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「心の病、はじめが肝心 早期発見、早期治療の最新ガイド」水野雅文著



筆者(茅野分)の恩師、水野雅文先生による新書が出版されました。「心の病」に関する一次予防(発病予防)・二次予防(早期発見・早期治療)・三次予防(リハビリテーション)について、最新の知見が余すところなく、分かりやすく書かれています。一読して、水野先生の講義を聴いているような、座談会にてお話を聴いているような錯覚を覚えました。

なかでも、第3章「心の病を重くしないコツ、病気は治り方が大事」の一節は読みごたえあります。「乗り越えた実感が大事、価値観を大きく変えなければ、がんばりきれません」「罹患することを、かえって奇貨と考え、新しい自分を獲得していくことが大事です。人生の価値、楽しみを積極的に見つけましょう。とくに、自己実現の方法を会社以外に見つけることは、どんなに人にも大切です。精神疾患からの回復記念に『生き方は一つではない』と考え直してみるのもいいことだと思います」は水野先生ならではの「リカバリー」の定義ではないかと思うほどに説得力があります。心の病になることは、病自体の苦しみもさることながら、「心の病」であることの「スティグマ(偏見)」に、周囲の視線、そして自尊心が傷つき、苦しみます。このため、本当の「リカバリー」とは水野先生のおっしゃるように、病を「乗り越え」、むしろより良い生き方や人生観を身につけることだと言えるでしょう。

さらに、第5章「『心に効く』生活習慣とは?」における「ポジティブシンキング」「『楽しいときを』を心に刻んでおく」「小さな趣味の大きな価値」「運動は『万薬の長』」「心の栄養−『地中海ダイエット』」「家族関係をつくり直す」は水野先生の人生観が具体的に語られているようで貴重です。「毎日、笑顔で」「ポジティブに」働くための生活習慣がいくつも紹介されています。心の病に罹(かか)られた方はもとより、健康な方も、より健康になるため、ぜひ一度ご一読くださいませ。


銀座泰明クリニック
2015.07.05 Sunday 09:30 | - | trackbacks(0) | 

都市部における初発うつ病の未治療期間と受診を遅らせる因子の検討

都市部における初発うつ病の
未治療期間と受診を遅らせる因子の検討

長谷川千絵、茅野分、城川美佳、井原一成、長谷川友紀、水野雅文
東邦大学医学部精神神経医学講座

うつ病の未治療期間 (Duration on Untreated Illness: DUI) と受診を遅らせる因子について検討した。

対象は都内の大学病院または精神科診療所において精神科を生涯初めて受診した初発うつ病患者121人である。参加者は中等度うつ病の30代男性勤労者が主で、DUI の中央値2.0ヶ月であった。
(対象の特徴や DUI の定義により異なる可能性ある)

DUIの長短と、年齢、性別、重症度、同居者、受診を勧めた人、ライフイベントとの関連を検討したところ、DUIの長短と年齢、およびライフイベントの「離婚または別居した」「出向した」「部下が増えた」の3項目との間に統計学的に有意な相関が認められた。
(Holmes の社会再適応評価尺度によると「離婚・別居」は大きなストレスである)

これら3項目と年齢、性別についてロジスティック回帰分析を行った結果、部下が増えた」のみDUIの長短と有意な関連が認められた。
(部下が増えるとそれまで自分がしていた仕事を部下に任せることができるが、一方で部下を教育したりサポートしたりする必要が生じ、かえって忙しくなるのかもしれない)

中等度うつ病の30代男性勤労者におけるうつ病の早期介入には職場でのライフイベントを考慮した対策の必要性が示唆された。
(バブル経済の崩壊後は採用人員の減少、合理化による従業員数の削減が続き、30代勤労者の付加が増している)

以上抄録より(本文より説明を補足した)

日本社会精神医学会雑誌 18 : 321-329, 2010

2010.04.01 Thursday 09:40 | comments(0) | trackbacks(0) | 

インターネットを利用した精神障害の早期発見・早期治療

インターネットを利用した精神障害の早期発見・早期治療
DUI (Duration of Untreated Illness, 疾病の未治療期間)を短縮するために


茅野分*,**,***、水野雅文**、長谷川千絵**
藤井千代***、根本隆洋***、山澤涼子***、小林啓之***
村上雅昭****、鹿島晴雄***

銀座泰明クリニック(精神神経科)*
東邦大学医学部精神神経医学講座**
慶應義塾大学医学部精神神経科学教室***
明治学院大学社会学部社会福祉学科****

精神科治療学、第23巻05号

抄録:初回うつ病のDUI (Duration of Untreated Illness, 疾病の未治療期間)を大学病院とクリニックで調査したところ、約3ヶ月間であった。クリニックの受診経路にインターネットが多かったため、次にメールによる精神保健相談を1年間で451名へ行った。内訳は30歳前後の女性が中心を占め、首都圏・大都市をはじめ、地方や海外からも多数の相談を認めた。内容は未治療の受診の適否や、治療中のセカンドオピニオンが大半だった。主治医との治療関係や現在の治療内容など、主治医に相談できない悩みも少なくなかった。一方、自傷・自殺への対応、診断の不確実性、コミュニケーションの不全、資源の確保など注意しなければならない点もある。これらの問題を解決・対処しながら、インターネットを利用して精神障害の早期発見・早期治療を促進していくことが望まれる。

