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うつ病 〜生存戦略が 生んだ悲劇〜 NHKスペシャル

[ うつ病 ]

人類が苦しむ病気を、進化の観点から追求する「病の起源」。シリーズ第3集は、働き盛りを襲い自殺に追い込むなど、深刻な社会問題になっている「うつ病」。世界の患者数は3億5千万人に達し、日本でもこの10年あまりで2倍に急増している。なぜ、私たちはうつ病になるのか?その秘密は、意外にも5億2千万年前に誕生した魚の研究から明らかになってきた。魚でもある条件を作ると、天敵から身を守るために備わった脳の「扁桃体(へんとうたい)」が暴走し、うつ状態になることが分かってきたのだ。さらに2億2千万年前に誕生した哺乳類は、扁桃体を暴走させる新たな要因を生みだしていた。群れを作り外敵から身を守る社会性を発達させたことが、孤独には弱くなりうつ病になりやすくなっていたのだ。そして700万年前に人類が誕生。脳を進化させたことで高度な知性が生まれ、文明社会への道を切り開いてきた。しかしこの繁栄は、皮肉にも人類がうつ病になる引き金を引いていた。文明社会によって社会が複雑化し、人間関係が一変したことが、扁桃体を暴走させ始めたのだ。番組では、研究の最前線で明らかにされてきたうつ病の秘密に迫り、そして進化を手掛かりにして生まれた新たな治療法を紹介。人類の進化がもたらした光と影を浮き彫りにしていく。

 

うつ病の起源は「扁桃体」の過活動にありました。扁桃体は恐怖、不安、悲しみといった感情を生じる脳の深い部位です。5億2千年前、地球上に魚類が誕生した時、天敵から身を守るため、脳・神経系の発達とともに発生しました。番組では天敵と同じ水槽に入れられた魚がうつ状態となり、動かなくなっている様子が映されました。ストレスから扁桃体の過活動、ストレスホルモン(副腎皮質ホルモン、コルチゾールと考えられます)の過剰分泌、および神経細胞の萎縮も認められました。

2億2千年前、哺乳類が現れました。その中で最も社会性に富むチンパンジーで、一時期、隔離された一匹がうつ状態に陥っていました。孤独がうつを引き起こす原型です。370万年前、アウストラピテクスが現れますと、記憶の貯蔵庫、「海馬」が発達しました。海馬は扁桃体と連動し、恐怖の記憶に反応するようになりました。20万年前、ホモサピエンスでは、脳内の「ブローカ野」が発達し、言葉により他者からの情報に反応するようになりました。このように、人類は進化と引き換えに、天敵、孤独、記憶、言葉、とうつ病の危険因子をはらむことになったのです。

そして、狩猟採集社会から文明社会へと至っては、「貧富の差」が生じるようになり、平等の欠如がうつ病を引き起こすようにもなりました。これは「ハッザ族」というアフリカ・タンザニアで狩猟採集を営む、平等な民族において、極めてうつ病の罹患者が少ないことから例示されてました。反対に、現代社会において、競争や格差の結果、特に事務職や一般職といった裁量権の少ない職種にうつ病が高頻度に生じることが例示されました。従って、資本主義社会においては、適度な競争は認めつつも、平等・公平な社会を再構築していくことが、うつ病の治療・予防に必要であることが示唆されます。

さらに、今後の治療として、扁桃体と直接刺激する、脳深部刺激治療DBS. Deep Brain Stimulation および生活改善療法TLC. Therapeutic Lifestyle Change が紹介されました。DBSは国内ではパーキンソン病などの神経疾患において行われている治療で、脳深部へ電極を埋め込み、持続的に微弱な電気刺激を与える治療法です。国内ではうつ病へ臨床応用されていませんし、されたとしても重症・慢性うつ病に限られることでしょう。

