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反復性うつ病の患者さんへの行動記録による再発予防の試み

京都大学医学部 古川壽亮教授 を主任研究者とした「反復性うつ病の患者さんへの行動記録(iPhoneのくらしアプリとウェアラブル・デバイスを用いる)による再発予防の試み」という臨床研究に協力することになりました。

 

これは古川教授によるこれまでの臨床研究の歴史の流れに沿うことなります。2009年、「MANGA 研究」 という世界中の精神科医を驚かせた臨床研究に端を発します。これはいくつものSSRIやSNRIの有効性と忍容性をメタ解析したものでした。結果、エスシタロプラムとセルトラリンがとりわけ優れていました。

 

次に「SUN-D研究」が行われました。うつ病治療のセカンドラインとして、セルトラリン50mg、セルトラリン100咫▲潺襯織競團鵑悗諒冖瑤泙燭倭強といった無作為割付を行い結果を判定するのです。現在、結果がまとめられています。

 

薬物療法に抵抗性を生ずる場合、認知行動療法(CBT. Cognitive Behavioral Therapy)がまず推奨されます。しかし治療者は充足されているとは言えませんし、これからのIT社会の発展を考え、スマートフォンを用いたCBTが考案されました。これが、薬物療法抵抗性大うつ病に対するスマートフォン認知行動療法と抗うつ剤併用療法の無作為割付比較試験、 FLATT Project. Fun to Learn Act and Think through Technology です。

 

そして、このたび再燃・再発される患者さんに対する「早期警告サイン」を読み取るため、行動記録を、ITを用いて記録する試みが行われようとしています。具体的には「くらしアプリ」という iPhone のを持っているだけで「位置」「歩数」「動作」を自動的に採取してくれ、本人の記録とともに半自動的に活動記録が簡単に作成されます。さらに、「シルミー」というリストバンド型ウェアラブルデバイスを装着していただくことにより、消費カロリー、歩数、脈拍、体温、会話量、外出時間(紫外線量)、睡眠時間なども測定されるのです。反復性うつ病でお悩みの患者さんにおかれましては、主治医よりお声かけさせていただくことがあるかもしれませんが、ご自身はもとより、社会貢献として、ご協力のほど、よろしくお願いします。

 

 

銀座泰明クリニック

 

2016.10.27 Thursday 16:41 | - | trackbacks(0) | 

6月病とは

5月病は、みなさんご存じでしょう。新年度に仕事や学校、転居などで環境が変わり、最初のうちは緊張して頑張っていたものの、ゴールデンウィーク明けごろに気分が落ち込み疲れやすさを感じるようになる症状のこと。環境が変わった当人だけでなく、主婦も家族の生活リズムの変化に伴い、エネルギーを消耗し、同じように5月病になる人が多いのです。

 

それでも、これまでは6月になり新しい生活が落ち着くと症状が緩和する人が多かった。それが近年では、その状況が変わってきています。生活リズムはつかめても、学校や職場の嫌なところが見えてきて「こんななずではなかった」と落胆したり、人間関係がうまくいかずに悩んだり、具体的な問題が浮き彫りになってくるのでしょう。真面目な人ほど、「しっかり頑張らなければ」と自分を追い込んでしまい、心身の不調が収まらず、6月の梅雨という気候も影響して、一気に気分が落ち込んでしまうようです。このような状態を爍況酩足と位置づけ、医学的には適応障害の一つとされています。

 

そもそも6月は、雨や曇りで太陽の光が遮られ、1年のうちでもっとも日照時間が少ない時期。日照時間が短いと、心のバランスを整える脳内神経伝達物質・セロトニンの分泌が減少し、うつ病などの精神疾患にかかりやすくなるのです。

 

人は体内時計の指令によって、日中は活動し夜間は休息するリズムで生活していますが、朝の光をしっかり浴びることができないと、体内時計のリズムが乱れ、心身にさまざまな悪影響を及ぼします。

 

実際、東北・山陰地方での自殺率が高いのは、日照時間が少ないことが影響していると指摘されているのです。また、日照時間の少ない冬に発症し、気候のさわやかな5月ごろに自然に回復してくる「冬季うつ病」という病もあります。逆に、うつ病や睡眠障害の治療には、光を浴びる「光療法」を用いることもり、光が気分に作用していることは明白です。

 

ただでさえ湿気が高くジメジメし、日が差さない不快な時期にもかかわらず、6月は1年のなかで唯一、祝日のない月。5月病を引きずったまま、ゆっくり休めない6月は意外に負担の大きい時期だということを認識しておいたほうがよいでしょう。

 

適応障害は頑張る人ほどなりやすい

6月病のおもな症状は、頭痛、抑うつ、不眠など。最初は、何となく疲れがとれない、気分が落ち込みがちという程度だったのが、次第に物事に集中できなくなり、今まで楽しいと思っていたことに喜びを感じられなくなってしまいます。問題解決力が低下し、いろいろなことが滞りがちになると、自分に対する自信も失い、最終的には「自分は役に立たない人間だ」などという自己否定の感情がわいてくるのです。

 

イライラしているうちは、まだエネルギーがある証拠。活発な活動を促す脳内神経伝達物質のアドレナリンやノルアドレナリンが充足している状態です。うつ状態になると、イライラする元気もなくなって、外出も億劫に。家に閉じこもりがちになっていきます。

