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恋愛と結婚 進化心理学に学ぶ

「婚活」がブームになっています。従来の見合や恋愛結婚が減り、民間企業や地方自治体までもが介入し、結婚の世話してくれます。これは社会変化に伴い、地縁・血縁、更に職場の人間関係が希薄になったためです。高度経済成長期までは親・親戚が見合の手配をしてくれましたし、バブル景気までは職場結婚を前提とした雇用が行われました。ところが、バブル破たん後、企業は新規雇用を制限し、中途や派遣でつなぐようになりました。労働者も会社に忠誠を誓うことはなく、条件が合わなくなれば次々と転職するようになりました。いわゆる終身雇用制度の崩壊です。こうして人間関係は希薄化し、職場結婚も減ったのです。



そして、日本では結婚・出生率の低下が年々進行しています。総務省によりますと、現在20歳前後の女性6人に1人が生涯結婚せず(現在は20人に1人)、3割以上が子どもを持たないこと(現在は1割)が想定されています(2002年中位推計)。少子高齢化は年金や医療費など社会保障費の財源をはじめ国家の存亡につながる問題です。日本が現在の国力を維持するためには西欧諸国のようにアジアの国々から移民を積極的に受け入れなければならないかもしれません。

一方、結婚や配偶者はメンタルヘルスにも影響を及ぼします。統合失調症などの精神疾患のQOLを調査した研究では、婚姻や同居者の有無に有意差を認めますし、既婚者は非婚者より長命であるという疫学調査もあります。結婚することにより、情緒的サポートが得られる、健康的な生活習慣となる、経済的に安定するなどが理由として挙げられます。逆に配偶者との死別は人生最大のストレスとも言われており、離婚・離別も大きな精神的苦痛となることはご存知のとおりでしょう。



このように、結婚は健康や寿命をも左右する人生の大イベントでありますが、なかなか本人や周囲の思うように進まないのも実状です。銀座泰明クリニックにおいて患者様の悩みとして職場のストレスに次いで多いのが、恋愛や結婚のトラブルです。好きな人はいるけれど想いが通じない、交際しているけれど結婚に至らない、妊娠・中絶した、結婚したけれど性格が合わない、なかなか子供ができない、不妊治療も上手くいかない、他に好きな人ができた、相手の浮気が発覚した、暴力(DV)を受けている、離婚調停も進まない、別れた後も嫌がらせを受けている・・・・・・。

そこで今回は、恋愛と結婚をテーマとし、進化心理学に学ぶことにしましょう。ダーウィンの進化学によると、生物の究極的な目的は自己の遺伝子を残すこととされています。いわゆる種の保存です。最近ではドーキンスが「利己的遺伝子」という概念を発表したことも記憶に新しいことでしょう。自己のDNAを複製・保存していくことは種なり、生物なりの命題とも言えます。ヒトにおいては、有性生殖の手段として「恋愛・結婚」という行動が生じました。10代、思春期になると生殖の準備がはじまります。第二次性徴として身体の成長とともに、異性を求め合う心も芽生えます。



ただし男女間における恋愛心理は異なるようです。進化心理学によりますと、ヒトは数万年前の狩猟採集の時代より遺伝子がほとんど変わっていません。限られた食糧を元に、生き延びるための行動パターンができあがったと考えられています。そこで種の保存を主な目的とし、男女がお互いに求める要素は以下のように認められています (Buss D. Behabioural and Brain Science. 1989)。

男性→女性:年齢・容姿
女性→男性:地位・財産

身も蓋もない話ですが、いずれも子孫を繁殖するために有利となる事柄に相当します。女性の妊娠率は20代前半:93%、30代前半:85%、40代前半:71% と加齢変化します(Menken et al. Science. 1986)。男性が女性の容姿で本能的に注目するのは「腰のくびれ」だそうです。ウエスト:ヒップ=7:10に最も惹かれ、この比率はエストロゲンの活性を示し、内分泌・循環器疾患なども少ないのだそうです。

一方、女性が男性に地位・財産を求めるのは、生活・養育費の保証を意味します。妊娠・育児期は、労働が困難となりますから男性の扶養に頼らざるをえません。この際、重要になるのは過去の記憶です。男性がどれだけ献身的に関わってくれたかが、配偶者選択を左右します。現代で言えば、女性を素敵なレストランへ連れて行ったか、記念日にプレゼントをしたか、などが妊娠・出産後の生活において男性がどれくらい援助してくれるかの目安になるのでしょう。