一方、生活改善療法は今すぐに、誰でも実践できる方法です。すなわち、規則正しい生活、睡眠・食事、運動、社会的な結びつきを大事にする、という内容です。カンザス大学のウェブサイトによりますと、毎日30分以上 光に浴びること、約8時間の睡眠時間を確保すること、ω3(オメガ・スリー)脂肪酸(EPA, DHA)の摂取(青魚、イワシ、サバ、カツオ、ブリ、サケ、マグロなどに多く含まれています)、週3日は30-40分の有酸素運動を行うこと、一人で考え込まないこと、家族や友人に頼ること、が推奨されています。

TLC. Therapeutic Lifestyle Change http://psych.ku.edu/tlc/

このように、うつ病は人類の進化の代償として生じた病気とも言えます。特に現代の文明化社会においては、「物質的な豊かさ」と引き換えに、「精神的な貧しさ」を生じたとも言えるのではないでしょうか。しかし、時計は逆戻りさせられませんので、我々ができることは、得たものと失ったものを十分に認識し、失ったものを少しでも補填できるよう努力していくことです。銀座泰明クリニックもそのような考えのもと、精神医療を提供してまいります。

2013.10.20 Sunday 23:00 | - | trackbacks(0) | 

うつ病の分類

[ うつ病 ]
これまで、うつ病の療養や復職についてお話してまいりました。薬を飲み、ゆっくり休む、具合が良くなったら無理をしないで少しずつ再開するということでしたね。しかし、それで全員が良くなるかと言うと、必ずしもそうでない場合があります。単純なうつ病ならば1−3ヶ月で軽快・安定しますが、時には再発を繰り返したり、症状が遷延したりすることも少なくありません。うつ病の3割が難治性とも言われていますから、むしろ直ぐに良くならなかった時にどうするかも考えておくべきでしょう。

うつ病の経過・予後は病気の種類にもよると考えられていますので、今回はこれについてご説明いたします。まず伝統的には以下の3分類と言われています。

外因性:脳器質性(外傷、腫瘍、卒中など)、
     身体疾患、薬物などによる
内因性:脳の神経伝達、機能異常などによる
心因性:心理的な問題による


外因性の場合は総合病院や専門病院に通院・入院されていることがほとんどです。こちらのブログを読まれている方で、外因性の方は少ないことでしょう。治療としてはうつ症状もさることながら、身体の病気の治療を優先していただきます。

内因性はうつ病の中核となる種類です。「誘因なく」ということもありますが、多少の誘因・心因を認めることもあります。但し、それにしては落ち込みが深く、不眠、食欲不振、日内変動(午前に抑鬱が強い)など、身体性の症状が現れている時は内因性のうつ病として診断いたします。



心因性はどなたもなりえますが、治療は長引くことがあります。環境や性格に拠るところが大きく、それが変わらないことにはうつも良くならないからです。環境が変われば、直ぐに良くなることもありますし、変わらなければいつまでも続いたりします。また性格に原因がある時はこれに働きかける必要があります。



内因性と心因性とは明確に区別できるものではありません。どちらもある程度、重複しているものです。これはうつ病という病気なり、「心」という存在なり、全ては「脳」という臓器の機能によると考えられるためです。しかしながら、分かりやすく大別すると以下のようにご説明できます。

     睡眠     日内変動  誘因  病前性格
内因性:中途覚醒  朝方悪い  なし  真面目、自立的
心因性:入眠困難  夕方悪い  あり  神経質、依存的


一方で、内因性のうつ病には「躁うつ病」のうつ状態であることも少なくありません。躁うつ病というのは、躁状態といわれるうつ症状の対極の症状が現れる病気です。具体的には、気分の高揚、怒りっぽい、考えが次々と浮かぶ、口数が多い、気が散る、動き回る、暴飲暴食、アルコール・ギャンブル・セックスなどです。軽い躁状態ならば上機嫌であったり、仕事がよくできたり、自分も周囲も困りませんが、著しくなると周囲に迷惑を及ぼして問題になります。躁とうつとは交代して周期的に生じることもあれば、両者の混じった「混合状態」となり、不機嫌でイライラした具合が続くこともあります。