Keywords: internet, mental disorders, depression, early intervention、DUI (Duration of Untreated Illness)

はじめに
精神障害の早期発見・早期治療が提唱されている10)13)14)。世界では”IEPA, International Early Psychosis Association”が定期開催され、”Early Intervention in Psychiatry”も定期刊行されている。国内では「日本精神障害予防研究会」が10年以上に渡り学術集会を行っている。これは”DUP, Duration of Untreated Psychosis(精神病の未治療期間)”と治療予後の相関が認められるようになったことが大きい。我々の調査においても、統合失調症のDUPや病前機能・認知機能が抗精神病薬量や入院期間を左右することが明らかとなった22)。従って今後は「前駆期 (Prodromal phase)」「発症危険状態 (ARMS, At Risk Mental State)」において顕在発症を防止させることが必要である。それには精神医療関係者へはもとより、医療保健福祉関係者全般へ最新のエビデンスを提供し、地域や社会へも働きかけていかねばならない。

統合失調症と並び、うつ病の早期発見・早期治療も重要な課題である。わが国では平成10年以降、毎年3万人を超える自殺者を生じており、その約75%は精神障害によるとされ、更にその約50%はうつ病であると考えられている1)。しかし、うつ病の患者で医療機関を受診している割合はそのうち25%に過ぎず8)、精神疾患に関する知識や情報がまだまだ十分には行き渡っていないことは明らかである。これを受けて、平成18年6月に「自殺対策基本法」が成立し、平成19年6月に「自殺総合対策大網」が策定した。

このようにうつ病の早期発見・早期治療は早急な取り組みを求められているものの、未治療期間については国内外において十分な研究がなされていない。そこで我々はこれをうつ病の前駆期研究6)を参考に、DUI (Duration of Untreated Illness, 疾病の未治療期間)と定義し、平成14年より調査を開始した。



大学病院における初回うつ病
まず我々は、平成14年2月−7月の半年間に「慶應義塾大学病院精神神経科」 を受診した初回うつ病の患者35人を調査した2)。その結果、DUI:14.5±15.3 (Min: 2, Max: 48, Med: 8, Mode: 8) 週だった。患者背景は、男性21人・女性14人、年齢42.4±14.1歳、職業は会社員19人、主婦3人。受診経路は紹介21人(院内9人)だった。すなわち、中年の会社員が発病後3ヶ月後に紹介されて初診したと言える。なお、初診後の半年以内に寛解した患者23人(65.7%)において寛解に要した期間(10.5週)・処方量(86.1mg, imipramine換算)とDUIの間に相関は認められなかった。



「琉球大学医学部付属病院」における2000年4月から2001年3月の1年間に総合診療科を初診した気分障害の患者10名と精神科を初診した気分障害の患者17名の未治療期間を比較したところ、 25.6±14.1 vs 6.8±4.3 週であったという9)。総合診療科のDUIが長い理由は、身体症状の方が精神症状よりも時期を特定しやすいこと、適切な診断・治療を受けることなく医療機関を転々としてきた可能性があることと考察された。慶應義塾大学病院のDUIは、琉球大学医学部付属病院の総合診療科と精神科の中間の値であり、この両者の傾向を有していると考えられる。そして両大学病院とも今後、早期治療を促進するためには、紹介元との連携を強化することが必要と考察された。

クリニックにおける初回の気分障害
次に我々は、平成18年4月−9月の半年間に「銀座泰明クリニック」における初回の気分障害の患者172人を調査した4)。その結果、DUI: 64.1±122.9 (Min: 1, Max: 768, Med: 12, Mode: 4) 週だった。患者背景は男性75人・女性97人、年齢32.4±8.1歳、職業は会社員128人であった。主訴は不眠28人、うつ24人、頭痛21人だった。受診経路はインターネット150名、看板14名。検索に用いた言葉は「心療内科」67人、「うつ病」28人、「精神科」13人、「メンタルクリニック」3人であった。