 

この症状に陥りやすいタイプは、まじめで几帳面な人。何事もきちんとしなければ気が済まない完璧主義が多く、体調が悪くても休んだり、手を抜いたりすることができません。周囲の人に助けを求めることもせず、いろいろなことを自分ひとりで抱え込んでしまいがちです。こうした人は、新しい環境に適応しようと頑張りすぎて、適応障害を起こすリスクも高くなります。

 

ゴールデンウィークといっても、サービス業や主婦など、普段よりかえって忙しい人も少ないでしょう。5月の連休が明けたあと、さらに頑張り続けた挙げ句、6月に入る頃には、くたくたになってしまう人も多いのです。

 

誤解されやすいのですが、適応障害は環境に適応できない弱い人がなるのではなく、適応しようと頑張って、もうこれ以上頑張れないというところまで無理をしてしまった人がなる病気です。心身の不調を感じたら、まずは休養するのが鉄則。決して、できない自分を責めないこと。今は自分の心が弱っている時期だと認めてあげるようにしてください。

 

規則正しい生活をして没頭できる趣味を持つ

心身の不調が深刻化する前に、早めに異変に気づくためには、自分を客観的にみることが重要です。セルフチェックリストを使って、思い当たることがないかどうか確認してみましょう。とくに集中力や問題解決力が低下すると、家事や仕事がスムーズにはかどらなくなってきます。そこで「自分はダメだ。怠けていてはいけない」と追い詰めないこと。むしろ、「自分は十分に頑張ってきたのだから、少し休んだほうがいい」と、自分を甘やかすことが大切です。

 

セルフチェックリスト

http://www.ginzataimei.com/case/self_check.html

 

家族や同僚など周囲の人に対しても、「きちんとやりなさい」と責めるのではなく、「疲れているのでは?」とねぎらいの言葉をかけてあげるようにしましょう。

 

適応障害になると、5年後には40%がうつ病に移行するというデータもあります。うつ病が重症化すれば、休養は1日や2日というわけにはいかず、数ヵ月、数年に及ぶことになりかねません。ですから、初期段階での適切な対処が大切なのです。

 

セルフチェックの結果、4点以上の人は、かなり無理をしている状態。早めに精神科や心療内科を受診しましょう。2〜3点の人は注意が必要な状態です。積極的に休養をとようにしてください。

 

基本は、規則正しい生活を目指すこと。睡眠は7〜8時間が目安ですが、年齢に伴い必要とされる睡眠時間は徐々に少なくなっていきます。日中に眠気がなく過ごせるくらいの睡眠時間が、最適と言えるでしょう。

 

また、多くの人がこの時期のエアコン使用を控えがち。本格的な夏ではないというのが理由のようですが、それよりも快眠を目指す環境作りのほうが大切です。除湿モードにセットして、寝室の温度と湿度を上手に調節しましょう。

 

寝る前には、テレビやスマホを見るのを控え、照明を落としてリラックスタイムを。眠れないまま布団の中にいると、心配事ばかり頭に浮かび、よけいに眠れなくなるという悪循環に陥ります。ですから、どうしても眠れないなら、いったん布団から出て、自然に眠くなるまで待つのをおすすめします。寝付きが悪い人は、遅寝・早起きを試みることで、熟睡できるようになるでしょう。

 

体内時計をリセットし、腸の働きを促すためには、朝食も不可欠。腸の動きを促し、環境をよくしておくことが体調管理には重要なのです。

 

ストレスがたまってつらいときは、周囲に助けを求めましょう。真面目な人ほど、一人で問題を抱えがちです。しかし、ギリギリまで我慢せずに、誰かに相談に乗ってもらうようにしましょう。人に話すことで、物事を別の角度から見られるようになり、気持ちが軽くなることも多いものです。

 

ストレス解消のため、週に1〜2回は、趣味など自分の好きなことをする時間をつくるのもよいでしょう。自分が楽しい、心地よいと思えるものであれば、何でもかまいません。一般的には、いつも自分がしている行動の真逆のことをすると、気分が晴れてよいと言われています。普段あまり動かずデスクワークの多い人は、運動で汗を流すとリフレッシュできるでしょうし、逆に家事が忙しい、あるいは体を動かしているという人は、読書や手芸がいいかもしれません。写経や最近、再びブームになっている大人の塗り絵なども、集中でき雑念が消えて、あれこれ悩まない時間ができるため、気分転換には最適です。もちろん、一人で何かにトライするだけでなく、共通の趣味をもった人たちと交流する機会をもてば、楽しみが共有できてさらにいいと思います。

 

ただ注意したいのは、食でストレスを発散すること。確かに甘い物を食べるとセロトニンの分泌が促され、幸福度が高まるとは言われていますが、食べ過ぎになると問題です。たとえば、シュークリームを5個も10個も食べてしまい、罪悪感に苛まれて後で吐くようになると、これはもう摂食障害という病気。ストレス解消で食べるときは、ふだんは買わない高級スイーツを1つだけ奮発する、少しだけ上等な肉を買う、おしゃれしてレストランに行くなど、量よりも質で満足感を得るのがポイントです。気の合う友人とおしゃべりしながら食べると、食べ過ぎを防ぎ、気分転換にもなるでしょう。

 