いずれにしても、躁うつ病に伴ううつ状態の場合は、これを考慮した治療を行うべきです。すなわち抗うつ薬のみでなく、気分安定薬mood stabilizerと呼ばれる薬を併用することが必要なのです。それでは躁うつ病のうつ状態とうつ病のうつ状態を見分けるにはどうするのでしょうか。以下の大別が目安になります。

      病前性格        体型  遺伝   発病年齢
うつ病 :真面目(執着気質)  普通  少ない  中年期以降
躁うつ病:社交的(循環気質)   肥満    多い       思春期・青年期


うつ病の方は病前においても大人しく、真面目な公務員といった律儀な感じの方が多いですが、躁うつ病の方は賑やかで、社長や政治家といった感じの豪快な人物であることが少なくありません。これまでの生活歴をうかがっても、うつ病の方は堅実・地味ですが、躁うつ病の方は波乱万丈で、転職や転居、時に度重なる結婚・離婚をされていることもあります。従って、躁うつ病のうつ状態には的確な診断と治療が求められるわけです。次回は躁うつ病ついてより詳しくご説明いたします。それでは今年も銀座泰明クリニックをどうぞ宜しくお願い致します。


2007.01.21 Sunday 23:54 | comments(1) | trackbacks(1) | 

うつ病からの復職

[ うつ病 ]
うつ病にて休職・療養される方は少なくありません。特に東京、有楽町、新橋の近辺へご勤務されている方は、職場の要求水準も非常に高く、一旦、調子を崩されると、職務を継続することが困難になってしまいます。具合悪い時は職務遂行もさることながら、毎朝、起きて、混んだ通勤電車に乗ることさえできなくなります。このため、しばらくの期間、自宅療養することになるのです。療養の仕方は前回ご説明いたしました。

休職期間は病気の重症度や本人・職場の都合などにも拠りますが、概ね1−3ヶ月間以上に渡ります。はじめ1−2ヶ月は自宅でよく休み、回復したら、後の2週間〜1ヶ月を復職の調整期間に充てるのが適当でしょう。復職はまさに「病み上がり」の状態ですから無理しないことが肝要です。体調や気分を確かめながら、少しずつ会社や仕事に慣らしていきましょう。職場復帰支援の流れについて、概略を以下に提示いたします。厚生労働省、心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き、2004.

1. 病気休業開始および休業中のケア
2. 主治医による職場復帰可能の判断
3. 職場復帰の可否の判断および職場復帰支援プランの作成
4. 最終的な職場復帰の決定
5. 職場復帰後のフォローアップ

これには職場の方々の理解や協力が欠かせません。直属の上司や同僚をはじめ、大企業になると人事部や産業医も介入することになります。主治医の診断書をもとに、三者間で相談することも有用です。この際、大事なことは、本人・主治医・会社の意見をできるだけ調整することです。ともすると、ご本人や会社は早く復職することを望まれるものですから、結果として時期尚早になり、再燃や増悪を来してしまいます。

復職の目安は、ご本人の自覚的な調子もさることながら、客観的な観察が必要です。この点を主治医や産業医と確認していただくべきでしょう。ご本人は早く復職しなければならないと焦りがちですが、本当に仕事ができるのか、仕事がしたいのか、確認いたしましょう。「働かなければならない」と思ってしまう間は望ましくなく、休んでいても時間と体力をを持て余し、「働きたい」と思えるようになるまでは十分に休まれることをお勧め致します。うつ病になる方は生真面目で責任感の強い方が少なくありませんから、意識してゆっくりお休みいただくようお勧め致します。ご参考として「職場復帰準備性評価シート」をご紹介いたします。秋山剛、職場復帰について、精神医学49, 6: 582-590, 2007.

