SELECTED ENTRIES
LINKS
SEARCH

スポンサーサイト

[ - ]

一定期間更新がないため広告を表示しています

2016.06.18 Saturday  | - | - | 

6月病とは

5月病は、みなさんご存じでしょう。新年度に仕事や学校、転居などで環境が変わり、最初のうちは緊張して頑張っていたものの、ゴールデンウィーク明けごろに気分が落ち込み疲れやすさを感じるようになる症状のこと。環境が変わった当人だけでなく、主婦も家族の生活リズムの変化に伴い、エネルギーを消耗し、同じように5月病になる人が多いのです。

 

それでも、これまでは6月になり新しい生活が落ち着くと症状が緩和する人が多かった。それが近年では、その状況が変わってきています。生活リズムはつかめても、学校や職場の嫌なところが見えてきて「こんななずではなかった」と落胆したり、人間関係がうまくいかずに悩んだり、具体的な問題が浮き彫りになってくるのでしょう。真面目な人ほど、「しっかり頑張らなければ」と自分を追い込んでしまい、心身の不調が収まらず、6月の梅雨という気候も影響して、一気に気分が落ち込んでしまうようです。このような状態を爍況酩足と位置づけ、医学的には適応障害の一つとされています。

 

そもそも6月は、雨や曇りで太陽の光が遮られ、1年のうちでもっとも日照時間が少ない時期。日照時間が短いと、心のバランスを整える脳内神経伝達物質・セロトニンの分泌が減少し、うつ病などの精神疾患にかかりやすくなるのです。

 

人は体内時計の指令によって、日中は活動し夜間は休息するリズムで生活していますが、朝の光をしっかり浴びることができないと、体内時計のリズムが乱れ、心身にさまざまな悪影響を及ぼします。

 

実際、東北・山陰地方での自殺率が高いのは、日照時間が少ないことが影響していると指摘されているのです。また、日照時間の少ない冬に発症し、気候のさわやかな5月ごろに自然に回復してくる「冬季うつ病」という病もあります。逆に、うつ病や睡眠障害の治療には、光を浴びる「光療法」を用いることもり、光が気分に作用していることは明白です。

 

ただでさえ湿気が高くジメジメし、日が差さない不快な時期にもかかわらず、6月は1年のなかで唯一、祝日のない月。5月病を引きずったまま、ゆっくり休めない6月は意外に負担の大きい時期だということを認識しておいたほうがよいでしょう。

 

適応障害は頑張る人ほどなりやすい

6月病のおもな症状は、頭痛、抑うつ、不眠など。最初は、何となく疲れがとれない、気分が落ち込みがちという程度だったのが、次第に物事に集中できなくなり、今まで楽しいと思っていたことに喜びを感じられなくなってしまいます。問題解決力が低下し、いろいろなことが滞りがちになると、自分に対する自信も失い、最終的には「自分は役に立たない人間だ」などという自己否定の感情がわいてくるのです。

 

イライラしているうちは、まだエネルギーがある証拠。活発な活動を促す脳内神経伝達物質のアドレナリンやノルアドレナリンが充足している状態です。うつ状態になると、イライラする元気もなくなって、外出も億劫に。家に閉じこもりがちになっていきます。

 

この症状に陥りやすいタイプは、まじめで几帳面な人。何事もきちんとしなければ気が済まない完璧主義が多く、体調が悪くても休んだり、手を抜いたりすることができません。周囲の人に助けを求めることもせず、いろいろなことを自分ひとりで抱え込んでしまいがちです。こうした人は、新しい環境に適応しようと頑張りすぎて、適応障害を起こすリスクも高くなります。

 

ゴールデンウィークといっても、サービス業や主婦など、普段よりかえって忙しい人も少ないでしょう。5月の連休が明けたあと、さらに頑張り続けた挙げ句、6月に入る頃には、くたくたになってしまう人も多いのです。

 