銀座泰明クリニックは平成18年4月に開院したばかりで十分に周知されておらず、紹介患者は少なかった。また都心部に位置して、看板も目立たない。しかし、インターネットで自ら検索してくる患者が極めて多かった。大学病院と比べて患者の平均年齢が10歳ほど若いのも特徴的であった。これらはインターネットの利用世代が若年層に偏っているためと考えられる。

DUIが 64.1週と1年を越している理由は「持続性気分障害 (F34)」を含めたことによる。従来、抑うつ神経症とされていた疾患である。もっとも中央値12週、最頻値4週であり、中核である「うつ病エピソード (F32)」に関しては大学病院の8週と近似している。
主訴の第2位が「うつ」であることは、うつ病の啓発活動の効果と思われるが、インターネット検索において「心療内科」が「精神科」よりはるかに多いことは、「精神科」に対するスティグマを意味しているのかもしれない15)。

初回うつ病のDUIは、引き続き銀座泰明クリニックと「東邦大学医学部精神医学講座」の関連施設で平成19年4月〜12月に86人に調査された7)。この結果、DUIは 30.4±60週だった。患者背景は男性55人、女性31人、平均年齢34.5±9.5歳であった。同居者のいない者はいる者よりDUIの短い傾向が認められた。この調査は継続して行われている。

インターネットを利用した精神保健相談
インターネットを利用した精神保健活動が効果的であるという示唆のもと、我々は「All About プロファイル」の公開相談サイトを用いて精神保健相談を試みた3)。その結果、2006年12月〜2007年12月の約1年間に451人から相談が寄せられた。質問は匿名投稿も可能で、個人情報の公開は本人の意思に基づいている。質問者は男性79人、女性360人、平均年齢31.3±7.2 (Min: 14, Max: 54) 歳であった。



内訳は本人女性225人、本人男性56人、妻38人、恋人女性38人。住所は東京都87人、神奈川県47人、埼玉県31人、大阪府30人、愛知県20人と首都圏・大都市が多かったが、北海道12人、沖縄県4人、海外7人も認められた。疾患は統合失調症圏(F2)22人、気分障害圏(F3)142人、神経症性障害圏(F4)196人だった。未治療154人が受診の適否について、治療中105人がセカンドオピニオンとして現在の治療について質問してきた。内訳は、統合失調症圏が未治療5人、治療中17人、気分障害圏は未治療43人、治療中100人、神経症性障害圏は未治療139人、治療中56人であった。









すなわち30歳前後の女性が相談者の中心を占めていた。首都圏・大都市をはじめ、地方や海外からの相談も複数、認められた。疾患の中心は気分障害圏・神経障害圏であった。質問内容は未治療の受診の適否や、治療中のセカンドオピニオンが大半だった。主治医との治療関係や現在の治療内容など、主治医に相談できない悩みも少なくなかった。

逆に男性からの相談がとても少なかった。All About利用者の男女比は概ね等しいため、質問することをためらっているのかもしれない。これは「援助探索行動 help seeking behavior」を取っていないとも言える。毎年3万人を超える自殺者の多くを高齢男性が占めている事実を考慮すると、今回の結果にもその一端が表れているのではないかと考えられる。更に、All About利用者の平均年齢は約40歳であるため、高齢者の利用も少ない。このようにインターネットを用いることのできる人とできない人との間に格差を生じる「デジタル・ディバイド」が生じることを認識して、世代を超えた「インターネット・リテラシー」(インターネットを使いこなす能力)が実現されることが望まれる。

また統合失調症圏の相談が少なかった。有病率自体も少ないからであろうが、注目すべきは未治療の質問の割合が神経症圏に比較して明らかに少ないことである。この割合は気分障害圏も同様である。実際に「このような症状は病気なのでしょうか?」「何科を受診すればよいのでしょうか?」という質問を多く認めた。これは精神疾患に関する情報が不足している事情と、各精神疾患の持つ性質に拠ると思われる。神経症圏の患者が「わかってほしい」と思う半面、気分障害圏の患者は「わかりっこない」と思い込み、統合失調症圏に至っては「わかられている」という被害妄想的な心理を抱いていることが想像される5)。これらの課題に対して我々は1998年より統合失調症の当事者・家族を対象として「みなとネット21」 および「東京ユースクラブ」を通じて、精神障害に関する情報提供しながら早期発見・早期治療を呼びかけてきた20)。

インターネットによる精神保健相談は他にも国内各地で試みられている12)17)。筑波大学大学院人間総合科学研究科精神病態医学では2003年から“3rd life” を開設し、アンケート・心理相談・心理検査を行っている21)。その結果、33590人の対象者の8割にうつと不安の訴えが認められ、治療必要な者のうち半数が未受診であったという。この理由として「精神科への抵抗感」や「精神科病院に関する情報不足」が挙げられた。

