジネーション」いわゆる「三つ組みの障害」です。具体的には、人よりも物に関心がある、こだわり行動(物を並べる、特定の物を集める、変化を嫌う)、言葉の遅れ、言葉の偏り、感覚過敏などです。子ども時代には、ごっこ遊びができない、グループに入れない、イジメられる、孤立的になる、突飛な行動をとる、エキセントリック、オタク、コミュニケーションに乏しい、発達の凸凹が目立つことなどです。これが大人になると・・・会社で世間話をできない、宴会に参加できない、派閥に入れない、パワハラに遭う、孤立的になる、コミュニケーションに乏しいなど挙げられます。家庭では・・・夫婦間・親子間の会話に乏しい、触れ合いに乏しい、コミュニケーションに乏しい、そもそも、愛に乏しいということになります。このため、職場不適応、夫婦不和といった適応障害という主訴で受診することが多く、よくよくお話をうかがうと、背景に発達障害が見えてくるわけです。

「注意欠陥障害 Attention Deficit Hyperactivitiy Disorder」 は不注意、多動性、衝動性を特徴とします。具体的には、気が散る、じっとしていられない、思いついたらすぐ行動するなどです。「学習障害 Learning Disorder」は知的障害がないにもかかわらず、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」こといずれか一つ以上に支障を来たす障害です。

発達障害は生得的な特性であり、治る/治らないというものではありません。特性を多少緩めながら環境調整をしながら周囲と折り合い生きてまいりましょう。その際、特にASDの方は内省を苦手とするものですから、周囲が問題点を分かりやすく指摘するとよいです。さらに、聴覚情報も苦手とするものですから、視覚情報として、言葉を文字にして渡すとなおよいでしょう。

発達障害、「障害」と診断するには、仕事や生活に支障を生じているわけですが、その手前で支障を生じていない方々は自閉的な傾向などを活かしています。すなわち、高度な集中力や記憶力、さらに発想力などを発揮しています。その極めた形が「サヴァン症候群」といわれる天才の方々です。このように、能力にも光と影があり、うまく光輝くよう、周囲の方々が配慮して下さることを願う次第です。



銀座泰明クリニック
 
2015.07.26 Sunday 23:04 | - | trackbacks(0) | 

「心の病、はじめが肝心 早期発見、早期治療の最新ガイド」水野雅文著



筆者(茅野分)の恩師、水野雅文先生による新書が出版されました。「心の病」に関する一次予防(発病予防)・二次予防(早期発見・早期治療)・三次予防(リハビリテーション)について、最新の知見が余すところなく、分かりやすく書かれています。一読して、水野先生の講義を聴いているような、座談会にてお話を聴いているような錯覚を覚えました。

なかでも、第3章「心の病を重くしないコツ、病気は治り方が大事」の一節は読みごたえあります。「乗り越えた実感が大事、価値観を大きく変えなければ、がんばりきれません」「罹患することを、かえって奇貨と考え、新しい自分を獲得していくことが大事です。人生の価値、楽しみを積極的に見つけましょう。とくに、自己実現の方法を会社以外に見つけることは、どんなに人にも大切です。精神疾患からの回復記念に『生き方は一つではない』と考え直してみるのもいいことだと思います」は水野先生ならではの「リカバリー」の定義ではないかと思うほどに説得力があります。心の病になることは、病自体の苦しみもさることながら、「心の病」であることの「スティグマ(偏見)」に、周囲の視線、そして自尊心が傷つき、苦しみます。このため、本当の「リカバリー」とは水野先生のおっしゃるように、病を「乗り越え」、むしろより良い生き方や人生観を身につけることだと言えるでしょう。

さらに、第5章「『心に効く』生活習慣とは?」における「ポジティブシンキング」「『楽しいときを』を心に刻んでおく」「小さな趣味の大きな価値」「運動は『万薬の長』」「心の栄養−『地中海ダイエット』」「家族関係をつくり直す」は水野先生の人生観が具体的に語られているようで貴重です。「毎日、笑顔で」「ポジティブに」働くための生活習慣がいくつも紹介されています。心の病に罹(かか)られた方はもとより、健康な方も、より健康になるため、ぜひ一度ご一読くださいませ。


銀座泰明クリニック
2015.07.05 Sunday 09:30 | - | trackbacks(0) | 

内観療法

それでは怒りや憎しみを減じ、愛や喜びへ変えるにはどうすればよいのでしょう。一つの方法として、日本の伝統的な自己変革的な治療法である「内観療法」を挙げることができます。
 

吉本伊信らが1940年代に開発した自己観察法です。「悟り」(宿善開発、転迷開悟、一念に遭う、など)を開くことを目的とし、「いかなる境遇にあっても感謝報恩の気持ちで幸せに日暮らしできる」ために行います。
 

内観者は6泊7日の「集中内観」を基本とし、内観研修所に宿泊し、「内観三項目」「ご迷惑かけたこと」「お世話いただいたこと」「して返したこと」を母からはじめ、父、兄弟姉妹など、これまでの人生に関わった方々を順々に調べ尽くします。朝5時から夜9時まで、トイレやフロの時間も「1分1秒、惜しんで内観する」。その間、面接者が1−2時間おき、1日に8−10回、約5分の面接を繰り返します。