梅雨が明ければ、厳しい夏がやってきます。心身の不調を夏に残さないためにも、いまの季節に無理は禁物。自分の状態を客観的にチェックして、早めのリセットを心がけてください。

 

【保存版】家族が倒れた時
慌てないための 新知識

 

構成◎中山あゆみ 助言◎茅野分/婦人公論6月28日号より

 

2016.06.18 Saturday 08:58 | - | trackbacks(0) | 

抗うつ薬の最適使用戦略を確立するため

銀座泰明クリニックは、京都大学・古川壽亮教授(主任研究者)、東邦大学・水野雅文教授らによる、臨床研究に参加開始しました。 

   

「SUN-D:Strategic Use of New generation antidepressants for Depression
   抗うつ薬の最適使用戦略を確立するための多施設共同無作為比較試験」 

「うつ病は日本国民にとってその生活の質(QOL)を損なう最大の原因であり、さらに今後20年間その損失は増加傾向にあると推定されている。現在、うつ病の治療の中心は抗うつ剤、特に、SSRI、SNRI、NaSSAに代表される新規抗うつ剤である。

 しかし、薬物療法を開始するに当たって、〆能蕕砲匹旅海Δ頂泙鬚匹領未濃藩僂掘↓⊆N堵娠が不十分である場合にいつどのように治療戦略を変更するかについての十分な実践的エビデンスは得られていない。 

そこで、われわれは、先行するメタアナリシス研究により効果および受容性のバランスに優れた抗うつ剤(SSRI)と、非常に効果は高いが受容性がその効果ほどではないNaSSAを、どのように組み合わせると最も効果がありかつ安全で飲みやすい薬物治療指針となるかを解明するために、実践的大規模臨床試験を実施する」

 

http://ebmh.med.kyoto-u.ac.jp/sund/index.html
2012.06.03 Sunday 11:16 | - | trackbacks(0) | 

ここまで来た!うつ病治療/NHKスペシャル



この10年で倍増し、患者が増加し続ける「うつ病」。働き盛りの世代が多く、治療も長期化しやすいため、社会的損失はあらゆる病気の中で最大だと言われている。脳科学研究によって、この病の診断や治療のあり方に、今大きな変化が起き始めている。これまで気分の落ち込みや無気力といった症状から、ひとくくりに「うつ病」と診断されてきた患者の中に、実はさまざまなタイプの精神疾患が含まれていることが分かってきた。誤診を防ぎ適切な治療につなげられると注目されているのは、脳血流の画像診断装置・光トポグラフィー(NIRS)による診断だ。前頭葉の血流量の変化を測定することにより、「うつ病」と症状が似ている「双極性障害」や「統合失調症」とを客観的に見分けられるようになってきた。また薬による治療で改善が見られない患者への新たな治療法として注目を集めているのが、脳に直接、磁気刺激を与える方法だ。機能が低下している脳の部位を磁気で刺激し症状改善しようというもので、アメリカでは長年苦しんできたうつ病の症状が劇的に良くなるなど、確かな効果が報告されている。番組では日本やアメリカを中心に進み始めた診断と治療の最前線を取材。苦しんでいた患者たちが改善していく過程を見つめていく。

平成20年、厚生労働省の患者調査によると、国内では「うつ病」に罹患する方が100万人を超えました。平成22年、医療計画においては、「精神疾患」を癌・脳卒中・急性心筋梗塞・糖尿病に加え「5疾病」とし、重点的な医療・政策が講じられることになりました。

しかしその反面、うつ病の診断・治療にて、疑問や誤解を認められるようにもなりました。この理由は精神医学・医療が科学として発展途上であり、各医師の知識や経験にゆだねられていることが挙げられます。番組では、DSM, Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders (アメリカ精神医学会) という診断基準により、うつ病が安易に診断される可能性も指摘されていました。現病歴による横断的な診断のみで、家族歴や生活歴も詳細に聞く、縦断的な診察が不足しているためと考えられます。

そこで番組では、NIRS, Near Infra- Red Spectoroscopy(近赤外線スペクトロスコピー)を用いて、うつ病と躁うつ病、統合失調症などを鑑別できる可能性が紹介されました。これにより、躁うつ病や統合失調症である方に抗うつ薬が処方され、躁転したり幻覚妄想化したりする誤りを防げます。但し、脳表面のヘモグロビン濃度を調べる検査であり、脳深部の血流や代謝までは分からないことや脳の静的状態を観察できないことなどの限界もあり、補助的診断の一つとして考えるべきでしょう。

NIRS (Near infrared spectroscopy)
NIPSより

一方、新たな治療法として番組ではまず、TMS, Transcranial Magnetic Stimulation(経頭蓋磁気刺激法)が紹介されました。これは特殊な磁石により脳内の神経細胞に電流を誘起させる治療法です。主に不安や恐怖を惹起する扁桃体の過活動を抑制するため、推論や意思決定を司るDLPFC, Dorsolateral prefrontal cortex(背外側・前頭前野)を活性化させます。これは電気けいれん療法(ECT, Electro-Convulsive Therapy)のように脳全体の神経細胞を興奮させることなく、局所的な刺激に留めることができるため、非侵襲的と言えます。番組では著効した複数の患者さんの様子が映されていましたが、効果はECTほどではないとも言われています。厚生労働省はまだ保険診療として認可していません。