このように男女は種の保存、遺伝子の増殖を目的として恋愛行動をとります。しかし残念ながら恋愛心理は長く続きません。「3年目の浮気」とう歌詞があるように、燃え上がるような恋心もいつしか下火になり、他に目が向くようになってしまいます。最近の科学的知見によりますと、恋愛の賞味期限は12−18ヶ月、離婚は4年目に最多となるそうです。これは初期の恋愛が脳のドパミン活性により起きるものの、時間経過とともに自然減衰するためです。そして脳内はセロトニン優位となり、冷静な思考が戻ります。「この相手で本当に良かったのか?」という反駁した思考が生じるのです。更に離婚が4年目に最多となるのは、子供の養育に手がかからなくなるのが3−4歳だからという説もあります。生物進化学によれば、遺伝子は多様性を求めますから、同じ相手と複製を繰り返すよりも多くの相手と多様な遺伝子型を作るように働くわけです。



それではカップルは3−4年経つと必ず破綻するのでしょうか?そのようなことは実際にありません。人間は社会変化に伴い新たな夫婦形態を作りました。近代社会においては一夫一婦制が最も社会の安定・発展に寄与するという視点から、先進国ではどの国でも婚姻制度があります。浮気や不倫を姦通罪により取り締まる国もあります。そして「おしどり夫婦」という表現もあるように、心理学的にもお互いに相手を思いやる「積極的傾聴」や「受容・共感」といったスキルが夫婦間において推奨されています。更に、最近の脳科学によるとこのような「愛着」や「信頼」の心理はバソプレッシンやオキシトシンと言われるホルモンにより促進されることなどが分かってきています。

以上、恋愛と結婚について、進化心理学に学び、解説いたしました。未婚の方は良い出会いを求め、既婚の方は安定した夫婦生活を継続されるよう応援しております。万が一、トラブルを生じた際には銀座泰明クリニックがご援助いたしまします。今後とも宜しくお願い致します。
2009.06.25 Thursday 10:50 | comments(0) | trackbacks(2) | 

心の病の起源 進化心理学に学ぶ

前々回は天才と心の病についてお話しました。人並み外れた才能は、幻覚・妄想や躁鬱を伴うことが少なくなく、これまで天才と呼ばれる人々は人知れず悩んできました。しかし非凡な才能は気分や思考の逸脱からもたらされると言っても過言ではなく、天才がしばしば心を病むのはやむをえないのかもしれません。統合失調症や躁鬱病という心の病が人類の歴史の中で「自然淘汰」をされることなく存在しているのは、天才の遺伝子をはらんでいるためという説もあります。

統合失調症の遺伝子を持つ人は風変わりで常識とは異なる思考や行動を起こすことがあります。いわゆる変人とも呼ばれる人で、周囲の人々はどうしてそのような考えや振る舞いをするのか理解に苦しみます。しかしこのような人々の発想は時に世紀の大発明を生じたり、混乱した世の中に一石を投じたりすることもあります。芸術家や博士と呼ばれる人が独特の風貌や言動をしたり、政治家でも「変人」と呼ばれた人が世の中を大きく動かしたりすることを思い出すと納得できるでしょう。特に後者に関して、大きくなり過ぎた集団が分裂する際、カリスマ的リーダーを生じるために必要とするという学説もあります。

躁鬱病の遺伝子を持つ人は社交的・精力的で、人一倍、元気に働きます。安定した集団のリーダーによく見られる性格です。イギリスやオーストラリアの元首相が気分障害を患っていたことは一般にもよく知られています。このような人は病的水準か否かは別として、凹んだり、悩んだりすることがよくあります。躁の時は迷いなく一直線に突き進みますが、鬱の時はこれまでの行程を振り返り、軌道修正するわけです。会社の経営や個人の人生において必要な過程と言えるでしょう。

躁状態は春夏起き、鬱状態は秋冬起きることは既にご存知でしょう。これは人類の長い歴史において、秋冬の寒冷期を生き抜くために、春夏の温暖期に一生懸命、働き、食糧を貯蔵することに役立った行動と言えます。イソップ童話の「アリとキリギリス」のお話を思い出すと分りやすいでしょう。しかし文明が発達し、冬場でも食糧を調達でき、暖房も完備される世の中になると、このような季節性の変動は不要となります。特に現代都市のようなコンピューター社会にて求められるのは、コンスタントなパフォーマンスであり、年内なり日内なりの変動はむしろデメリットとなってしまいます。

このように進化学の見地から人間の心理を解釈する学問を「進化心理学」といいます。この学問によると、病は必ずしも悪とは言えず、存在するにはそれなりの理由があるようです。従ってその理由を理解することにより、上手く共存していくことが望まれます。しばらく進化心理学に学び、人間の行動の本質を考えてまいりましょう。

2009.05.01 Friday 09:54 | comments(0) | trackbacks(0) | 
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