A. 基本的な生活状況
1. 起床時刻
2. 熟眠感
3. 身体的活動性
4. 身だしなみ
5. 食生活リズム

B. 精神症状・身体症状・精神活動・他者との交流
6. 精神症状による支障
7. 身体症状による支障
8. 集中力
9. 理解力
10. 他者との交流

C. サポート状況
11. 家族との関係
12. 主治医との関係
13. 服薬へのコンプライアンス
14. 健康管理スタッフとの関係

D. 業務関連
15. 業務内容への関心・理解
16. 業務への過度な不安
17. 職場の人間関係に関する葛藤
18. 業務遂行能力(以前の職場に戻るとして)

E. 準備状況
19. 意欲と努力
20. 健康管理スタッフと直接、実際に面接した回数(月平均)
21. 職場の上司と面接、電話で接触した回数(メールは含まず)
22. 業務への準備
23. 全体的評価



復職当初は、これも治療の一環と捉えて出勤しましょう。いわば「慣らし勤務」または「リハビリ勤務」といった具合です。いきなり周りと同じペースで仕事をしてはいけません。まずは出勤練習、毎朝の通勤に慣れるくらいからはじめましょう。はじめは毎朝、早起きして電車に乗るだけでも疲れることと思います。仕事は責任のかかるものや、難しい内容のものは避け、簡単な作業程度に止めましょう。当然ながら残業や出張は禁止です。

職場が許してくれるならば、半日勤務・短縮勤務など配慮していただきたいものです。理想的には週2-3日、10-15時からはじめたいものです。そして慣れて来たら、少しずつ時間・量とも増やすようにしましょう。時にはどうしても具合が優れず、休んでしまうこともあるでしょう。この点も事前に了解していただけるようお願いしたいところです。とにかく体調や気分を確認しながら、段階的に復帰することが大事です。リハビリ勤務は3ヶ月程とされています。

復職する職場自体も再考することが必要になることがあります。発病した誘因が職務内容や人間関係だった場合は、同じ職場に戻ることは再発を招きます。復職前に所属長や人事部の方々とよく相談しましょう。時には降格させられたり異動させられたりすることがあるかもしれません。しかし、病気のためには仕方ないと割り切る勇気も必要です。えてして脚光を浴びている部署や地位というのは長続きしないものです。長い人生ですから、地位や収入よりも、健康を優先した方が幸福になるのではないでしょうか。

さらには現在の会社に勤務し続けることが本当に良いのかという場合もあるでしょう。会社によっては徹底した業績主義だったり、合併に伴う内部抗争があったりして、それらが多くの病人を発生させていることもあります。いずれにしても、復職する際には、今一度、病気になられた原因や誘因を考える必要があります。そして再発を防ぎ、より良き仕事・人生を送れるように工夫してまいりたいものです。銀座泰明クリニックでは、休職から復職に至るまで、皆様の仕事と人生がより良きものになるようにご協力してまいる次第です。どうぞ宜しくお願い致します。














2006.12.24 Sunday 12:59 | comments(0) | trackbacks(0) | 

うつ病による休職

[ うつ病 ]
前回までは、うつ病の経過と回復の過程をご説明いたしました。とにかく焦らないでゆっくり休むことが第一です。うつ病の療養は特に何かをしたら直ぐ治るというものではありません。それまでのストレスフルな仕事や生活から離れ、心穏やかに過ごすことが大事なのです。と言われても、具体的にどうしたら良いのか困ってしまう方もいらっしゃることでしょう。そこで、今回はうつ病の療養の仕方について詳しくご説明したいと思います。まずは項目を列挙いたします。


・朝は早起きする
・食事は規則正しく摂る
・昼寝は15〜30分以内
・自分の部屋でゆっくり過ごす
・特に何もしない
・簡単な日記をつける
・夜は早く寝る
・ご家族は温かく見守る