 
NEURO STAR より

番組ではさらに、DBS, Deep Brain Stimulation(深部脳刺激療法)も紹介されました。これは脳の深部に留置した電極から神経細胞へ電気刺激を送る治療法です。脳内の神経回路の「ハブ」として働くACC, Anterior Cingulate Cortex(前帯状皮質、ブロードマン25野)を活性化することにより、上記のDLPFCを活性化・扁桃体を抑制し、抑鬱が軽減される仕組です。番組ではEmory大学のMayberg教授のもとで薬物治療に抵抗性を示す、難治性のうつ病の患者さんが劇的に回復する様子が放映されていました。しかし、これも厚生労働省はまだ保険診療として認可していません。


Archives of General Psychiatry より

番組では最後に、「ことばの力」として認知行動療法がDLPFCの活性化、扁桃体の抑制をもたらすこと、および自分自身でも良い記憶を思い出し、同様の機序を経ることで、うつ病を予防できることが紹介されました。いずれもTMSやDBSのような特殊な機械を用いることなく、日常生活の延長で、自然に行える方法です。

以上、本日放送されたNHKスペシャル「ここまで来た!うつ病治療」を簡単に解説しました。この番組が制作された理由は、うつ病100万人という事態が起きている裏で、DSMによる安易な診断・SSRIなどの過剰な処方が横行していることが問題になっているからでしょう。精神医療の関係者は改めて正確な診断、適切な治療を考える必要があります。さらに、うつ病を診断・治療する前に、発病を予防するような地域や社会など環境因を考える必要もあります。これらは社会精神医学の命題でもあり、引き続き考察してまいります。

銀座泰明クリニック

2012.02.12 Sunday 23:03 | comments(2) | trackbacks(1) | 

東京都心部における30代の労働者の休職状況



東京都心部における30代の労働者の休職状況
−初回治療うつ病の経過報告−


○ 茅野分1、菊地俊暁2、長谷川千絵3、小林啓之2、山澤涼子2、新村秀人2
根本隆洋2、藤井千代4、渡邊衡一郎2、村上雅昭5、鹿島晴雄2、水野雅文3

1.銀座泰明クリニック(精神科・神経科)
2.慶應義塾大学医学部精神神経科学教室
3.東邦大学医学部精神神経医学講座
4.埼玉県立大学保健医療福祉学部社会福祉学科
5.明治学院大学社会学部社会福祉学科

【目的】
うつ病の患者が30代の労働者に急増し、社会問題となっている。生産性低下をはじめ休職や労災など、本人はもとより職場や社会へ及ぼす影響は大きい。この実態を東京都心部の診療所で調査した。

【方法】
銀座泰明クリニック(東京都中央区銀座)を平成19年11月〜平成20年9月に受診し、初めてうつ病の治療を受けた患者128人(男性64人、女性64人)、33.2±7.1歳の治療経過を調査した(個人情報には厳重注意した)。会社員110人、公務員6人。独身93人、既婚35人。独居53人、同居75人。DUI, Duration of Untreated Illness 25.8±40.3週 (Med 12週)。QIDS, Quick Inventory of Depressive Symptomatology 12.8±4.3。家族歴あり63人、既往歴あり62人。

【結果】



39名(男性18名、女性21名が休職した。)休職した患者の通院期間19.3±10.8週>休職しなかった患者の通院期間12.6±10.4週 (P=0.003)。
23人(男性10人、女性13人)が休職を継続または退職した。復職を継続している患者の休職期間16.9±12.2週>復職した患者の休職期間11.1±8.1週 (P=0.03)。
休職を継続または退職した患者は神経症性うつ病10人、内因性うつ病13人。休職を継続または退職した患者の処方量139.1±61.2mg、復職した患者の処方量112.5±69.4mg (Imipramine換算)。

【考察】
初回治療うつ病の患者の約3割が休職し、2割弱が休職を継続または退職した。休職を継続または退職した患者の4割が神経症性うつ病と考えられた。このような患者の復職を促すためには、従来の服薬・療養を中心とした治療のみならず、積極的な復職支援、認知行動療法などが必要と考えられる。
2009.02.19 Thursday 10:35 | comments(0) | trackbacks(1) | 

性格・気質、脳・神経、遺伝子

前回はうつ病と病前性格の関連をご説明しました。うつ病と一言で言っても、最近は細分化され、それぞれに呼応した病前性格が想定されています。うつ病の治療・回復には、疾病自体もさることながら、この性格因子も念頭においた対処が必要とされます。特に慢性や難治性・治療抵抗性と言われるうつ病には性格因子の影響が少なくありません。

そこで今回は性格因子についてご説明を加えてまいりたいと思います。前回はうつ病の病前性格として、強迫性、回避性、演技性、自己愛性といったカテゴリーをご紹介しました。これはDSM‐犬鬚呂犬瓩箸靴秦犧酖診断基準によるものです。前回はご紹介しなかったクラスターAも含め、再度、列挙いたしましょう。