インターネットを利用した精神障害の早期発見・早期治療
このようにインターネットを利用して未治療の患者へ必要な情報を提供し、適切な治療へ導くことができる。軽症ならばメール相談のみで解決できるケースもあり、中等症以上ならば速やかな受診を指示することができる。

すでに治療中の患者へはセカンドオピニオンとして、現在の治療の是非について第三者的なアドバイスができる。原則として現在の治療・主治医を尊重し、本人の疑問や不安を解消することに努める。しかし時には明らかに不適切な治療を受けているケースも認められ、その場合は転医を勧める。

今回はメール相談のみであったが、今後は動画やビデオ通話などのツールを利用することにより更に面接へ近似した情報交換が期待できる。SNS, Social Network Servicesを利用することにより自助グループや集団精神療法に準じた活動をインターネット上で展開することも可能であろう。

「螢薀ぅ侫丱薀鵐好泪優献瓮鵐函はEAP, Employee Assistance Programの立場から社員がインターネットによりメンタルヘルスの自己管理をできるよう各種教材を取り揃えている。特に「メンタフダイアリー」はインターネット上で認知行動療法を行える画期的なプログラムである。


(スライドが見づらい時はオールアバウトをご覧下さい)

インターネットは精神障害の早期発見・早期治療において大変有用な手段であるが、注意しなければならない問題もある。まず自傷行為や自殺念慮が増悪している時に危機介入できる保証がない。相手は匿名で不定期に相談してくるだけである。家族や友人に連絡することもできない。このような場合、とにかく本人へ自傷や自殺を思い止まり、適切な治療や援助を受けるように勧める。治療へ確実につながるまで、いつでも相談を受け入れる姿勢を示しておくことが少しでも自傷や自殺を減らすことになりうる。

メールのみでは判断しきれない病態もある11)19)。重症の精神病や器質性の疾患は実際に面談したり、身体を診察したりしなければ確実な診断ができない。DUPを短縮するためには、速やかな診断・治療を開始しなければならない。従って、常にメール診療の限界を意識しながら対応することが望まれる。メールは便利な道具ではあるが、やはり実際に「会って話す」ことがコミュニケーションの基本であることを忘れてはならない。時にはメール上の些細な誤解が強い不信を生じることもあるし、一方的な空想や妄想に発展することもある。これらが攻撃性や集団性を帯びると、「フレーミング flaming」と呼ばれるインターネット上での誹謗・中傷合戦に発展する16)。

更にコストも避けて通れない問題である18)。有用な手段でも労力・時間・費用がかかるため、サービスを継続していくためには資源を確保していく必要がある。現在のところ、健康保険は適用できない。自費診療では高額になり継続できなくなる可能性もある。広く普及させるためには、本人負担を軽減させるシステムを考案していく必要がある。

おわりに
以上、初回うつ病のDUIを大学病院やクリニックで調査し(約3ヶ月)、インターネットを利用して精神保健相談(451件)を試行した。首都圏・大都市をはじめ、地方や海外からも多数の相談を認めた。内容は未治療の受診の適否や治療中のセカンドオピニオンが大半であった。主治医との治療関係や現在の治療内容など、主治医に相談できない悩みも少なくなかった。

「早稲田大学大学院国際情報通信研究科加納研究室」 では、インターネットを用いて「どこでも」医療を利用できる「ユビキタス医療」(ユビキタスとはラテン語で「至る所に」という意味)を研究している。ユビキタス医療により在宅医療の推進や医療の地域格差を解消しうると言われている。精神医療においても、これまで医師や病院に偏在しがちであった知識や情報を、インターネットを利用して患者や家族と共有しながら、精神障害の早期発見・早期治療を促進していくことが望まれる。