誤解されやすいのですが、適応障害は環境に適応できない弱い人がなるのではなく、適応しようと頑張って、もうこれ以上頑張れないというところまで無理をしてしまった人がなる病気です。心身の不調を感じたら、まずは休養するのが鉄則。決して、できない自分を責めないこと。今は自分の心が弱っている時期だと認めてあげるようにしてください。

 

規則正しい生活をして没頭できる趣味を持つ

心身の不調が深刻化する前に、早めに異変に気づくためには、自分を客観的にみることが重要です。セルフチェックリストを使って、思い当たることがないかどうか確認してみましょう。とくに集中力や問題解決力が低下すると、家事や仕事がスムーズにはかどらなくなってきます。そこで「自分はダメだ。怠けていてはいけない」と追い詰めないこと。むしろ、「自分は十分に頑張ってきたのだから、少し休んだほうがいい」と、自分を甘やかすことが大切です。

 

セルフチェックリスト

http://www.ginzataimei.com/case/self_check.html

 

家族や同僚など周囲の人に対しても、「きちんとやりなさい」と責めるのではなく、「疲れているのでは?」とねぎらいの言葉をかけてあげるようにしましょう。

 

適応障害になると、5年後には40%がうつ病に移行するというデータもあります。うつ病が重症化すれば、休養は1日や2日というわけにはいかず、数ヵ月、数年に及ぶことになりかねません。ですから、初期段階での適切な対処が大切なのです。

 

セルフチェックの結果、4点以上の人は、かなり無理をしている状態。早めに精神科や心療内科を受診しましょう。2〜3点の人は注意が必要な状態です。積極的に休養をとようにしてください。

 

基本は、規則正しい生活を目指すこと。睡眠は7〜8時間が目安ですが、年齢に伴い必要とされる睡眠時間は徐々に少なくなっていきます。日中に眠気がなく過ごせるくらいの睡眠時間が、最適と言えるでしょう。

 

また、多くの人がこの時期のエアコン使用を控えがち。本格的な夏ではないというのが理由のようですが、それよりも快眠を目指す環境作りのほうが大切です。除湿モードにセットして、寝室の温度と湿度を上手に調節しましょう。

 

寝る前には、テレビやスマホを見るのを控え、照明を落としてリラックスタイムを。眠れないまま布団の中にいると、心配事ばかり頭に浮かび、よけいに眠れなくなるという悪循環に陥ります。ですから、どうしても眠れないなら、いったん布団から出て、自然に眠くなるまで待つのをおすすめします。寝付きが悪い人は、遅寝・早起きを試みることで、熟睡できるようになるでしょう。

 

体内時計をリセットし、腸の働きを促すためには、朝食も不可欠。腸の動きを促し、環境をよくしておくことが体調管理には重要なのです。

 

ストレスがたまってつらいときは、周囲に助けを求めましょう。真面目な人ほど、一人で問題を抱えがちです。しかし、ギリギリまで我慢せずに、誰かに相談に乗ってもらうようにしましょう。人に話すことで、物事を別の角度から見られるようになり、気持ちが軽くなることも多いものです。

 

ストレス解消のため、週に1〜2回は、趣味など自分の好きなことをする時間をつくるのもよいでしょう。自分が楽しい、心地よいと思えるものであれば、何でもかまいません。一般的には、いつも自分がしている行動の真逆のことをすると、気分が晴れてよいと言われています。普段あまり動かずデスクワークの多い人は、運動で汗を流すとリフレッシュできるでしょうし、逆に家事が忙しい、あるいは体を動かしているという人は、読書や手芸がいいかもしれません。写経や最近、再びブームになっている大人の塗り絵なども、集中でき雑念が消えて、あれこれ悩まない時間ができるため、気分転換には最適です。もちろん、一人で何かにトライするだけでなく、共通の趣味をもった人たちと交流する機会をもてば、楽しみが共有できてさらにいいと思います。

 