クラスターA:自閉的・妄想的、奇妙な言動をしやすい性格
妄想性・統合失調症質・統合失調型パーソナリティ障害

クラスターB:感情的で他者を巻き込みやすい性格
反社会性・境界性・演技性・自己愛性パーソナリティ障害

クラスターC:不安や恐怖を抱きやすい性格
回避性・強迫性・依存性パーソナリティ障害

これを一般行動における積極・消極、対人行動における接近・分離の観点から図式化すると以下のようになります(但しDSM−靴亡陲鼎ます)。



このように一つの性格分類に当てはめる類型論に対して、最近はいくつもの性格特性へ分析する特性論が提唱されています。歴史的には、Eysenck(1967)が3次元モデルとして外向性Extraversion, 神経質Neuroticism, 精神病質Psychoticismを提示しました。

外向性 Extraversion
衝動性、活動性、社交性、興奮しやすさを表します。
網様体賦活系による大脳皮質の覚醒度によります。

神経質 Neuroticism
ストレス状況による不安・抑うつ・動揺を表します。
海馬、扁桃体、視床下部といった内臓脳による自律神経系の覚醒度によります。

精神病質 Psychoticism
敵対的、被害念慮、脱抑制傾向を表します。



Gray(1987)はEysenckの理論を批判的に継承し、いわゆるBig Threeモデルを脳内システムと関連させて提唱しました。

行動活性化システム
Behavioral Activation System, BAS
報酬や罰から活性化し、目標達成のための接近行動が惹起されます。衝動性、衝動的な刺激探求性ともいえます。
中脳辺縁系のドーパミンが想定されています。

行動抑制システム
Behavioral Inhibition System, BIS
報酬や罰から活性化し、脅威に対する注意が喚起されます。不安に相当します。
脳内の中隔・海馬系が関与しているとされています。

闘争・逃走システム
Fight-Flight System, FFS
無条件な罰刺激によりする活性化し、防御的な攻撃、もしくは逃避的な行動が起こります。
扁桃体と中心灰白質が関係しています。

Cloninger(1993)はGreyの気質理論を発展し、独自の気質と性格の理論を包括的に構築しました。Cloningerによると、先天的な気質と後天的な性格は相互に影響しながら発達します。この「気質」とは刺激に対する自動的な情動反応のことで、大脳辺縁系により調整され、遺伝的に規定されています。具体的な気質として以下の4つが挙げられます。

新奇性追求 Novelty Seeking
新奇の刺激に対する探索、衝動的な決定、浪費、気分の変動、能動的な葛藤の回避など、行動の活性と開始に関する遺伝的な傾向です。
GreyのBASに似た行動のシステムです。
神経伝達物質としてドーパミンが想定されていて、ドーパミンD4受容体との関連が指摘されています。

損害回避 Harm Avoidance
未来の問題に対する不安や、未知の人物に対する恐怖のような受動的な行動の回避など、行動の抑制と中止に関する遺伝的な傾向です。
GreyのBISに似た行動のシステムです。
神経伝達物質としてセロトニンが想定されていて、セロトニン・トランスポーター5−HTTの遺伝子多型との関連が指摘されています。

報酬依存 Reward Dependence
社会的な愛着や他者の賞賛への依存のような、行動の維持と持続に関する遺伝的な傾向です。
神経伝達物質としてノルアドレナリンが想定されていますが、関連遺伝子は未だ発見されていません。

固執 Persistence
報酬依存の下位尺度から独立した因子で、忍耐強く一つの行動を行うような、行動の固着に関する遺伝的な傾向です。
特定の神経伝達物質や遺伝子は想定・発見されていません。



Cloningerは更に上記のような気質の上位概念として性格次元も想定しました。この「性格」とは自己について洞察・学習することにより発達するもので、自己や社会の有効性に影響を与えるものと定義されています。以下の3つが挙げられます。

自己志向 Self Directedness
自己決定や意思の力Will power、もしくは選択に対して行動を調整する能力とされています。責任感、目標設定・遂行、動機付けといった能力に関わります。低い自己志向がパーソナリティ障害に共通する因子であると考えられています。

協調 Cooperativeness
他者と同一化し、受容する際の個人差を説明します。寛容さ、共感、同情など。自己志向と同様に、低い協調はパーソナリティ障害に共通する因子であると考えられています。

自己超越 Self Transcendence
宇宙に存在するすべてのものがひとつの全体の一部であるとする「統一意識」の状態を含みます。統一意識では自己と他者とを区別する重要性がないことから、個人的自己というものはありません。人は単に進化する宇宙の統合的部分であると意識するにすぎません。特に老人においては、瞑想したり祈ったりすることで人生の満足感や個人の有効性を高めることができます。その人の適応状態と人生の満足度を知るために重要で、特に35歳以上の成人に対して示唆されています。

以上、前回の病前性格から発展して、性格因子についてご説明いたしました。脳・神経について言及したところが少なくなく、解剖学や生化学の基礎知識も必要とされるため、抵抗を覚えられた方も少なくないのではと恐縮いたします。しかし、病気や性格に限らず、あらゆる精神活動は脳・神経の機能ですから、心や脳の問題についてご説明を深める上では避けられないところです。更に論を進めると、遺伝子やDNAについてまで言及することになりますが、今回はこの程度に留めておきます。