文献
1)飛鳥井望:自殺危険因子としての精神障害 生命的危険の高い企図手段を用いた自殺失敗者の診断学的検討.精神神経学雑誌96;415-443,1994.
2)茅野分,水野雅文,渡邊衡一郎ほか:初回うつ病エピソードの未治療期間 (DUI; Duration of Untreated Illness) と治療予後:日本社会精神医学会雑誌,12;126-126,2003.
3)茅野分,根本隆洋、藤井千代ほか:インターネットによる精神保健相談の試み.日本社会精神医学会雑誌,in press.
4)茅野分,根本隆洋,山澤涼子ほか:精神医療におけるITの活用と地域連携 初回気分障害エピソード患者の受診におけるその役割.日本社会精神医学会雑誌,16;82-82,2007.
5)土居健郎:新訂 方法としての面接.医学書院,東京,1992.
6)Fava, G.A., Tossani, E.: Prodromal stage of major depression. Early Intervention in Psychiatry, 1; 9-18, 2007.
7)長谷川千絵,茅野分,小堀俊一ほか:初発うつ病エピソードの未治療期間と受診を遅らせる因子の検討.日本社会精神医学会雑誌,in press.
8)川上憲人(主任研究者):こころの健康問題と対策基盤の実態に関する研究.厚生労働科学特別研究事業,平成14年度総括・分担報告書,2003.
9)福田吉顕,山本和儀,平松謙一ほか:うつ病の早期発見・早期治療 琉球大学病院における総合診療科と精神科との連携をとおして.精神障害の予防をめぐる最近の進歩;224-225,2002.
10)鹿島晴雄監修,水野雅文,村上雅昭ほか監訳:精神疾患の早期発見・早期治療.金剛出版,東京,金剛出版,東京,2001.
11)小林聡幸:サイバー空間と精神医学.新世紀の精神科治療7 語りと聴取.中山書店,東京,267-283,2003.
12)小阪淳,飯田順三,崎山忍ほか:e-mail相談の試み 奈良医大精神科ホームページ25ヶ月.日本社会精神医学会雑誌,11;126-126,2002.
13)水野雅文:1.5次予防のメンタルヘルスケア.精神医学,49;4-5,2007.
14)水野雅文,村上雅昭監訳:精神疾患早期介入の実際 早期精神病治療サービスガイド―.金剛出版, 東京,2003.
15)中根允文,吉岡久美子,中根秀之:精神疾患に対する日本人のイメージ Mental health literacyに関する日豪比較調査から.日本社会精神医学会雑誌,15;25-38,2006.
16)パトリシア・ウォレス:インターネットの心理学.NTT出版,東京,2001.
17)関口隆一,菊池礼子,照屋智子ほか:電子メールによるこころの電話相談.日本社会精神医学会雑誌,in press.
18)Styra, R.: The internet’s impact on the practice of psychiatry. Can J Psychiatry, 49; 5-11.2004.
19)田村毅:インターネット・セラピーの招待 心理療法の新しい世界.新曜社,東京,2003.
20)宇野舞佑子,水野雅文,稲井友理子ほか:東京ユースクラブの目的と設立の背景.日本社会精神医学会雑誌,15;89-90,2006.
21)矢作千春,太刀川弘和,谷向知ほか:インターネットを用いた精神障害の動向調査.精神医学49;301-309,2007.
22)Yamazawa, R., Nemoto, T., Kobayashi, H. et al.: Association between duration of untreated psychosis, premorbid functioning, and cognitive performance and the outcome of first-episode schizophrenia in Japanese patients: prospective study. Aust N Z J Psychiatry, 42; 159-165, 2008.
2008.05.27 Tuesday 07:42 | comments(0) | trackbacks(2) | 

受診しない代りに〜カフェイン依存症・過食症

前回まではお酒や煙草などの嗜好品を大量に摂取すると肝硬変や肺癌などの身体疾患をもたらす危険性と、更に睡眠薬や精神安定剤の代わりに用いられた時には依存症となる可能性についてお話しました。今回はコーヒーや甘いものといったより身近な飲食物についてご説明いたします。



コーヒーはお酒よりも日常的に摂取されている飲み物です。未成年の方でも飲めますし、朝昼でも職場や学校でも飲めます。しかしお水とは異なり、立派な薬理作用を有しています。すなわちカフェインで、カップ一杯約50〜100mgを含んでいます。カフェインは「覚醒・興奮作用」を持ち、眠気や疲れを飛ばしてくれます。最近では朝から飲んでもらおうと朝用の缶コーヒーがよく売られていますが、その場合は通常の1.5倍量を含んでいるようです。

またいわゆる滋養強壮のドリンク剤やコーラにも50mg程度のカフェインが含まれています。ドリンク剤などを飲んで直ぐ元気になるように感じるのは、ビタミンやアミノ酸などの作用ではなく、実はカフェインの作用だったのです。更には風邪薬にもカフェイン50mgが含まれていて、風邪に伴う倦怠感や疲労感を和らげてくれるのです。

しかし飲み過ぎると副作用を生じます。頻尿・胃炎・高血圧・高脂血症をはじめ、不眠・不安を増悪させることもあります。そして精神的に落ち込む傾向の方は多量に飲むことがあります。私が先日、診察したうつ病の患者さんは1日にコーヒー10杯を飲んでいました。しかし具合は一時的にしか良くならず、ようやく当院を受診された次第です。海外のある調査ではコーヒー2・3杯位を飲む人の自殺率が最も低く、量が増えるとそれに応じて率も高まるそうです。従って、疲れたり、落ち込んだりしてカフェインの摂取が増えている方は是非お早めにご相談して下さい。