ただ注意したいのは、食でストレスを発散すること。確かに甘い物を食べるとセロトニンの分泌が促され、幸福度が高まるとは言われていますが、食べ過ぎになると問題です。たとえば、シュークリームを5個も10個も食べてしまい、罪悪感に苛まれて後で吐くようになると、これはもう摂食障害という病気。ストレス解消で食べるときは、ふだんは買わない高級スイーツを1つだけ奮発する、少しだけ上等な肉を買う、おしゃれしてレストランに行くなど、量よりも質で満足感を得るのがポイントです。気の合う友人とおしゃべりしながら食べると、食べ過ぎを防ぎ、気分転換にもなるでしょう。

 

梅雨が明ければ、厳しい夏がやってきます。心身の不調を夏に残さないためにも、いまの季節に無理は禁物。自分の状態を客観的にチェックして、早めのリセットを心がけてください。

 

【保存版】家族が倒れた時
慌てないための 新知識

 

構成◎中山あゆみ 助言◎茅野分/婦人公論6月28日号より

 

2016.06.18 Saturday 08:58 | - | trackbacks(0) | 

薬物依存症の治療共同体「ダルク」とは

[ - ]

2016年2月3日、清原和博さんが覚せい剤取締法違反で逮捕されました。2014年に週刊誌で使用疑惑が報じられましたが、本人は頑なに否認し、代わりにお遍路をしたりテレビ番組で潔白を主張したりしていたところでしたから、世間は騒然としました。そして、マスコミは連日連夜、清原和博さんの言動や人格を問題視しました。

覚醒剤の所持は反社会的勢力の資金源となるため、厳しく取り締まらなくてはなりません。しかし、本人の使用に関しては刑罰を与えるのみではなく、「薬物依存症」という「脳と心の病気」として診断し、治療しなければなりません。覚醒剤の使用は他の誰よりも、使用した本人を傷つける、いわば「自傷行為」とも言えるからです。

薬理学的に珈琲・紅茶・緑茶(カフェイン)や少量のお酒(アルコール)・タバコ(ニコチン)なども覚醒作用を有していますが、法律学的に「覚せい剤」とは「アンフェタミン」「メタンフェタミン」、およびそれと「同種の作用を有する物質であつて政府の指定するもの」と規定されています。これらは脳内の「ドパミン」を非常に賦活させ、高度の覚醒、感情の高揚、多弁・多動など一種の「躁状態」をもたらします。本人の「快感」はいまだかつてないほどで、田代まさしさんの著作(画像)によると、「ものすごく美味しい料理を食べた時に出るドパミンが30、気持ちいいセックスが100だとしたら、覚醒剤を使った時にはドパミンが1000以上も出ている」といいます。

マーシーの薬物リハビリ日記

しかし、長期使用により、幻覚・妄想、精神運動興奮など「統合失調症の陽性症状」に類似した症状を起こし、その後、意欲減退、無為・自閉など「統合失調症の陰性症状」のような状態に至ります。また「依存・乱用」を起こしやすく、連用により「耐性」を生ずるため、大量摂取するようになり、病状は加速的に進行します。すると使用した本人は覚醒剤のことしか考えられなくなり、それまでの仕事や学業などの社会生活を営めなくなります。このため、覚醒剤は使用した本人はもとより、家族・地域・社会、そして国までも滅ぼす恐れがあり、世界中の国々で禁止されているのです。

1983年、日本民間放送連盟は「覚醒剤やめますか?それとも人間やめますか?」というCMを数年間、放送しました。薬物依存症の患者さんを侮蔑するような表現ですが、まだ使用したことのない国民へ向けた必死の比喩だったのでしょう。1989年からは財団法人麻薬・覚せい剤乱用防止センターによる「ダメ。ゼッタイ。」が用いられるようになりました。しかし、これらのキャッチコピーは、使用してしまったけれど、これから止めていこうとする人々への偏見や差別を招く可能性があり、患者さんの治療や支援に関わる団体より批判の声が上がっています。