一方で、環境因子についても十分な考慮をしなければなりません。生活環境はもとより、周囲の方々とのご関係なども影響いたします。幼少期からの親子、兄弟・姉妹との関係にはじまり、成人後も友人・恋人・夫婦関係など性格形成に作用します。DSMのクラスター分類やCloningerの説明した性格次元がまさに相当しうるもので、他者との関係を通じて、協調や共感、そして自己実現・自己超越と至るのです。この概念はむしろMaslowによる人間性心理学・自己実現理論として有名です。詳しくはまたの機会にご説明いたします。いずれにしても銀座泰明クリニックでは現在お悩みの病気にとどまらず、病前性格・人生観などにまで及び、患者様とご一緒に考えてまいりたいと思っておりますので、今後ともどうぞ宜しくお願い致します。

  写真
2007.07.22 Sunday 17:26 | comments(0) | trackbacks(1) | 

うつ病と病前性格

前回は最近のうつ病として「現代型うつ病」「未熟型うつ病」「ディスチミア(気分変調症)親和型うつ病」をご紹介いたしました。いずれも従来の「メランコリー親和型うつ病」に対して、若年期に生ずる性格因を伴ううつ病といえます。すなわち、人生における問題や葛藤に直面して、抑うつを自己の内界に保持することなく、不安・焦燥を表出し、時には回避・依存も生ずる病態です。

「うつ病」と一言で言っても、ライフサイクルや性格傾向により異なった様相を呈します。以下は前回ご紹介した「躁うつ病の病像と病型」から発展し、「気分障害と病前性格」の関連を一覧した図(広瀬徹也、2005)です。まずは、改めてそれぞれの病態と性格をご説明いたしましょう(濱田秀伯、精神症候学、弘文堂、1994、他)。



うつ病(メランコリー、Melancholia)
抑うつ気分または興味・喜びの減退、精神運動抑制、早朝覚醒、体重減少、日内変動などを生じ、生活や仕事に著しい支障を生じる病態。従来型うつ病。
気分変調症(ディスチミア、Dysthymia)
抑うつ気分などが少なくとも2年間以上も続いているが、大うつ病までには至らない状態。従来の抑うつ神経症を含み、幼少期からの葛藤により形成された神経症的性格(内的葛藤を生じて、情緒不安定になりやすい)を基盤に生ずる。
躁極況疹祿
軽躁病を伴う反復性・大うつ病。軽躁病とは、仕事や生活に著しい問題を生じたり入院を必要としたりする程ではない軽い躁病。
非定型うつ病
過食、過眠、鉛様のひどい怠さ (leaden paralysis)、拒絶への過敏性を特徴とするうつ病の亜型。
逃避型抑うつ
高学歴のエリートが仕事の挫折を機にうつ状態になり、出勤恐怖に陥るものの、家事や趣味などは問題なくできる状態。「退却神経症」とも類似している。

執着性格
熱中性、徹底性、几帳面、正義感、一度生じた感情が冷めにくい持続性の性格(下田光造)。
メランコリー親和型性格
秩序志向が強く、自己の要求水準が高い、良心的で他人に尽くす性格 (Tellenbach)。
強迫性格
几帳面、倹約、潔癖、強情などの性格 (Freud)。
抑うつ型人格
重苦しい気分を抱き、人生を悩む人格 (Schneider)。
回避性格
社会的な制止、不適切感および否定的評価に対する過敏性を生ずる人格 (DSM-)。
演技性人格
過度な情動を特徴とし、周囲の人の注意を引こうとしがちな人格 (DSM-)。
自己愛性格
誇大的で、賞賛されたい欲求が強く、他者への共感が欠如する人格 (DSM-)。

従来のうつ病がメランコリー親和型をはじめ、執着性格や強迫性格といった、いわゆるうつ病の病前性格を呈するのに対し、その他のうつ病は様々な性格傾向を背景にしています。DSM- (Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, American Psychiatric Association)によると演技性や自己愛性の性格(Cluster B)は感情的で他者を巻き込みやすい性格、強迫性や回避性の性格(Cluster C)は不安や恐怖を抱きやすい性格とされています。普段はそのような性格傾向を有しながらも生活できているのですが、ストレスがかかると不安や抑うつに陥りやすく、うつ病になるとそれぞれの病態を呈するわけです。

このようにうつ病は各病態に応じてそれぞれ特徴的な性格を背景に持ち、各年代や環境・状況に応じた発病・過程をたどります。もっともメランコリー親和型うつ病以外はどれも思春期・青年期に好発し、病気と同時に成長・発達の問題をはらんでいると言えます。従って前回提示した図の「人格の統合水準」という言葉に表されているよう、成長・発達による人格の統合・向上が望まれる次第です。

さて、うつ病の病前性格をご説明する際には以下の表「うつ状態の臨床分類」もご紹介しないわけにはいきません。わが国の精神病理学の大家、笠原嘉、木村敏によるこの分類(1975、一部改変)は病前性格‐発病状況‐病像‐経過を一元的に説明し、躁うつ病や統合失調症の鑑別も網羅しており、DSMやICDといった操作的診断基準が主流となった現在においても、実際の臨床場面において大変、有用とされています。



これまでご説明してきた「現代型」「未熟型」「ディスチミア(気分変調症)親和型」のうつ病は上記の祁拭Τ詁H娠型に相当するでしょう。精神的な葛藤や人生の問題に直面した際に、儀燭里茲Δ陛儀薪な抑うつ状態にとどまらず、不安・焦燥が表出され、回避・依存、他責も生じうる、神経症的な病態です。