甘いものはコーヒーよりも更に日常的でしょう。子供や女性でも好きでよく食べますね。3時のおやつ、食後のデザートとして食事に準じて用意されます。このような日常食品ですが、やはりストレスが溜まっている時は過ぎてしまうことが少なくありません。特にチョコレートなどは糖分・脂肪分に加え先のカフェインも含んでおり、若い女性が気分のすぐれない時に食べ過ぎてしまうことがあるようです。そして太ってしまい、ダイエットを始め、再びストレスを溜めるという悪循環を生じてしまいます。



甘いものは糖分や炭水化物を多量に含んでおり、摂取後、速やかに血糖値の上昇をもたらします。これが一時的に脳・神経を刺激して快感をもたらし、気分を良くしてくれるわけです。しかし長続きせず、ストレスが続いたり、食べ物へのこだわりが生じたりすると食べることを止められなくなってしまいます。いわゆる過食症のはじまりです。過食症は拒食症と交互に起こることが多く、過食と拒食、時には嘔吐や緩下剤・利尿剤を乱用してしまうこともあります。またこのような摂食障害が生じる背景には幼少期からの親子関係自尊心や自己同一性の問題もあると言われております。従って食事の問題だけに留まらず、心療内科や精神科において心理療法や精神療法によりこれまでの自分や家族を振り返る必要も生ずるのです。銀座泰明クリニックではコーヒーや甘いものといった身近な飲食物の問題から、仕事や生活のストレス、人生観・価値観といった内容までご相談に応じてまいたいと思います。
2006.04.27 Thursday 20:20 | - | - | 

受診しない代わりに〜アルコール依存症

前回は、患者さん方が受診や服薬をしない代わりに、お酒や煙草をはじめとした嗜好品を用いていることをお話しました。いずれも社会文化として根付いているものであり、一概に否定できませんが、気持ちが不安定な時に安定剤や睡眠薬の代りとして用いるのは止めるべきでしょう。特にお酒は睡眠導入剤の代りに用いられることが多いようですが、実際は睡眠が浅くなり、むしろ質を落としてしまいます。また不安や抑うつを一時的に和らげるため、安定剤の代りに用いられることもあるようですが、向精神薬に比べると効果は不十分で、結局、量が増えアルコール依存症となってしまうのです。これは気分の波が大きく、外交的な性格の躁うつ病の患者さんに多いようです。



しかしお酒は「社会の潤滑油」や「百薬の長」とも言われて、古今東西、多くの人々に愛されてきました。職場の宴会は「乾杯」で始まり、家庭の食卓では「晩酌」が用意されます。それ程までに日常化している飲み物ですが、多くの弊害も生じています。飲酒運転に伴う交通事故を始め、多くの犯罪行為や迷惑行為に関与しています。健康問題においては、アルコール性肝障害から神経障害に至るまで、健康の障害と生命の危険をもたらします。適量ならば社交にも健康にも良いのですが、多量になると明らかな損害をもたらすわけです。

アルコールは麻薬やより危険
イギリスで薬物の有害性をランキング

広義の「薬物」には、違法薬物だけではなく、承認医薬品やアルコールやタバコも含まれる。様々な薬物が使用者や周囲の人に与える影響を調べたところ、全般的な有害性はヘロインやコカインなどの麻薬よりもアルコールの方が高いとする結果が示された。Lancet 376; 1558-1565: 2010.

Inperial college (London) David Nutt 教授らは、薬物が及ぼす有害な影響を、本人に対して9項目、他者へ対して7項目、分類した。本人に対して 1. 特異的な死亡 2. 関連する死亡 3. 特異的な障害 4. 関連する障害 5. 薬物依存 6. 特異的な精神機能障害 7. 関連する精神機能障害 8. 資産の喪失 9. 人間関係の破綻。他者へ対して 1. 傷害 2. 犯罪 3. 環境汚染 4. 家庭不和 5. 国際的なイメージ低下 6. 経済損失 7. 地域の結束の低下。それぞれ身体・精神・社会的な外に分類、各薬物を 0〜100 に点数化、100点の薬物を基準に比較補正した。

アルコール72点が最も有害な薬物と評価された。次いで、ヘロイン55点、クラシックコカイン54点であった。その他、メタアンフェタミン33点、コカイン27点、タバコ26点、アンフェタミン23点、大麻20点であった。

それではどの程度の飲酒ならば適切なのでしょうか。いくつかの調査研究によると成人男性の場合、ビール350〜500ml/日位が最も健康的であると言われています。しかしお酒に弱い方や女性の方はより少ない量となるでしょう。そこで以下のような質問もご参考にして下さい。世界的に用いられているスクリーニングテストです。

あなたは今までに、自分の酒量を減らさなければいけないと感じたことがありますか?
あなたは今までに、周囲の人に自分の飲酒について批判されて困ったことがありますか?
あなたは今までに、自分の飲酒についてよくないと感じたり、罪悪感をもったことがありますか?
あなたは今までに、朝酒や迎え酒を飲んだことがありますか?