それでは、薬物依存症への適切な対策とは何でしょう。それは正しい知識や情報と、そのための教育・医療・福祉です。これまで一般市民へはもとより、薬物依存症の患者さんも逮捕・収監されるのみで、適切な教育・医療・福祉を受けられませんでした。刑務所での薬物依存症に関する治療・教育は十分と言えず、逆に初犯者が再犯者より売買の方法を学んだり、反社会的勢力へ加わったりすることもあるそうです。さらに、出所後は「犯罪者」「前科者」などのレッテルを貼られ、仕事に就いたり、家族と暮らしたりすることが困難となり、孤独や寂しさから再び再使用に至ることも少なくありません。昨今、男子・受刑者の1/5、女子・受刑者の1/3が覚醒剤取締法違反で、再犯率は50%以上と言われています。

そこで、薬物依存症の患者さんへ尽力されている「ダルク」をご紹介しましょう。「ダルク」とは "DARC. Drug Addiction Rehabilitation Center" という略語で、近藤恒夫さんが1985年に作られた、薬物依存症の患者さんのためのリハビリ施設です。東京の日暮里からはじまり、現在は全国に50か所ほどあります。入寮者は3〜6カ月間、共同生活を送りながら、社会復帰を目指しています。いわゆる「治療共同体 Therapeutic Community」です。リハビリのメインは1日3回のミーティング「かつて何が起きて」、「いつもどのようだったか」、そして「今どのようであるか」、この3つだけを話します。聞く側は意見や感想など一切何も言わず、「言いっぱなしの聞きっぱなし」を基本とします。これを我慢して延々と続けていると、他人の話に耳を傾けられるようになり、自分の気持ちを素直に話せるようになるのだそうです。薬物依存症の患者さんは、ともすると自己中心的で、他人の意見を聞いてこなかった人が多いため、黙って人の話を聞くことにより、他者を尊重できるようになります。また虚勢を張ることも多いため、等身大の自分に気づくことができるようにもなるのだそうです。

拘置所のタンポポ

薬物依存症の患者さんの病前性格は、アメリカ精神医学会の定義する「クラスターB、劇場型」のパーソナリティ障害に相当すると思います。すなわち、感情的に混乱しやすく、周囲の人々を巻き込む傾向のあるパーソナリティ障害です。具体的には、自己顕示欲が強く、周囲の関心を引くため、芝居がかった言動をする「演技性パーソナリティ障害」、自分を特別視して尊大になり、自分の利益のために他人を利用する「自己愛性パーソナリティ障害」、さらに他人の気持ちをわきまえず、攻撃的で規範に反する行動を繰り返す「反社会的パーソナリティ障害」、その反対に自己評価が低く、生きることが苦しく、周りから見捨てられることを恐れる「境界性パーソナリティ障害」などです。

これらは遺伝的な素因のみに起因するのではなく、幼少期からのトラウマ、心的外傷を重ねて負ったことにより生じると考えられています。例えば、親から虐待されたり、逆に過保護・過干渉にされたりしたこと、両親の不仲や病気などから機能不全家族に育ったこと、兄弟・姉妹の間で不公平に育てられたリしたことなど挙げられます。さらに小中学校でいじめられ、不登校・ひきこもりに陥ったりしたことなども加わると、適度な自尊心や自己肯定感を抱くことができず、尊大になったり、卑下したりするようになるのです。

従って、薬物依存症の治療や援助には「ダルク」のような「治療共同体」において、薬物から離脱することのみならず、あるがままの自己を見つめ直し、他者との関係性を再構築していくことが望まれます。冒頭に記載した清原和博さんも栄光と挫折のはざまを行き来することで、本当の自分を見失い、薬物依存症に罹患されたのではないかと推測します。だからこそ、恥や外聞をかなぐり捨て、「ダルク」にて回復されること祈念いたします。