・朝は早起きする

理想的には、日の出の時間(06時22分、11月21日)です。
人間の身体は太陽の光で一日のリズムが作られます(サーカディアン・リズム)。特に朝日を浴びることで頭も体も目が覚めます。専門的に言うと、動物というのは光を眼球の網膜を通して感じ、脳の視床下部にある視交叉上核を刺激させて一日のリズムをリセットしています。毎日24時間の規則正しい体内時計を働かせるためには、朝日を浴びることが必要なわけです。

散歩

しかし、うつ病の患者さんの多くに、早朝覚醒・起床困難を訴えられる方が大勢いらっしゃいます。これについては早起きを「努力目標」としてはいかがでしょう。朝早く一旦、起きて顔を洗い、歯を磨き、朝日を浴びる、どうしても眠かったり、怠かったりするならば、もう一度、寝るのも仕方ありません。とにかく、朝一度、目を覚まし起きることが望まれるのです。

・食事は規則正しく摂る
これも具合が悪い時はなかなかできることではありませんね。特に朝食は食べられない方がほとんではないでしょうか。にもかかわらず、朝食後の薬が用意されていて、結局、飲めないまま、スキップしてしまうこともあるようです。朝食はしっかり摂るに越したことありませんが、どうしても食べられない時は、甘口のコーヒー牛乳などがお勧めです。糖分で血糖が上昇し、ミルクが胃壁を守り、少量のカフェインが目を覚ましてくれます。なおエスプレッソなど濃いコーヒーは空腹の胃粘膜を障害しますので、避けて下さい。過量のカフェインは不安や焦燥を惹起します。ヨーグルトドリンクなども用意し、それと朝食後のお薬を飲むと良いでしょう。



昼食・夕食も12時、18時頃に規則正しく摂りましょう。食欲がなくても、一定の時間にある程度の量を食べることが大事です。食べられず、体重が落ちることで益々、心身が弱ってしまう方が少なくありません。一方で、夜間にイライラして過食してしまう方もいらっしゃいます。これも当然、避けるべきことで、イライラした気持ちを抑えられるよう、様々な対処方法を用意してまいりたいものです。

・昼寝は15〜30分以内
昼食後、しばらく経つと眠くなります。これは胃に血液が集まり、副交感神経が優位になるためで、健康時でもあることです。昼寝、午睡は自然現象であり、有用です。しかし時間は30分以内に止めましょう。それ以上、眠ると睡眠が深くなり、2-3時間は眠ってしまいます。そして夜に眠れなくなり、夜更かしして、結果、翌朝、起きられなくなるという悪循環に陥ります。うつ病で自宅療養していると、何もすることなく、ともすると寝てばかりになってしまいます。ソファや安楽椅子などでくつろぐのは良いですが、眠るのは最低限にしましょう。

・自分の部屋でゆっくり過ごす
誰でも自分の部屋が一番、落ち着く場所でしょう。家族に合わせて無理に居間で過ごすことはありません。ましてや、友人や同僚・上司との面会は避けましょう。うつ病になると人に会って話すことが億劫になります。親しい友人や家族でさえもです。このような時は自分の部屋でゆっくり過ごすことがお勧めです。それでいて何となく寂しくなり、誰かと話したくなったら、居間に行き家族と少し話しましょう。電話やメールも同様で、やりたくなったら少しだけやります。当然、仕事の電話やメールをすることはできる限り避けましょう。必要最低限に済ませます。家族や友人に代理を頼むのも一法ですね。

・特に何もしない
うつ病の療養と言っても、特に何もすることはありません。むしろしてはいけないことの方が多くあるのかもしれません。回復期ならば良いですが、うつ病の極期というのは何かすると、疲れてしまうだけなのです。例えば、本を読んだり、テレビを見たり、ネットをしたりといった、視覚を使う行為はかなり脳・神経が疲れてしまいますので避けましょう。外出や運動も具合が悪い時は体力を消耗するばかりとなります。

