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内観研修所と医療施設との円滑な連携のために

第18回 日本内観療法医学会

内観研修所と医療施設との円滑な連携のために

○茅野分1) 水野雅文2) 真栄城輝明3)

1)銀座泰明クリニック 
2)東邦大学医学部精神神経医学講座
3)佛教大学・大和内観研修所

現代の医療施設、特に小規模のクリニックにおいて集中的なサイコセラピーを行うことは困難である。しかし、慢性化した気分障害や不安障害、そしてパーソナリティ障害など対象となる患者は数多い。これらに対して、これまで精神分析療法や認知行動療法など西洋のアプローチがしばしば用いられてきた。本発表では、東洋の「内観療法」を内観研修所と連携して施行した症例を提示して、生じた様々な問題を考える。

内観療法は6泊7日の「集中内観」を基本とし、内観研修所に宿泊、朝5時から夜9時まで、トイレやフロの時間も「1分1秒、惜しんで内観する」(吉本伊信)。一般の医療施設では不可能な治療のため、内観研修所へ「紹介」し、内観後は医療施設へ「逆紹介」する。

主治医は診療において集中内観について詳細な説明を行った。特に、「外観(迷惑をかけられたこと)」から「内観(迷惑をかけたこと)」へ転じる「3日目の壁」を乗り越えられるように激励した。そして、主治医は「診療情報提供書」、患者自身も「自分史(生育歴)」を執筆し、内観へ持参するよう指導した。「自分史」は「外観」を呈していることが多いが、患者が自分の半生をどのように認知しているのか理解する上で有益である。そしてこれが最終日の座談会においてどのような「内観」へ変容し語られるのかが集中内観の醍醐味とも言えよう。

内観面接者から主治医へは、集中内観の経過や結果が「フィードバック」された。課題としては、集中内観を完遂できる症例の「見極め」、中断した際の「フォローアップ」、そして「日常内観」への「動機づけ」などが挙げられる。いずれの場合においても、集中内観は「入門」であり、大切なのは「日常内観」であると説明する。しかし心病む患者が一人で内観を続けるのは困難であり、主治医は内観的な診療を意識しなければならない。

銀座泰明クリニック

2015.10.24 Saturday 18:23 | - | trackbacks(0) | 

内観療法のワークショップに参加して

内観ワークショップに参加して/第111回日本精神神経学会学術総会より

茅野分/銀座泰明クリニック、筆者は、内観療法に関心を持つ精神科医であり、日本内観医学会の会員でもある。


平成27年6月4日から6日にわたって、大阪国際会議場およびリーガロイヤルホテル大阪において、第111回日本精神神経学会学術総会(世界精神医学会(WPA)との併催)が開催された際に、内観療法のワークショップが行われるというので参加した。6月5日(金)のことである。当日は8時半という早朝からの開始であったにもかかわらず、170名収容の会場に120名前後の参加者を集めて行われた。ワークショップの演題は、「内観療法の実際−症例編−」。演者は3名。当日の講演順に内容の一部を抜粋して紹介しよう。



トップバッターとしてマイクを握ったのは、「医療法人清潮会三和中央病院長」の「塚崎稔先生」であった。「症例からみる内観治療」と題して病院臨床のなかでの内観療法をご紹介いただいた。エビデンス・ベイストなご発表で、アルコールはじめ物質による精神・行動の障害が過去11年間で296/396人と圧倒的に多いことに驚かされた。症例1はうつ病リワークプログラムに通院中の非定型うつ病、30歳、男性。我欲が強く、自己中心的で他者からの承認を求め悩んでいた。集中内観を経ると「自分が周りの人からどれほど支えられ生きてきたか実感でき、自分でも驚くほど穏やかな気持ちになれました」と述べたという。症例2は医療観察法通院プログラムにある50歳、男性、妄想性障害、アルコール依存症。幼少期から実父の虐待を受け、共感性を欠いて育った。45歳時、被害妄想から近隣住人を刃物で切りつけた。入院後も心を閉ざし、周囲と交流を絶っていた。そこで月2回、10ヶ月間もの内観療法を実施。すると「病弱な母へ迷惑をかけました、被害者へも申し訳ありません」と丁寧に述べるようになったとのことだった。