田代まさしさん

田代まさしさんと筆者

銀座泰明クリニック

2016.03.12 Saturday 13:17 | - | trackbacks(0) | 

内観研修所と医療施設との円滑な連携のために

第18回 日本内観療法医学会

内観研修所と医療施設との円滑な連携のために

○茅野分1) 水野雅文2) 真栄城輝明3)

1)銀座泰明クリニック 
2)東邦大学医学部精神神経医学講座
3)佛教大学・大和内観研修所

現代の医療施設、特に小規模のクリニックにおいて集中的なサイコセラピーを行うことは困難である。しかし、慢性化した気分障害や不安障害、そしてパーソナリティ障害など対象となる患者は数多い。これらに対して、これまで精神分析療法や認知行動療法など西洋のアプローチがしばしば用いられてきた。本発表では、東洋の「内観療法」を内観研修所と連携して施行した症例を提示して、生じた様々な問題を考える。

内観療法は6泊7日の「集中内観」を基本とし、内観研修所に宿泊、朝5時から夜9時まで、トイレやフロの時間も「1分1秒、惜しんで内観する」(吉本伊信)。一般の医療施設では不可能な治療のため、内観研修所へ「紹介」し、内観後は医療施設へ「逆紹介」する。

主治医は診療において集中内観について詳細な説明を行った。特に、「外観(迷惑をかけられたこと)」から「内観(迷惑をかけたこと)」へ転じる「3日目の壁」を乗り越えられるように激励した。そして、主治医は「診療情報提供書」、患者自身も「自分史(生育歴)」を執筆し、内観へ持参するよう指導した。「自分史」は「外観」を呈していることが多いが、患者が自分の半生をどのように認知しているのか理解する上で有益である。そしてこれが最終日の座談会においてどのような「内観」へ変容し語られるのかが集中内観の醍醐味とも言えよう。

内観面接者から主治医へは、集中内観の経過や結果が「フィードバック」された。課題としては、集中内観を完遂できる症例の「見極め」、中断した際の「フォローアップ」、そして「日常内観」への「動機づけ」などが挙げられる。いずれの場合においても、集中内観は「入門」であり、大切なのは「日常内観」であると説明する。しかし心病む患者が一人で内観を続けるのは困難であり、主治医は内観的な診療を意識しなければならない。

銀座泰明クリニック

2015.10.24 Saturday 18:23 | - | trackbacks(0) | 

内観療法のワークショップに参加して

内観ワークショップに参加して/第111回日本精神神経学会学術総会より

茅野分/銀座泰明クリニック、筆者は、内観療法に関心を持つ精神科医であり、日本内観医学会の会員でもある。


平成27年6月4日から6日にわたって、大阪国際会議場およびリーガロイヤルホテル大阪において、第111回日本精神神経学会学術総会(世界精神医学会(WPA)との併催)が開催された際に、内観療法のワークショップが行われるというので参加した。6月5日(金)のことである。当日は8時半という早朝からの開始であったにもかかわらず、170名収容の会場に120名前後の参加者を集めて行われた。ワークショップの演題は、「内観療法の実際−症例編−」。演者は3名。当日の講演順に内容の一部を抜粋して紹介しよう。



トップバッターとしてマイクを握ったのは、「医療法人清潮会三和中央病院長」の「塚崎稔先生」であった。「症例からみる内観治療」と題して病院臨床のなかでの内観療法をご紹介いただいた。エビデンス・ベイストなご発表で、アルコールはじめ物質による精神・行動の障害が過去11年間で296/396人と圧倒的に多いことに驚かされた。症例1はうつ病リワークプログラムに通院中の非定型うつ病、30歳、男性。我欲が強く、自己中心的で他者からの承認を求め悩んでいた。集中内観を経ると「自分が周りの人からどれほど支えられ生きてきたか実感でき、自分でも驚くほど穏やかな気持ちになれました」と述べたという。症例2は医療観察法通院プログラムにある50歳、男性、妄想性障害、アルコール依存症。幼少期から実父の虐待を受け、共感性を欠いて育った。45歳時、被害妄想から近隣住人を刃物で切りつけた。入院後も心を閉ざし、周囲と交流を絶っていた。そこで月2回、10ヶ月間もの内観療法を実施。すると「病弱な母へ迷惑をかけました、被害者へも申し訳ありません」と丁寧に述べるようになったとのことだった。