したがって、療養当初はとにかくのんびりと、雲の流れを眺めたり、鳥のさえずりを聞いたりする程度が良いでしょう。最近、流行のヒーリングミュージックを流したり、アロマを漂わせたりするのは悪くありませんが、要は、本人が心地良く感じるかどうかです。子供やペットでさえも、可愛いと思える時と、うっとおしく感じてしまう時とがあるのです。



なお、「転地療養」は両刃となる可能性があるので、注意が必要です。よく行き慣れた別荘などへ行き、気が休まったという方もいれば、見ず知らずの観光地などへ連れて行かれ、むしろ気疲れしてしまった方もいらっしゃいます。具合が悪い時には遠方に車や電車で異動するだけでも疲れてしまうものです。

更に、親元を離れ、一人暮しをしている青年には、実家に帰り休める方と、親には言いたくないから、心配かけたくないからと、内緒で休んでいる方とがいます。この場合は、その方ごとに背景や事情を考慮しながら検討を致します。

・簡単な日記をつける
一日の終わりに簡単な日記を付けましょう。その日したこと、あったことなど、メモをする程度で結構です。ともすると単調に過ぎてしまう毎日を見直すことができますし、規則正しい生活を送るための動機・計画につながります。更に一日を午前・午後・夜間などに区切り、◎○△×などの評価をすることも一案です。「薬を飲んで休んではいるけれど、本当に良くなっているのか」と心配されてしまう方も少なくありません。このような際、1週間ごとに振り返りなどをすると、以前よりも○が増えた、×が減ったと気づかれるはずです。なかなか気づかないでしょうが、日々、少しずつ良くなっている変化を確かめて、安心材料にしていただけると幸いです。以下の「生活行動記録表」は参考になるでしょう。



従って、この時期は心の移り変り等を細かく詳しく記す必要はありません。むしろ、具合が悪い時は、過度の内省や振り返りを避けましょう。そのような時はどうしても悔恨や自責の念にとらわれるものです。その結果、否定的な考えから悲観的な決断をしてしまうこともあります。ある程度、回復してきて、前向きな将来を考えられる余裕ができたら、思考や感情を記録して客観的に分析することがお勧めできます。いわゆる「認知行動療法」と言われる治療法です。これについてはまた機会を改めてご説明したいと思います。

・夜は早く寝る
朝早く起きるためにも、夜は早く寝ましょう。どの病院でも病棟では21〜22時に消灯します。夜更かしは昼夜逆転のはじまりですから、とにかく早く寝ましょう。眠れない時には睡眠薬を飲みましょう。睡眠薬を飲むと止められなくなる、頭がボケてしまうと心配し、できるだけ飲まないようにする方が少なくありません。現在、流通しているベンゾジアゼピン系の睡眠薬は安全性が高いですから、安心して服用して下さい。もちろん睡眠薬を飲まないで眠れるならそれに越したことはありませんが、眠れないならば飲んででも眠りましょう。飲まないで眠れないよりも、飲んででも眠った方が、心身の健康につながります。

と言って、全てを薬で解決しようとも思わないで、まずは規則正しい生活や静かな室内環境を保てるよう心がけることを優先しましょう。コーヒーや紅茶などのカフェインを夕方以降に飲まないようにして下さい。更にテレビや音楽などで刺激的な内容の放送は避けましょう。アクションやホラーなどは禁物です。夜の寝付き良くするためには、夕方から心穏やかに過ごしていただくことが肝要なのです。