(Ewing,J.A:Detecting AIchoholism JAMA252:1905-1907,1984)

このうち2つ以上あてはまるとアルコール依存症の傾向があります。実は心当たりのある方が少なくないのではないでしょうか。しかしそのような方も、自分だけは大丈夫だろうと思うかもしれません。と言いますのは、アルコール依存症という病気はなかなか自覚を伴わないのです。周囲は問題だと思っていても、本人はそれを認めようとせず、飲酒を止めないで、病院へ行こうともしません。このような考え方は「否認」と呼ばれ、アルコール依存症をはじめとした物質摂取や行動異常を伴う精神障害によく見受けられる現象です。従って治療の入口は、自分でも「まずい、このままではいけない」と思うようになるところから始まります。そして現実的な生活や仕事上の問題に直面し、「どうにかしなければならない」と思うことが必要です。銀座泰明クリニックはお酒に関わる様々なご相談に乗り、適切な治療や援助手段をご提供いたします。必要に応じ、内科・消化器科をはじめ各科と併診し、状況に応じ、専門病院や大学病院へご紹介いたします。「まずい」と思ったら、お気軽にご相談して下さい。次回はコーヒーや甘い物に関してお話します。
2006.04.22 Saturday 12:40 | - | trackbacks(3) | 

受診しない代わりに〜ニコチン依存症

前回は受診が遅れてしまう理由として、患者さんが「心」の病気を、気が付かない・仕方がないと思ってしまう・認めたくない、など挙げました。いずれも本人と社会の認識の問題と思われます。残念ながら日本ではまだ気楽に受診できる雰囲気にないのですが、そうなれば多くの方々が早く楽になり、仕事も生活もより充実すると期待しております。

その代わり世の中では様々な物質や方法が用いられています。お酒や煙草はその最たるもので、世界中の国々で有史以前から用いられてきました。いわゆる「嗜好品」と呼ばれるもので、一種の「文化」にもなりえていますね。しかしこれらは「精神医学」の立場から見ると立派な「精神作用物質」と言えるのです。いずれも少量で精神を賦活し、大量で鎮静をさせます。しかし薬理作用としては効率が悪く、特に困ったこととして「副作用」を生じます。お酒は酩酊や二日酔いから始まり、依存症となれば肝硬変や肝癌に至ります。煙草が肺癌を生ずることは有名ですが、他にも動脈硬化、脳卒中や心筋梗塞なども招きます。いずれも健康や生活を害する場合は、「依存症」として治療の対象になるのです。日本では煙草がいよいよ禁止の方向にあり、医療や公共機関では完全禁煙となりましたし、4月からは保険診療の元で禁煙のための診療が可能になりました。



銀座泰明クリニックにおいても皆様の禁煙をサポートしてまいります。具体的には、喫煙をニコチン依存症と捉え、離脱に努めます。では喫煙をはじめたきっかけや、続けている理由などを見直し、生活や行動を客観的に把握していただきます。恐らく不安・焦燥といった情動が背景にありますので、それへのより良い対処方法を探します。場合によって精神安定剤も処方いたします。大袈裟なようですが、なかなか自分一人では止められず、無理に止めるとイライラしたり、過食したりもするため注意が必要です。お酒に関してはまた次回ご説明いたします。
2006.04.16 Sunday 12:39 | - | trackbacks(1) | 

受診が遅れてしまう理由

前回は、患者さんがうつ病を発病しても受診に至るまで2〜3ヶ月かかってしまうことをお伝えしました。身体の病気では考えられない程の長期間を要していますね。今回はこの要因についてご説明させていただきたいと思います。



まず、患者さんがそれを病気であると気づかないことに一因があります。うつ病はその名の通り、気分が鬱々として、意欲がなくなり、何も面白く感じられなくなる病気です。軽症の場合は気分の変化等で済みますが、病状が進むと、眠れなくなったり、食欲が落ちたり、頭が重くなったり、体が怠くなったりと身体の症状が出現します。

患者さんは気分の沈みを「心」の病気とは思えず、何か心当たりとなる事柄があれば仕方ないと考えてしまいがちです。特に失敗や挫折をして落ち込んでいる時に、病院へ行こう、と考えるのは不自然かもしれません。しかし身体の症状が生ずると「体」の病気と思い、内科や婦人科など身体科を受診するのです。各科では検査をしても特に異常なく、「ストレスでしょう」とか「気のせいでしょう」と片付けられてしまうことが少なくありません。これは身体科の医師が「うつ病」のことをよく知らないことにも問題があります。このため一般の方々にはさることながら、身体科の医師へもうつ病をはじめ「心」の病気についてよく知っていただけるよう、最近では厚生労働省や日本医師会をはじめとした公的な機関からも教育活動が盛んに行われているところです。