次に「心身めざめ内観センター主宰」の「千石真理先生」が演台に立った。「ハワイの内観研修背景と実践」と題して、北米文化圏における内観療法が紹介された。アメリカの終末期ケアや緩和ケアにおいて仏教や禅にスピリチュアルケアとしての役割を期待しているとのことだった。日本人としては誇らしい気持ちにさせられるお話であった。症例は60代、白人男性、アルコール依存症、3回目の結婚、日本人女性と離婚の危機にある。いずれの離婚もアルコール依存症が原因だった。千石先生との内観カウンセリングにより、幼少期からの父親との確執が解消し、アルコール依存は寂しさを紛らわせるという気づきが得られ、離婚の危機も救われた症例であった。

最後の演者は、「佛教大学特任教授・大和内観研修所長」の「真栄城輝明先生」であった。「病院臨床と内観研修所を舞台に」と題して、Psychotherapyとしての内観が紹介された。症例1は統合失調症の母親を持つ青年、母親へ甘えた記憶はないと内観を拒否し、父親の内観からはじめた。それでも、運動会の記憶の中、母親が深夜にお弁当を作ってくれている姿を思い出し、泣き崩れた。そして「母は僕のことを愛してくれていた。僕は愛が見えなかっただけ」と語り、一度も見舞ったことのない母親の病院へ行った。症例2は被害妄想を抱く高齢の女性。主治医の承諾を得ず、突然やってきた。他者と同様に静かに内観する条件で開始。すると、長男が高校時代に成績低下した時に本人を責めてしまい、結果、自死を遂げたと号泣した。この告白を機に女性は憑き物が落ちたように穏やかになった。「内観療法により統合失調症が治る」ことはないけれど、「物の見方が変わり、心に平安が訪れ、感謝報恩の気持ちで暮らせるようになる」とのこと。まさに内観療法の真骨頂といえよう。

このところ内観療法は、この学会では3年連続でシンポジウムとワークショップを開催してきたという経緯が司会者(小澤寛樹先生・堀井茂男先生)からの紹介があり、毎年のように多くの参加者を集めてきたようである。質疑応答も活発に行われ、当日はセッション終了後にも演者を捕まえて質問している方もいた。21世紀は脳科学の時代といわれる時代に、なぜ内観療法なのか、それはやはり精神医学は「人間関係」を無視しては成り立たないからだろう。薬物療法が主体の精神科医療にあって、少なくない精神科医たちはそれを補う方法を探し求めているようである。ちなみに、今回の大会テーマは「翔たくわれわれの精神医学と医療−世界に向けてできること−」であった。たとえ精神疾患の原因が脳の部位に見つかったとしても、精神医学が「翔たく」ためには「体」はもとより、「心」や「社会」だけでなく、「魂」も含めた人間存在の全体を見渡す必要がある。そうなると、精神科医療者にとっては、内観療法への期待はますます高まっていくであろう。少なくとも、今回のワークショップに参加して筆者はそう感じた。

銀座泰明クリニック

 
2015.09.10 Thursday 17:06 | - | trackbacks(0) | 

共感の技術

[ - ]
前回「大人の発達障害」にて「自閉症スペクトラム障害」の基本症状として、「三つ組みの障害」すなわち「社会性、コミュニケーション、イマジネーションの障害」をご紹介しました。「自閉症」という名称の通り、他者との関わりを避け、自分の価値観にこだわる背景には、この「三つ組みの障害」があるわけです。さらにこの障害の心理特徴として「共感」の不足が挙げられます。