・ご家族は温かく見守る
ご家族の方々へはご本人を温かく見守っていただけるようお願い致します。ともすると何かしてあげなければならないと、過保護・過干渉になり、結果的に逆効果になってしまいます。ご家族も焦る気持ちを抑え、温かく見守っていただけると幸いです。話かけ・声かけも、ご本人の様子・反応を見ながらにしましょう。本人が話したそう、寂しそうにしていればそれに応じてあげる程度です。家族が話しかけるよりも、本人が話したいことを聞いてあげる姿勢が理想です。何も言わなくても、そばに居る、同じ家の中に居るだけで安心につながります。付かず離れず、適度な距離を保てると良いですね。

家族

最後に繰り返しますが、うつ病の療養は焦らずゆっくりと休むことが大事です。何かしたから良くなるものではありません。薬を飲み、よく休んで、自然治癒力を十分に賦活させられるよう、心穏やかに過ごすことが一番です。ご家族の方々にはそのための環境整備をしていただきながら、温かく見守っていただけると幸いです。銀座泰明クリニックもその一助となれるよう、ご協力してまいりますので、今後とも宜しくお願い致します。

【改訂】精神科養生のコツ
2006.11.20 Monday 23:53 | comments(1) | trackbacks(2) | 

うつ病からの回復

[ うつ病 ]
前回は「うつ病の経過」について概略をご説明いたしました。最近でこそ「心の風邪」と呼ばれ、気軽に捉えられるようになってきましたが、実際には時間がかかることも少なくなく、治るには数週間、時には数ヶ月間、長い方は数年間かかることもあります。このため「心の風邪」ではなく、「心の肺炎」と呼んだ方が良い場合もあるのです。

そこで「直ぐ治そう」「治さなければ」とは考えずに、治るのを「ゆっくり待つ」ことが必要です。うつ病になられる方々は真面目で心配性の方が少なくないため、「一日も早く治して仕事に戻らなければならない」と強迫的に考えてしまうようですが、それは焦りや不安を生じ、むしろ回復を遅らせしまうことにもなりかねません。毎日ゆっくりと穏やかに過ごしているうちに、「そう言えば治っていた」くらいで良いでしょう。



うつ病からの回復をうまく形容した言葉に「三寒四温」があります。これは冬から春にかけて徐々に暖かくなる天候を表した言葉で、3日寒くても4日暖かくなり、そしていつしか春になるという意味です。冬の寒さをうつ病の症状に例え、じっと寒さを堪え、日々を過ごす、日が経つにつれ暖かくなる、時に寒い日へ戻っても、長い目で見れば確実に暖かくなり、春を迎えるということです。「冬来たらば春遠からじ」とも言いますね。うつ病の経過も、時に眠れなかったり、落ち込んだりと、悪い日へ戻ることが少なくありませんが、長い目で見れば確実に良くなりますから、どうぞご心配なくお過ごし下さい。もう少し専門的なご説明としては、以下のような経過予想図があります。



病気のはじめは「不安・焦燥」「憂うつ」といった苦悶感が生じ、それこそ身の置き所がない程に苦しかったこともあったかとお見舞い申し上げますが、治療・服薬とともに次第に和らぎ、「手がつかない」「根気がない」といった意欲の低下が残ります。これは専門用語で「抑制」と呼ばれる症状で、時には結構、長期間、続きます。家庭で日常生活を送るには問題ないのですが、職場へ行き仕事をしようという気にはなれません。薬も多く飲んだり、何度も変えてみたりしても直ぐ良くならないことがあります。このような時も焦らずにゆっくりと「時間」をかけて「待つ」ことが必要です。

うつ病の治療に必要なものは「お薬」と「休む」ことです。過労性、軽症の場合は休むだけで良くなることもあります。休むには「時間」が必要です。これまで毎日、忙しく働いてきた方は「特別休暇」をもらったと思い、心置きなく休まれるのが良いでしょう。うつ病になられる方の中には、もう何年間もまとまった休暇なく働かれてきた方もいらっしゃいます。そして、ある程度、回復したら、これまでの人生を振り返り、今後どう生きていくのかを改めて考えられるとより良いでしょう。うつ病の罹患がその方の「人生の転機」となることが少なくありません。人生の目的なり、価値観なりを改めて見つめ直す機会にできたらば幸いです。「禍転じて福と成す」という言葉もあります。銀座泰明クリニックは長らくうつ病で悩んでいられる方々に付き添いながら、今後の生き方を模索できるような機会をご提供できるよう努めてまいります。今後ともどうぞ宜しくお願い致します。

