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うつ病と病前性格

前回は最近のうつ病として「現代型うつ病」「未熟型うつ病」「ディスチミア(気分変調症)親和型うつ病」をご紹介いたしました。いずれも従来の「メランコリー親和型うつ病」に対して、若年期に生ずる性格因を伴ううつ病といえます。すなわち、人生における問題や葛藤に直面して、抑うつを自己の内界に保持することなく、不安・焦燥を表出し、時には回避・依存も生ずる病態です。

「うつ病」と一言で言っても、ライフサイクルや性格傾向により異なった様相を呈します。以下は前回ご紹介した「躁うつ病の病像と病型」から発展し、「気分障害と病前性格」の関連を一覧した図(広瀬徹也、2005)です。まずは、改めてそれぞれの病態と性格をご説明いたしましょう(濱田秀伯、精神症候学、弘文堂、1994、他)。



うつ病(メランコリー、Melancholia)
抑うつ気分または興味・喜びの減退、精神運動抑制、早朝覚醒、体重減少、日内変動などを生じ、生活や仕事に著しい支障を生じる病態。従来型うつ病。
気分変調症(ディスチミア、Dysthymia)
抑うつ気分などが少なくとも2年間以上も続いているが、大うつ病までには至らない状態。従来の抑うつ神経症を含み、幼少期からの葛藤により形成された神経症的性格(内的葛藤を生じて、情緒不安定になりやすい)を基盤に生ずる。
躁極況疹祿
軽躁病を伴う反復性・大うつ病。軽躁病とは、仕事や生活に著しい問題を生じたり入院を必要としたりする程ではない軽い躁病。
非定型うつ病
過食、過眠、鉛様のひどい怠さ (leaden paralysis)、拒絶への過敏性を特徴とするうつ病の亜型。
逃避型抑うつ
高学歴のエリートが仕事の挫折を機にうつ状態になり、出勤恐怖に陥るものの、家事や趣味などは問題なくできる状態。「退却神経症」とも類似している。

執着性格
熱中性、徹底性、几帳面、正義感、一度生じた感情が冷めにくい持続性の性格(下田光造)。
メランコリー親和型性格
秩序志向が強く、自己の要求水準が高い、良心的で他人に尽くす性格 (Tellenbach)。
強迫性格
几帳面、倹約、潔癖、強情などの性格 (Freud)。
抑うつ型人格
重苦しい気分を抱き、人生を悩む人格 (Schneider)。
回避性格
社会的な制止、不適切感および否定的評価に対する過敏性を生ずる人格 (DSM-)。
演技性人格
過度な情動を特徴とし、周囲の人の注意を引こうとしがちな人格 (DSM-)。
自己愛性格
誇大的で、賞賛されたい欲求が強く、他者への共感が欠如する人格 (DSM-)。

従来のうつ病がメランコリー親和型をはじめ、執着性格や強迫性格といった、いわゆるうつ病の病前性格を呈するのに対し、その他のうつ病は様々な性格傾向を背景にしています。DSM- (Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, American Psychiatric Association)によると演技性や自己愛性の性格(Cluster B)は感情的で他者を巻き込みやすい性格、強迫性や回避性の性格(Cluster C)は不安や恐怖を抱きやすい性格とされています。普段はそのような性格傾向を有しながらも生活できているのですが、ストレスがかかると不安や抑うつに陥りやすく、うつ病になるとそれぞれの病態を呈するわけです。

このようにうつ病は各病態に応じてそれぞれ特徴的な性格を背景に持ち、各年代や環境・状況に応じた発病・過程をたどります。もっともメランコリー親和型うつ病以外はどれも思春期・青年期に好発し、病気と同時に成長・発達の問題をはらんでいると言えます。従って前回提示した図の「人格の統合水準」という言葉に表されているよう、成長・発達による人格の統合・向上が望まれる次第です。

さて、うつ病の病前性格をご説明する際には以下の表「うつ状態の臨床分類」もご紹介しないわけにはいきません。わが国の精神病理学の大家、笠原嘉、木村敏によるこの分類(1975、一部改変)は病前性格‐発病状況‐病像‐経過を一元的に説明し、躁うつ病や統合失調症の鑑別も網羅しており、DSMやICDといった操作的診断基準が主流となった現在においても、実際の臨床場面において大変、有用とされています。



これまでご説明してきた「現代型」「未熟型」「ディスチミア(気分変調症)親和型」のうつ病は上記の祁拭Τ詁H娠型に相当するでしょう。精神的な葛藤や人生の問題に直面した際に、儀燭里茲Δ陛儀薪な抑うつ状態にとどまらず、不安・焦燥が表出され、回避・依存、他責も生じうる、神経症的な病態です。

一方、況燭躁うつ病、厳燭賄合失調症の「前駆状態」として現れる抑うつ状態と言えます。病前性格も、うつ病ではなく、躁うつ病や統合失調症の特徴を示します。従って、治療も儀燭里茲Δ陛儀薪うつ病として抗うつ薬を服薬し、休養するばかりでなく、躁うつ病や統合失調症に進展しうる可能性に留意しながら、経過を観察し、適切な対処をしていく必要があるのです。

以上、「うつ病と病前性格」についてご説明してまいりました。メランコリー親和型性格や執着性格、強迫性格が典型的な従来型のうつ病と関連していることは以前よりうつ病の心理教育においてよく話題にされていますが、非典型例や躁うつ病・統合失調症の前駆状態の病前性格については、それほど情報が流布していなかったことと思います。銀座泰明クリニックではこれらの点も考慮しながら、幅広い診療を心がけてまいる次第です。どうぞ宜しくお願い致します。

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2007.06.30 Saturday 23:53 | comments(0) | trackbacks(2) | 

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