次に、患者さんはそれを病気と思っても「心」の病気とは思いたくないという心理があります。特に日本人には昔から「精神主義」「根性主義」とでも言うべき文化があり、失敗や挫折をして落ち込むことを「弱い」とか「恥ずかしい」「情けない」とか考えてしまいがちです。このため具合が悪くても病院や医師に相談しようとは直ぐに思えないのでょう。確かに精神的な成長のためには失敗や挫折は「心の糧」になりますが、過ぎると「心の傷」になってしまいます。「傷」は自然に治ることもありますが、時に膿んだり広がったりもすることもありますので注意が必要です。少なくとも、うつ病のように、憂鬱な気分が2週間以上続いたり、身体の症状が現れている時は我慢しないで早く受診して治療を受けていただくことが必要です。成長するどころか、心理的にも社会的にも障害を残すことがありますから速やかに受診していただくことをお勧めします。

しかし「心」の診療科へ受診することはどなたも躊躇われるようです。特に「精神科」=「精神病」=「重症」というイメージが強く、受診するにはそれなりの決意や覚悟が必要となってしまうようです。受診した後も家族や友人へは内緒にしていることが少なくなく、中には会社に分からないようにと、健康保険を用いず、高額な自費で支払われる方もいます。これではなかなか気軽に受診するとはいきませんね。そこで以前は「神経科」という名称が用いられ、最近は「心療内科」という標榜が増えています。「メンタルクリニック」「ストレスクリニック」というところもあります。医療機関としても受診しやすいように配慮しているのです。



銀座泰明クリニックは更に名称から診療科名を外し、「心療内科・精神科」を標榜しました。敷居を低く・間口を広くし、少しでも患者さんが抵抗を感じないようにしました。内装や接遇もホテルやサロンを意識したアメニティの高さを心がけています。ご希望に応じて保険診療と自費診療とも選択できます。心身の不調を感じられている方はお気軽にお越しいただけると幸いです。どうぞ宜しくお願い致します。



ネット調査 8人に1人が「うつ」

一般の人の8人に1人に、うつ病あるいはうつ状態の可能性があることが、製薬企業のファイザー(東京)のアンケート調査で分かった。

うつ病・うつ状態の可能性があっても、実際に医療機関を受診した人は24%にとどまっていた。

調査は昨年2月、12歳以上の男女4000人を対象に、インターネット上で実施。米国の学会が作成したうつ病のチェック項目を基に回答してもらったところ、12%にあたる486人に、うつ病・うつ状態の可能性があった。

うつ状態を感じても受診しない理由として、最も多かったのが「行く必要を感じない」(44%)で、「病院への不信感」(20%)、「周囲に知られたくない」(15%)などが続いた。

受診について、63人は「家族や友人らに相談した」とし、受診率も83%と高かった。反対に「自分で判断した」423人の受診率は15%で、家族や友人の助言が、うつ病の早期治療のきっかけになっていた。

(2008年5月16日 読売新聞)
2006.04.09 Sunday 22:20 | - | trackbacks(6) | 

はじめまして

はじめまして。銀座泰明クリニックは平成18年4月1日、東京・銀座にて開院しました。心療内科・精神科を主に標榜し、夜間・土日も診療いたしております。都会で忙しく過ごされている皆様の心身の健康をご援助してまいりたいと思います。

これまで「心」の医療は皆様から望まれながらも、十分な提供がされてきませんでした。多くの方々が具合悪いにもかかわらず、適切な治療や援助を受けることなく、過ごされてきました。これは医療提供者として大変に申し訳なく思います。

筆者らが以前に都内の大学病院で調査しましたところ、うつ病の患者さんが発病から初診に至るまで平均2〜3ヶ月間を要していました (DUI, Duration of Untreated Illness)。比較的早い方でも2週間、長い方は半年、1年もかかっていました(初回うつ病エピソードの未治療期間と治療予後、日本社会精神医学会、平成15年3月)。これは驚くべき数字です。皆様が風邪や虫歯などにかかったら、数日以内に受診されると思います。熱が出たり、歯が痛んだりして、2〜3ヶ月間も我慢される方はいないでしょう。ところが、うつ病をはじめ、「心」の病気となると受診するまでに、これほどの長期間を要してしまうのです。この要因に関してはまた次回以降ご説明したいと思います。

銀座泰明クリニックおよび銀座泰明だよりを、どうぞ宜しくお願い致します。

2006.04.02 Sunday 10:12 | comments(1) | trackbacks(0) | 
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