うつ病臨床のエッセンス
2006.10.22 Sunday 09:59 | comments(1) | trackbacks(9) | 

うつ病の経過

[ うつ病 ]
これまで当院を受診された患者様の半数以上「うつ病・うつ状態」の診断に相当されました。特に働き盛りである20・30・40代のビジネスマンやOLの方々が中心となります。症状は軽い方からやや重い方まで幅広くいらっしゃり、わずか1・2回の受診で治るごく軽症の方から、数ヶ月間、通院されている中等症の方もいらっしゃいます。更には、他院から転院され、数年以上、通院されている方もいらっしゃいます。

通院・治療の長くかかる方々は、病気自体が軽くない場合はもとより、家庭や仕事に困難な問題を抱えている場合や、再発を繰り返されている場合、病前の性格が抑うつ的である場合、うつ病ではなく「躁うつ病」である場合などがあります。いずれにして銀座泰明クリニックでは、特に長く通院されている方々へ、今より少しでも良くなっていただけるよう、可能な限りの治療を尽してまいる次第です。特殊な治療(入院治療や電気治療など)が必要と考えられる際は、速やかに専門病院・大学病院へご紹介いたします。



しかし一般的に、うつ病が「軽快」するためには少なくとも1−3ヶ月間を要します。この「軽快」は「治癒」と異なり、お薬やカウンセリングなどによって表面的な症状が取り除かれている状態を言います。いわば「薬を飲んでいるから具合良くしていられる状態」とも言えます。従って、この時期に決して無理をするようなことはなく、安静・療養を継続していただけるよう宜しくお願い致します。



軽快が暫く続き、復学・復職をはじめ社会復帰をして、お薬を少しずつ減量していき、「治癒」として治療を終了するためには、少なくとも3ヶ月〜半年間を要します。この時期も服薬や通院を中断されるとやはり「再燃」することが少なくありません。特に、これまでうつ病を何度も繰り返していられる方や、家庭や仕事の問題を抱えていられる方は注意深く経過を観察していただく必要があります。いくつかの報告では、うつ病の50%以上が「再発」すると言われてます。このため、急いでお薬を止めることなく、家庭や仕事の状況をうかがいながら、注意深く減らしていくことが望まれます。

ところが、うつ病になられる方々というのは真面目で責任感の強い方が多いため、「一日も早く職場へ復帰しなければならない」「通院・服薬を終了しなければならない」「いつまでも薬に頼らず、早く自立しなければならない」と考えてしまうようです。この「ねばならない」という考え方がまた、うつ病の回復を妨げてしまいます。

したがって、早く治そうと焦らず、毎日ゆっくり穏やかにお過ごしいただけると幸いです。「いつまでに治さなければならない」と考えず、「気が付いたら良くなっていた、治っていた」くらいが良いのかもしれません。または日々の変化を記録しながら、「未だ具合が悪いけれども、前に比べればこの点は良くなった」と意識して肯定的な評価をしていただくのも良いでしょう。と言っても、記録することには執着しないよう、お気をつけ下さい。

とにかく、「まあいいか」というような、良い意味での「いい加減」「適当」な気持ち・過し方がうつ病の治療・療養には適切かと思います。最後に銀座泰明クリニックは長らく通院・服薬などされている皆様方へ心よりお見舞い申し上げます。そして可能な限りの治療をご提供いたしますので、今後ともどうぞ宜しくお願い致します。





2006.09.24 Sunday 23:20 | comments(1) | trackbacks(10) | 
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