一方、況燭躁うつ病、厳燭賄合失調症の「前駆状態」として現れる抑うつ状態と言えます。病前性格も、うつ病ではなく、躁うつ病や統合失調症の特徴を示します。従って、治療も儀燭里茲Δ陛儀薪うつ病として抗うつ薬を服薬し、休養するばかりでなく、躁うつ病や統合失調症に進展しうる可能性に留意しながら、経過を観察し、適切な対処をしていく必要があるのです。

以上、「うつ病と病前性格」についてご説明してまいりました。メランコリー親和型性格や執着性格、強迫性格が典型的な従来型のうつ病と関連していることは以前よりうつ病の心理教育においてよく話題にされていますが、非典型例や躁うつ病・統合失調症の前駆状態の病前性格については、それほど情報が流布していなかったことと思います。銀座泰明クリニックではこれらの点も考慮しながら、幅広い診療を心がけてまいる次第です。どうぞ宜しくお願い致します。

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2007.06.30 Saturday 23:53 | comments(0) | trackbacks(2) | 

最近のうつ病

前回は非定型うつ病についてご説明いたしました。典型的なうつ病(メランコリー親和型うつ病)というのは真面目で几帳面な中高年の男性が長く続くストレスに耐え切れなくなり発病するといった病態でしたが、非定型うつ病とは敏感・繊細な若い女性が日常のストレスから発病されるといった病態です。銀座泰明クリニックには20-30代の会社員や大学生の方々が大勢受診され、非定型うつ病の方々も相当数いらっしゃいます。どなたも職場やプライベートのストレスから不安・抑うつ、時に過食・過眠を生じがちです。メランコリー親和型うつ病とは異なり、食事も睡眠も過ぎる程に摂れ、ストレスも日常的な内容であるため、周囲からは病気と認められないこともあり、そのことで悩まれている方々も少なくありません。つきましては、改めて世間に流布しているうつ病の概念やイメージを再考していく必要があると思う次第です。

最近、非定型うつ病のように、メランコリー親和型うつ病とは異なったタイプのうつ病が増えていると言われています。具体的には「現代型うつ病」(松浪ら、1991)、「未熟型うつ病」(阿部、1995)、そして「ディスチミア(気分変調症)親和型うつ病」(樽味、2005)という、若い世代を中心とした、比較的、軽症で、身体症状や不安・焦燥を前景とするうつ病です。軽症ながら出勤困難となり、自宅で療養されることが少なくありません。自宅では家事や趣味などを難なくできるのですが、いざ職場へ出勤となると身体が動かなくなったり、動悸や過呼吸を生じたりして行けなくなってしまいます。現状や自分に対して自責的にはならず、環境や他者に対して被害的になったり他罰的になったりすることもあります。一覧表にすると以下のようになります。



このように、いわゆる恐怖症的な心性を有した神経症性のうつ病といってよいでしょう。この点においてかつての「逃避型抑うつ」(広瀬、1977)や「退却神経症」(笠原、1978)とも重複する病態と言えます。大学や会社へ入るまでは目立った葛藤や挫折がなかったものの、いざ現実的な問題や苦難に直面して処理しきれず、逃避や抑うつに陥ってしまう病態です。これらを更に、前回までご紹介してきた躁うつ病と相関させた図として、以下を提示いたします。



さて、これらの病態に対する治療は、メランコリー親和型うつ病が休養と服薬のみでも自然軽快しやすいのに対し、それだけでは不十分で、より積極的な精神療法を必要とします。具体的には不安や抑うつの背景にある職場や学校の問題を認識し、現実的な解決方法を探索してまいります(問題解決療法)。

解決つかない時には、自分自身の考え方(認知)や振る舞い方(行動)を変えることが求められます(認知行動療法)。うつ病を発病すると、否定的に考えたり、逃避的に振る舞ったりしてしまいがちですから、その時々の状況や気分、そして認知や行動を客観的に記録し、治療者と一緒に振り返ることが有効です。そしてより適切な認知・行動パターンを身に付け、現実社会・生活への適応を向上させていくわけです。

また必要あらば、職場や学校の関係者とも三者面談などを行い、環境調整援助体制を要請いたします。これらの作業は実際なかなか容易に進まないこともありますが、銀座泰明クリニックでは可能な限り皆様方のより良い仕事と生活を実現するためにご協力してまいりますので、どうぞ宜しくお願い致します。

・広瀬徹也:「逃避型抑うつ」について.宮本忠雄編:躁うつ病の精神病理2, 弘文堂, 東京, 61-86, 1977
・笠原嘉:退却神経症という新しいカテゴリーの提唱.中井久夫,山中康裕編:思春期の精神病理と治療.岩崎学術出版,東京,287-319, 1978
・松浪克文,山下喜弘:社会変動とうつ病.社会精神医学: 14, 193-200, 1991
・阿部隆明,大塚公一郎,永野満ほか:「未熟型うつ病」の臨床精神病理学的検討‐構造力動論(W.Janzarik)からみたうつ病の病前性格と臨床像.臨床精神病理16: 239-248, 1995
・樽味伸:現代社会が生む”ディスチミア親和型”.臨床精神医学: 34, 687-694, 2005