これにより、人生の不安・苦悩・動揺などから逃げず、目をそらさず、むしろ不安・苦悩・動揺に沈潜し、「生の実相」を覚知します。そして、自分の外部にある富や名誉・社会的地位、そして死などに対し、いわば「無関心」の態度を堅持することで、「自由」「心の平静」を得ることができるのです。


内観療法の治療機序は、内観三項目を想起し、主観的および客観的に自己観察(セルフ・モニタリング)を行うことにより、「自己発見」へ至ります。その際、母性的な「恩愛感」の庇護のもとに父性的な「自責感」を深めることで、「我執から解放」されることを特徴とする、東洋・日本ならではの心理療法です。



銀座泰明クリニック
 

2015.04.30 Thursday 22:29 | - | trackbacks(0) | 

半沢直樹/TBS・ドラマより

[ - ]

バブル期入行世代の葛藤と苦悩に満ちた戦いを鮮やかに描き出す。
基本は性善説。ただしやられたら倍返し!
型破りのバンカー、半沢直樹の伝説の始まりだ!

いまさらですが、堺雅人さん主演のドラマと言えば「半沢直樹」をご紹介しないわけにはいきません。バブル崩壊後の都市銀行を舞台に中間管理職の葛藤と苦悩に満ちたドラマが繰り広げられます。

「部下の手柄は上司のもの、上司の失敗は部下の責任」「銀行は人事が全てだよ」「銀行は晴れた日に傘を貸して、雨の日に取り上げるって」「どんな仕事をしてもええ、せやけど人と人とのつながりだけは大切にせなアカン、ロボットみたいな仕事なんかしたらアカン」「人の善意は信じますが、やられらやり返す、倍返しだ!それが私の流儀なんでね」などの名言が聞かれました。

いずれも地位と正義が交錯するなかで、生じざるをえない矛盾といってもよいでしょう。実社会では分かっていても語られてことのない真実ですが、ドラマではデフォルメされ、セリフとなり語られました。そして半沢直樹に「倍返し」させることで、痛快な物語となりました。

しかし「倍返し」することはよいことでしょうか?上司らは涙を流し、土下座をし、半沢に軍配が上がりました。われわれ視聴者は胸のすく思いでした。ところが実際の世の中へ目を転ずるとそうも行きません。アメリカとイスラムの戦争しかり加害者と被害者は常に入れ替わり憎しみは連鎖します。したがって、お返しすることなく、むしろ「罪を憎んで人を憎まず」という「赦し(ゆるし)」が必要ではないかとも思う次第です。

銀座泰明クリニック
2015.04.29 Wednesday 13:41 | - | trackbacks(0) | 

Dr. 倫太郎/日本テレビ・ドラマより

[ - ]



これはある精神科医の物語。彼の名前は、日野倫太郎(堺雅人)。傷ついた人々の心にとことん寄り添い、その病める心を解きほぐしていく。書籍も出版し、テレビにも出演する。彼の診療を待ち望む人々は増える一方だ。

そんな彼なのだが、自身の恋愛は全く不得手だ。「恋愛とは一過性の精神疾患のような状態である」とさえ言っている。ある日、大学の理事長、円城寺との会食で、一人の女性と出会う。彼女の名前は、夢乃(蒼井優)。新橋の売れっ子芸者だ。

この出会いが彼の人生を大きく変えていくなど、この時の倫太郎は知る由もなかった・・・
 

いよいよはじまりました。半沢直樹で大ブレイクした堺雅人さん演ずるスーパー精神科医のテレビドラマです。第1回目を拝見しました。型破り、それはない、という、コメディ、フィクションですが、そんな精神科医がいてくれたらいいのにな、という願望かもしれませんね。「傷ついた人々の心にとことこん寄り添う」ため、時間を惜しまず、場所を選ばず、診療を行います。第1話では通りすがりの方と飛び降り自殺に心中しました!(クッションの上に着地)。この先どのような展開になっていくのか・・・

倫太郎は夢乃との治療関係を逸脱していきます。医者と患者との倫理的な関係から、男女の情欲の関係に陥っていくのです。といいますのは、「Dr.倫太郎」には原作があり、そのような展開を迎えます(ネタバレを申し訳ありません、楽しみな方は後ほどお読み下さいませ)。「セラピューティック・ラブ」という小説です。「清心海(せいしんかい)」という精神科医が書いたそうですが、相当な実力の精神分析医です。500ページの大著ですが、テレビと合わせてお楽しみ下さいませ。

銀座泰明クリニック

2015.04.22 Wednesday 10:11 | - | trackbacks(0) | 

拡大自殺の疑い/ドイツ機墜落事故

【ベルリン共同】フランス南部のドイツ機墜落で、ドイツ捜査当局は27日、機体を故意に墜落させた疑いが持たれているアンドレアス・ルビッツ副操縦士(27)の自宅から、破られた医療機関の診断書を押収したと発表した。診断書は墜落当日の24日を含め「乗務不可」とする内容。精神的な病気を勤務先に隠していた可能性があるとみている。

