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軽い躁うつ病

前回は躁うつ病(双極性障害)についてご紹介しました。抑うつ状態のみでなく、躁状態と言われる、元気の良い、調子の高い状態も生ずる病気でした。この状態は本人にとって心地よく、病気であるという自覚(「病識」と呼びます)を伴わないことが多いものです。周囲も元気ならば病気とは言えないのかと見過ごしてしまいます。しかしこの躁状態は時に攻撃的になったり、誇大的になったりして、トラブルを引き起こします。また気持ちが大きくなり、無理な仕事を引き受けたり、高価な買物をしたりして、後で悔むこともあります。この結果、躁状態の時の言動が、その後の抑うつ状態を引き起こすことになるのです。

最近、厚生労働省や日本医師会をはじめとした諸機関の活動により、うつ病・うつ状態は大分、一般的になってきましたが、反面、躁うつ病・躁状態についてはまだまだ理解が得られていないようです。このため問題となるのは、内科や心療内科でも安易に抗うつ薬が処方され、その結果、薬剤性の躁状態が生じてしまうことです。上機嫌の軽い躁状態ならば未だ良いのですが、不機嫌になったり、攻撃的になったりする混合状態またはMixed depression(大うつ病の症状があり、かつ軽躁症状が2−3個以上ある)のような状態を呈すると周囲も苦慮します。更にSSRIによるActivation synderomeと呼ばれる易刺激的な状態やベンゾジアゼピン系の抗不安薬による脱抑制が生じると、ますます混迷を深めてしまいます。本来このような時は速やかに抗うつ薬や抗不安薬を中止して、気分安定薬 Mood sitabilizerや抗精神病薬へ切り替えるべきなのですが、精神科の専門医師でないとそこまでの判断はできません。つきましては、うつ病のみならず、躁うつ病の啓発・教育活動も行われ、精神科との医療連携が向上することを期待する次第です。




このように躁状態というのは予想以上に頻繁に生じるもので、注意深い観察が必要です。海外では当初うつ病と診断された方の3‐5割が実は躁うつ病、双極性障害だったという調査結果も出されています。このため国内の精神科医の間でもこの事実は最近よく話題になっており、軽い躁状態を見逃さないようにと注意が喚起されています。軽い躁うつ病、双極性障害は、Soft bipolar spectrumと呼ばれ、幅広い定義がされています。具体的には以下のような分類がされています。

Bipolar 1/2
統合失調双極性障害
Bipolar
躁うつ病
Bipolar 1/2
遷延した軽躁を伴ううつ病
Bipolar
自生的で明瞭な軽躁を伴ううつ病
Bipolar 1/2
循環気質者のうつ病
Bipolar
抗うつ薬や身体治療により起こる軽躁とうつ病
Bipolar 1/2
物質やアルコールによって起こる軽躁とうつ病
Bipolar
発揚気質者のうつ病

循環気質や発揚気質とは、気分の変動や循環を特徴とする方々のことですが、具体的には以下のように説明されます。

循環気質
善良、温厚、社交的ではあるが、爽快と悲哀、活発と緩慢の両極を揺れ動く。
発揚気質
快活で現実的、世話好きの楽天家。周囲と喧嘩をよくするが、直ぐ和解する。

従って、このような気質の方が抑うつ状態になった時には躁状態の可能性も考慮しながら治療されるべきで、病状に応じては気分安定薬を併用することが求められるのです。

一方でこの軽い躁うつ病の方は人格障害と誤診されることもあります。特に境界性人格障害 Boderline Personality Disorder, BPD と呼ばれる、情緒不安定で、慢性的な空虚感を覚え、自傷行為や対人関係のトラブルを繰り返してしまう人格障害と誤診されることが少なくありません。人格障害の方へは薬物療法よりも心理療法が優先されがちなため、本来は必要な気分安定薬を処方されないまま、長期間に渡る心理療法やカウンセリングに時間とお金を費やしてしまいます。更には幼少期や思春期の心的外傷(トラウマ)をいたずらに賦活・再燃され、余計に混乱してしまうこともあります。つきましては、まず気分安定薬を中心とした服薬を行い、その上で現実志向的な心理療法などが行われるべきでしょう。なお躁うつ病と境界性人格障害が合併することもありますが、その時の治療手順は同様に、躁うつ病としての治療を優先してからと考えられています。



以上のように軽い躁うつ病は何かと誤解・誤診されやすい病気でありますが、銀座泰明クリニックでは生物(薬物)・心理・社会学的に適切でバランスのとれた治療を行ってまいりたいと思います。

双極性障害  ─躁うつ病への対処と治療
2007.03.26 Monday 13:54 | comments(2) | trackbacks(0) | 

躁うつ病とは

前回までは「うつ病」についてご説明いたしました。気分が沈み、何も面白くなく、意欲のなくなる病気でした。今回からご説明する「躁うつ病」の躁状態はその対極で、気分が高揚し、何でも楽しく、意欲の亢進する「病気」です。一見、楽しく幸せな状態と誤解されるかもしれませんが、度が過ぎると困ってしまいます。落ち着き無く、口数が多く、怒りっぽくなるからです。更にあれこれと手を出し、お金を使い、異性を誘惑することもあります。このため家族をはじめ周囲の人々に迷惑をかけてしまいます。また躁状態に関して、本人は自覚がないことが多く、気が付いても、気分が良いため気にしないことがほとんどです。むしろ躁状態の時の「元気一杯な自分こそが本当の自分である」と過信してしまうことさえあるのです。

躁うつ病はその名の通り「躁」と「鬱」とが繰り返す病気です。躁のみの「躁病」は数少なく、多くは躁の後に鬱を迎えます。動き回り喋りまくりエネルギーを枯渇して鬱になる場合もあれば、躁の時に大きな決断をして、後で悔み鬱になる場合もあります。いずれにしても、躁の時の言動が後に鬱を招くわけです。しかも「うつ病」の鬱と「躁うつ病」の鬱とでは、躁うつ病の時の鬱の方がその落差のため本人が感じる鬱は深いようです。いわばジェットコースターのように激しくアップダウンを繰り返すからです。



このため躁うつ病の方の人生はしばしばドラマティックで、エピソードに事欠きません。度重なる結婚と離婚、転居や転職、失敗と成功など、目まぐるしく移り変わる人生は波乱万丈とも言えます。また、アルコールやギャンブル、セックスといった物質や行為に依存しがちでもあります。そして躁うつ病に加え、アルコールや薬物への依存症、ギャンブルからの借金、浮気や不倫などの問題を抱え込みます。これらは激しい落ち込みを避けるための防衛手段であったり、外交的で刺激を求める性格から導かれた結果であったりします。

前回ご説明したとおり、躁うつ病の方の病前性格とは明るく楽しく、社会的に好ましい性格とも言えます。集団の中では一際、目立ち、皆の注目を浴びる存在であります。実際に実業家や政治家、芸能人といった世の中で成功されている方の中に、実は軽い躁うつ病であるという方がいらっしゃいます。普通の人よりも多くの仕事をしたり、目立った言動をしたりするためには、軽い躁状態でないとできないのかもしれません。しかし一方で、周りの人々が気の付かないところで、落ち込んでいることもあります。成功していた方が突然に自殺をされたり、苦悩に満ちた告白をしたり、自叙伝を出版されたりするのは、軽い躁うつ病のためだったりするのです。次回は、銀座泰明クリニックへも大勢受診されている、この軽い躁うつ病についてご説明します。


2007.02.27 Tuesday 23:36 | comments(1) | trackbacks(1) | 
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