「共感」とは相手の気持ちを自分の気持ちのように感じる心理現象です。通常の社会生活を営む上では当たり前な心理のようですが、これを欠くことにより、様々な社会問題を生じます。職場不適応や家庭不和は典型例で、それが極まると犯罪や虐待などに至るわけです。従って、社会問題を解決・予防し、幸福な社会生活を営むためにも、「共感」を高めることが求められます。

そこで今回は、杉原保史先生の「プロカウンセラーの共感の技術」に学びましょう。共感するためには相手の立場や心理を想像すること(イマジネーション)が必要です。これは「言うは易く行うは難し」、なかなかできるものではありません。自分の立場や心理と異なるものは遠ざけてしまう傾向があるからです。特に、自分と利害の反する相手になるとなおさらでしょう。むしろ否認や拒絶の心理が生じてしまうものです。このため、共感するには「自分の視点から離れること」が第一だそうです。自分の立場や心理はひとまず置いて、相手の立場や心理を理解することに集中するのです。その際、価値や善悪の判断は抜きに、すべてをありのままに感じることが重要です。これはカウンセリングの基本姿勢であります。

具体的な技術としては、相手の話していることもさることながら、話していないことや話せないことへ想いを巡らすことが大事だそうです。カウンセリングを必要とする心理的な問題を生じている時は、矛盾や葛藤により混乱しているため、なかなか問題を「言語化」できません。さらに、心の深層に関わる問題になればなるほど表現は曖昧・混沌として言葉にならないそうです。そこで、カウンセラーは相手の視線、表情、姿勢などの非言語的な表現から、言外に語られている真意を推し量ります。そして、「あなたはその時どういう風に感じたのですか」と穏やかに言語化をうながしていきます。と言ってもすぐに回答を得られるものではありませんから、クライアントが自分の気持ちに注意を向けられるよう、繰り返し形を変え質問していくのです。

共感することの前提として、自分自身が共感された体験を持つことが求められます。まずは自分に対し肯定的な態度でいないと、相手に対しても肯定的な態度はとれません。いわゆる適度な「自己肯定感、Self- Esteem」を抱けているかどうかがポイントです。このため、精神分析家は教育分析といい、自分自身が精神分析を受けることを訓練として設けられ、まずは自分自身を肯定・受容できるよう取り組むのです。一般の方はそこまでの必要はないでしょうが、適度な自己肯定感や自己洞察は必要です。もしも相手を共感できない、自分の気持ちや考えに固執してしまうことを繰り返す際は、過去の体験や人生を振り返り、何がそれを妨害しているのか気づくことが望まれます。これを一人で行うことはとても難しいため、専門的なカウンセリングを受け、本当の自分を知ることをお勧めします。相手に共感するには、自分に共感することが前提なのです。



銀座泰明クリニック
2015.08.09 Sunday 10:58 | - | trackbacks(0) | 

大人の発達障害

2015年日本精神神経学会「成人発達障害」も満員でした。2011年2012年にて企画を立案した宮岡等先生は内山登紀夫先生にお話をうかがう形で「大人の発達障害ってそういうことだったのか」を著しました。発達障害はこれまで児童精神科の範疇に留められてきましたが、メディアの啓発もあり成人、大人の事例も散見されるようになりました。銀座泰明クリニックへも様々な理由で受診されていますので、これを機にまとめておきましょう。