次に「心身めざめ内観センター主宰」の「千石真理先生」が演台に立った。「ハワイの内観研修背景と実践」と題して、北米文化圏における内観療法が紹介された。アメリカの終末期ケアや緩和ケアにおいて仏教や禅にスピリチュアルケアとしての役割を期待しているとのことだった。日本人としては誇らしい気持ちにさせられるお話であった。症例は60代、白人男性、アルコール依存症、3回目の結婚、日本人女性と離婚の危機にある。いずれの離婚もアルコール依存症が原因だった。千石先生との内観カウンセリングにより、幼少期からの父親との確執が解消し、アルコール依存は寂しさを紛らわせるという気づきが得られ、離婚の危機も救われた症例であった。

最後の演者は、「佛教大学特任教授・大和内観研修所長」の「真栄城輝明先生」であった。「病院臨床と内観研修所を舞台に」と題して、Psychotherapyとしての内観が紹介された。症例1は統合失調症の母親を持つ青年、母親へ甘えた記憶はないと内観を拒否し、父親の内観からはじめた。それでも、運動会の記憶の中、母親が深夜にお弁当を作ってくれている姿を思い出し、泣き崩れた。そして「母は僕のことを愛してくれていた。僕は愛が見えなかっただけ」と語り、一度も見舞ったことのない母親の病院へ行った。症例2は被害妄想を抱く高齢の女性。主治医の承諾を得ず、突然やってきた。他者と同様に静かに内観する条件で開始。すると、長男が高校時代に成績低下した時に本人を責めてしまい、結果、自死を遂げたと号泣した。この告白を機に女性は憑き物が落ちたように穏やかになった。「内観療法により統合失調症が治る」ことはないけれど、「物の見方が変わり、心に平安が訪れ、感謝報恩の気持ちで暮らせるようになる」とのこと。まさに内観療法の真骨頂といえよう。

このところ内観療法は、この学会では3年連続でシンポジウムとワークショップを開催してきたという経緯が司会者(小澤寛樹先生・堀井茂男先生)からの紹介があり、毎年のように多くの参加者を集めてきたようである。質疑応答も活発に行われ、当日はセッション終了後にも演者を捕まえて質問している方もいた。21世紀は脳科学の時代といわれる時代に、なぜ内観療法なのか、それはやはり精神医学は「人間関係」を無視しては成り立たないからだろう。薬物療法が主体の精神科医療にあって、少なくない精神科医たちはそれを補う方法を探し求めているようである。ちなみに、今回の大会テーマは「翔たくわれわれの精神医学と医療−世界に向けてできること−」であった。たとえ精神疾患の原因が脳の部位に見つかったとしても、精神医学が「翔たく」ためには「体」はもとより、「心」や「社会」だけでなく、「魂」も含めた人間存在の全体を見渡す必要がある。そうなると、精神科医療者にとっては、内観療法への期待はますます高まっていくであろう。少なくとも、今回のワークショップに参加して筆者はそう感じた。

銀座泰明クリニック

 
2015.09.10 Thursday 17:06 | - | trackbacks(0) | 

内観療法

それでは怒りや憎しみを減じ、愛や喜びへ変えるにはどうすればよいのでしょう。一つの方法として、日本の伝統的な自己変革的な治療法である「内観療法」を挙げることができます。
 

吉本伊信らが1940年代に開発した自己観察法です。「悟り」(宿善開発、転迷開悟、一念に遭う、など)を開くことを目的とし、「いかなる境遇にあっても感謝報恩の気持ちで幸せに日暮らしできる」ために行います。
 

内観者は6泊7日の「集中内観」を基本とし、内観研修所に宿泊し、「内観三項目」「ご迷惑かけたこと」「お世話いただいたこと」「して返したこと」を母からはじめ、父、兄弟姉妹など、これまでの人生に関わった方々を順々に調べ尽くします。朝5時から夜9時まで、トイレやフロの時間も「1分1秒、惜しんで内観する」。その間、面接者が1−2時間おき、1日に8−10回、約5分の面接を繰り返します。


これにより、人生の不安・苦悩・動揺などから逃げず、目をそらさず、むしろ不安・苦悩・動揺に沈潜し、「生の実相」を覚知します。そして、自分の外部にある富や名誉・社会的地位、そして死などに対し、いわば「無関心」の態度を堅持することで、「自由」「心の平静」を得ることができるのです。


内観療法の治療機序は、内観三項目を想起し、主観的および客観的に自己観察(セルフ・モニタリング)を行うことにより、「自己発見」へ至ります。その際、母性的な「恩愛感」の庇護のもとに父性的な「自責感」を深めることで、「我執から解放」されることを特徴とする、東洋・日本ならではの心理療法です。



銀座泰明クリニック
 

2015.04.30 Thursday 22:29 | - | trackbacks(0) | 
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