 当局は副操縦士の自宅などから押収したコンピューターなどを分析。人間関係や金銭問題でトラブルや精神的なストレスを抱えていなかったかなど、動機や背景の解明を急いでいる。

「副操縦士の実家」の画像検索結果

 当局は病名を明らかにしていないが、ドイツ紙ビルトは27日、副操縦士が6年前に精神疾患を患い、合計1年半の間、治療を受けていたと報じた。墜落機を運航していた格安航空ジャーマンウイングスの親会社ルフトハンザ航空の関係者らの話として伝えた。また、治安当局筋の話で副操縦士が最近、交際女性との関係で悩んでいたとも伝えた。

 ドイツ紙南ドイツ新聞(電子版)は、副操縦士が以前から同国西部の精神科で治療を受けていたと伝えた。(47NEWS)



拡大自殺という概念があります。ひとつの定義をご紹介いたします。
1) 本人の死の意志
2) 1名以上の他者を相手の同意なく自殺行為に巻き込むこと
3) 犯罪と、他殺の結果でない自殺とが同時に行われること
4) 自己中心的な動機でなく、利他的な、あるいは偽利他的な動機から犠牲者を道連れにしようとしていること
5) 犯罪の結果について熟慮せずに自発的に行われていること
 
Meszaros K, Fischer-Danzinger D (2000). "Extended Suicide Attempt: Psychopathology, Personality and Risk Factors.". Psychopathology 33: 5–10.
おそらく副操縦士は重篤なうつ病、精神病に相当する状態にあったことでしょう。ただし、不可解なことは犯行の直前まで主操縦士はじめ周囲の同僚が異変に気づかなかったということです。これだけの大事件を起こす精神異常をきたしていれば、表情、発語など言動にいつもとは異なるところが見受けられたはずです。ルフトハンザ社は死後であっても個人情報はすべては公開しないと言っていますから、真相は闇の中ですが、これだけの尊い命が失われたのですから、何らかの情報は公開して欲しいものです。

銀座泰明クリニック
2015.03.28 Saturday 06:54 | - | trackbacks(0) | 

記憶喪失/全生活史健忘/解離性健忘

PC4台駆使、違法動画1000万円超荒稼ぎの男は「記憶喪失」の怪… 生活保護も不正受給、裁判には仮の名「鈴木太郎」で出廷の異例

動画投稿サイト「FC2」にテレビドラマなどを違法アップロードし1000万円以上を荒稼ぎしたとして群馬、栃木両県警の合同捜査班に著作権法違反容疑で逮捕された男が、自分の名前も言えないほどの「記憶喪失」で、生活保護まで不正受給していたことが分かり、詐欺容疑で再逮捕された。「唯一の身分証である生活保護の受給者証を失うわけにはいかなかった」と話す男の記憶は今も戻らず、「鈴木太郎」という仮の名で、公判に出廷している。平成20年03月に静岡県熱海市の路上で倒れているところを発見されてからの男の足跡をたどった。(大橋拓史/産経ニュース)
悩む/理解不能/謎の物体

「記憶喪失/全生活史健忘」とはどのような病気でしょう。精神医学的には「解離性健忘/ICD10/WHO」と定義され、「最近の重要な出来事の記憶喪失」であり、非常に強いストレスやトラウマ(心的外傷)を生じた際に起きる精神障害です。「遁走」(家庭や職場からの逃避)と伴うことが常であります。通常は2−3日で終わることがほとんどで、長期にわたる場合はでも、日常生活は保たれるものです。

今回の事件は数年間におよび、PC4台を駆使して、1000万円以上を荒稼ぎしたという、悪質ながら、稀(まれ)な症例であり、精神医学的には注目に値します。犯罪は用意周到、計画的で、精神鑑定をしても責任能力は十分に有していると判断されることでしょう。

でも、なぜ、このような現象が起きるのでしょうか。それは、非常に強いストレスやトラウマ(心的外傷)、生死や人生に関わるような事件に遭遇した人がとりうる、病的・心理的・防衛機制といえます。辛い出来事に直面できず、心理的に逃避した結果、起きる病的反応です。

一般的には数日間で現実に戻らざるをえない現象ですが、本症例は、数年間におよび、生活保護を受給しながら、著しい犯罪を生じたことは、学問的に特筆に値するとも言えるでしょう。

犯罪は刑法で裁かれなければならないことですが、精神医学的には、何が彼をそうのような行動や生活に至らしめたのか解明することは、学問的に、社会的に必要なことと思います。そして、精神科医としましては「罪を憎んで人を憎まず」の気持ちで事件の解明を見守る次第です。

銀座泰明クリニック

JUGEMテーマ:ニュース

2015.02.10 Tuesday 01:46 | - | trackbacks(0) | 
<< | 2 / 9 PAGES | >>
<< September 2017 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>