 うつ病論の現在

心の病:休職急増…目立つ20代、30代 3年で10ポイント増、企業の6割超す

6割以上の企業に心を病んで休職している社員がいることが、財団法人「労務行政研究所」(矢田敏雄理事長)の調査結果で分かった。3年前の調査に比べ10ポイント以上増えている。企業の人員削減が進んだ00年代前半以後の好景気で個人の仕事量が増え、心のダメージを与えている現状が浮き彫りになった。【東海林智】

調査は今年1〜3月実施。上場企業を中心に4168社を対象とし、250社から回答を得た。うつ病など心の病で1カ月以上休職している社員がいるかの問いでは、「いる」が62・7%となり、3年前の50・9%から大きく増えた。企業規模別では1000人以上の企業では93・2%が「いる」と回答した。休職者の平均は9・5人で前回より5人増えた。

◇リストラ後に仕事量増える
「特に増加している年代は」との質問に対しては、「30代」が51・9%(前回39・6%)、「20代」41・2%(同27・6%)、「40代」19・1%(同18・7%)などで、若年層での増加が目立つ傾向となった。同研究所は「若年層の増加は、人数が少ないところに好景気で仕事量が更に増えていることが原因と見られる。長時間労働も増える傾向にあり心が悲鳴をあげている」と話す。

一方、心の問題で医師のカウンセリングや、長時間労働者に休暇を取らせるなどの対策を取っている企業は8割を超え、従業員1000人以上の企業では98・9%になり、企業が事態を深刻に受け止めている現状も分かった。

休職者が完全に職場復帰をした割合の調査では、「半分程度」が22・5%で最多、次いで「7〜8割」が21・5%、「9割以上」が20・4%など復帰できるケースが多かった。

毎日新聞 2008年5月12日 東京夕刊
2007.05.26 Saturday 20:49 | comments(0) | trackbacks(2) | 

非定型うつ病

これまで「うつ病」や「躁うつ病」について繰り返しご説明してまいりました。これらは気分が落ち込んだり、高ぶったりする「病気」です。中にはもともとの「性格」といった方もいらっしゃり、10代の頃から悩んでいたのだけれども、就職して仕事に支障を生ずるようになり、ようやく受診したという方もいらっしゃいます。いずれにしても適切な治療により症状が緩和されますので、早めの受診をお勧め致します。

「うつ状態」と「躁状態」とは明確に区別できる時とできない時とがあります。「混合状態」といって、両者が入り混じったような「不機嫌」で「イライラ」したような状態にあると、ご本人は抑うつ的な気分でありながら、周囲からはそのように見えないことがあります。更には「非定型うつ病」といい、典型的なうつ病とは異なった状態を呈することもあります。すなわち、過食、過眠、鉛様の麻痺 (体が鉛様に重く感じられる症状、leaden paralysis)、拒絶への過敏さを特徴とする病態です。典型的うつ病の場合、不眠、食欲不振、精神運動抑制を呈しますので、丁度、逆の様な状態になるわけです。非定型うつ病は若い女性に多く、元々、敏感・繊細なご性格の方がなりやすいため、本人は具合が悪いのに、周囲からはいつもの性格ではないかと軽視されてしまいがちです。時にはむしろ「怠けている」「甘えている」と誤解されることもありますので、改めて「病気」として認識が求められる次第です。



といっても「非定型うつ病」が正式に「病気」として認められるようになったのは、ここ10年程のことでしかありません。それもうつ病のサブカテゴリーとしての扱いであり、明確な定義がなされているわけでもありません。双極況疹祿欧箒界性人格障害との合併や関連も指摘されており、実際のところかなりオーバーラップして診断・治療されているのではないかと考えられます。また前回ご説明したsoft bipolar spectrumに6-7割があてはまるという知見も得られており、「うつ病」というより「躁うつ病」としての見地から診断・治療がなされるべきでしょう。更にパニック障害との合併も指摘されており、パニック障害自体も双極性障害との合併や前駆症状としての指摘がされていることを踏まえると、これらは若年の女性における不安・抑うつ症候群として考えるのが妥当なのかもしれません。

治療は、そもそもこの病気がアメリカにてMAO阻害薬という薬の効果ある一群として定義されたため、MAO阻害薬が効果的なのですが、日本では使用できません。それに代りSSRI, Serotonin Selective Reuptake Inhibitorが効果的と言われています。また躁うつ病が合併している時は気分安定薬を、パニック障害が合併している時は抗不安薬を併用するのが適切です。従って、その時々の気分や病状をよく把握しながら薬物を選択する必要があるのです。

一方で認知行動療法といった精神療法も効果的です。非定型うつ病の特徴として、拒絶への過敏さがあり、他者の言動や環境の変化に敏感に反応する傾向があります。このため面接においてはご本人の認知や行動を客観的に捉え、現実的に適切な意思決定をしていくことを援助してまいります。特に境界性人格障害をはじめ性格の問題を伴っている場合は一時的な対応にとどまらず、長期的な治療が求められます。時に幼少期や思春期からの親子関係や友人関係も振り返りながら、現在の対人関係・葛藤状況に焦点を当てた精神療法を行います。これらは直ぐに解決する問題ではありませんが、銀座泰明クリニックでは治療者との信頼関係のもと、忍耐強く治療を継続していくことにより、少しずつ改善してまいりますので、どうぞ宜しくお願い致します。

非定型うつ病
2007.04.18 Wednesday 10:56 | comments(2) | trackbacks(0) | 
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