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うつ病治療 常識が変わる NHKスペシャル



100万人を超えたうつ病患者。これまで「心のカゼ」と呼ばれ、休養を取り、抗うつ薬を服用すれば半年から1年で治ると考えられてきたが、現実には4人に1人は治療が2年以上かかり、半数が再発する。その背景には、治療が長期化している患者の多くが、不必要に多くの種類や量の抗うつ薬を投与されていたり、診断の難しいタイプのうつ病が増加していることが専門家から指摘されている。さらに、医師の技量レベルにばらつきがあることも明らかになってきた。こうした中、薬の処方を根本的に見直す取り組みや、難しい診断が一目でできる技術の研究が進んでいる。また、「うつ先進国」のイギリスでは2年前から、国を挙げて抗うつ薬に頼らず、カウンセリングでうつを治す「心理療法」を治療の柱に据え、効果を上げている。うつ病治療の最前線に迫る。

うつ病治療 常識が変わる NHKスペシャル

昨夜の放送をご覧になった方はどのような感想を抱かれたでしょう?不安を抱かれた方、希望を見出された方、両方いらっしゃると思います。本日、当院を受診された患者様にも両方いらっしゃいました。そこで放送内容を改めて解説いたします。

まずはじめに「うつ病は『心の風邪』、抗うつ薬を飲めばすぐ治る」という説明に対する反証が挙げられました。これは、かつて「鬱病=精神病=恐い病気」というイメージが強く、多くの方々が治療を受けられず、不眠や食欲不振などの抑うつ症状に苦しみ、最悪の場合、自殺に至った歴史を是正するために言われだしました。症状の軽いうちに適切な治療を受け、改善していただきたいという医療関係者の切なる願いから生まれた言葉です。実際「風邪」のレベルの速やかに回復される方は大勢いらっしゃいます。症状が改善することで、心理的にも社会的にも失うものは少なくて済みます。しかし、難治性や反復性、そして双極性や精神病性の鬱病の方が一定の割合でいらっしゃるのも現実です。このような方々は本当に辛いことと思いますが、「肺炎」または「喘息」のイメージを持っていただき、辛抱強く治療を続けていただきたいと思います。

次に、不適切な治療や処方がされている事実が指摘されました。うつ病にもかかわらず、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬のみがいくつも処方されたり、実は躁うつ病にもかかわらず、抗うつ薬のみが処方され続け、躁状態や混合状態を呈したりする様子が放送されました(いわゆる多剤大量処方もありました)。SSRIの Activation Syndrome や Soft Bipolar Specrum は当ブログでも紹介し、最近、多くの学会で頻繁に取り上げられている話題です。しかしまだ常識というほどではありません。精神科医の中でも種々の事情から知識や経験により多少の差が生じることは否めません。そこでこれを調整すべく、厚生労働省の「精神保健指定医」という制度に加え、日本精神神経学会が「指導医」や「認定医」という制度を作り、精神科医に一定の基準を設けようとしています。また厚生労働省の研究班は各疾患に対して目安となる「治療ガイドライン」を作成しています。これらに関しては以前のブログ「ドクター・ハラスメント」「病院や医者の選び方」もご参考にしていただけると幸いです。

このように診断や治療に違いが生じるのは、「心」の病気がなかなか目に見えず、どのような病気で、どのような治療が必要なのか分かりづらいからです。番組では赤外線を用いて「心」の病気を「脳」の病気として視覚的にとらえる(NIRS, Near Infra-Red Spectroscopic topography)や、薬が効かない時には磁気を用いた治療(TMS, Transcranial Magnetic Stimulation)が紹介されました。これらは画期的な検査・治療ですが、まだ研究段階であり、少なくとも保険診療では受けられません。治験を得て一日も早く実用化されることを期待いたします。ちなみに、現在のところ重症例や難治例に最も効果的とされている電気けいれん療法 (ECT, Electro-Convulsive Therapy) に全く触れられなかったことは残念です(悪用された過去を懸念したのかもしれません)。

最後にイギリスの認知行動療法(CBT, Cognitive Behavioral Therapy)が紹介されました。これも当ブログで紹介してきました心理療法で、従来の受動的な心理療法に対し、積極的に認知や行動を修正していく治療法です。鬱という感情に引っ張られず、理性的・客観的に自分の思考や行動を振り返る習慣を作ってまいります。軽症例や慢性例には特に効果的で、抗うつ薬と併用すれば相乗効果をもたらします。ただし番組でも指摘されていたように、日本国内で保険適用はされてなく、十分な治療を受けるにはそれなりの時間と費用がかかります。そこでまず参考図書やインターネットから情報を得て自分なりに試みるのも一法です。一人ではできなかったり、分からないところが生じた時には主治医や心理士に相談するとよいでしょう。

以上、昨夜のNHKスペシャルの放送内容を解説いたしました。うつ病に悩まれていらっしゃるご本人ご家族の方々が、誤解や偏見から脱し、正確な情報を得て、より良い治療を受けられることを心よりお祈り申し上げます。
2009.02.23 Monday 13:01 | comments(1) | trackbacks(1) | 

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2017.07.18 Tuesday 13:01 | - | - | 
美臣 (2009/02/24 2:22 PM)
はじめまして。
うつ病の診断を受けて四年が経ちました。
私も喘息タイプかもしれません。

この番組のおかげで、四年間言い続けていた画像診断を家族にやっと理解してもらい、検査を受けられる病院を探すことになりました。
映像の力って大きいと思いました。









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