発達障害は自閉症スペクトラム障害、注意欠陥障害、学習障害などを含みますが、最も問題とされていますのが自閉症スペクトラム障害です。これは広汎性発達障害、アスペルガー障害、高機能自閉症など様々な呼び名がありますが、近年、「自閉症スペクトラム障害 Autistic Spectrum Disorder. ASD」 に収束しつつあります。基本となる症状は、「社会性、コミュニケーション、イマジネーション」いわゆる「三つ組みの障害」です。具体的には、人よりも物に関心がある、こだわり行動(物を並べる、特定の物を集める、変化を嫌う)、言葉の遅れ、言葉の偏り、感覚過敏などです。子ども時代には、ごっこ遊びができない、グループに入れない、イジメられる、孤立的になる、突飛な行動をとる、エキセントリック、オタク、コミュニケーションに乏しい、発達の凸凹が目立つことなどです。これが大人になると・・・会社で世間話をできない、宴会に参加できない、派閥に入れない、パワハラに遭う、孤立的になる、コミュニケーションに乏しいなど挙げられます。家庭では・・・夫婦間・親子間の会話に乏しい、触れ合いに乏しい、コミュニケーションに乏しい、そもそも、愛に乏しいということになります。このため、職場不適応、夫婦不和といった適応障害という主訴で受診することが多く、よくよくお話をうかがうと、背景に発達障害が見えてくるわけです。

「注意欠陥障害 Attention Deficit Hyperactivitiy Disorder」 は不注意、多動性、衝動性を特徴とします。具体的には、気が散る、じっとしていられない、思いついたらすぐ行動するなどです。「学習障害 Learning Disorder」は知的障害がないにもかかわらず、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」こといずれか一つ以上に支障を来たす障害です。

発達障害は生得的な特性であり、治る/治らないというものではありません。特性を多少緩めながら環境調整をしながら周囲と折り合い生きてまいりましょう。その際、特にASDの方は内省を苦手とするものですから、周囲が問題点を分かりやすく指摘するとよいです。さらに、聴覚情報も苦手とするものですから、視覚情報として、言葉を文字にして渡すとなおよいでしょう。

発達障害、「障害」と診断するには、仕事や生活に支障を生じているわけですが、その手前で支障を生じていない方々は自閉的な傾向などを活かしています。すなわち、高度な集中力や記憶力、さらに発想力などを発揮しています。その極めた形が「サヴァン症候群」といわれる天才の方々です。このように、能力にも光と影があり、うまく光輝くよう、周囲の方々が配慮して下さることを願う次第です。



銀座泰明クリニック
 
2015.07.26 Sunday 23:04 | - | trackbacks(0) | 

「心の病、はじめが肝心 早期発見、早期治療の最新ガイド」水野雅文著



筆者(茅野分)の恩師、水野雅文先生による新書が出版されました。「心の病」に関する一次予防(発病予防)・二次予防(早期発見・早期治療)・三次予防(リハビリテーション)について、最新の知見が余すところなく、分かりやすく書かれています。一読して、水野先生の講義を聴いているような、座談会にてお話を聴いているような錯覚を覚えました。

なかでも、第3章「心の病を重くしないコツ、病気は治り方が大事」の一節は読みごたえあります。「乗り越えた実感が大事、価値観を大きく変えなければ、がんばりきれません」「罹患することを、かえって奇貨と考え、新しい自分を獲得していくことが大事です。人生の価値、楽しみを積極的に見つけましょう。とくに、自己実現の方法を会社以外に見つけることは、どんなに人にも大切です。精神疾患からの回復記念に『生き方は一つではない』と考え直してみるのもいいことだと思います」は水野先生ならではの「リカバリー」の定義ではないかと思うほどに説得力があります。心の病になることは、病自体の苦しみもさることながら、「心の病」であることの「スティグマ(偏見)」に、周囲の視線、そして自尊心が傷つき、苦しみます。このため、本当の「リカバリー」とは水野先生のおっしゃるように、病を「乗り越え」、むしろより良い生き方や人生観を身につけることだと言えるでしょう。

さらに、第5章「『心に効く』生活習慣とは?」における「ポジティブシンキング」「『楽しいときを』を心に刻んでおく」「小さな趣味の大きな価値」「運動は『万薬の長』」「心の栄養−『地中海ダイエット』」「家族関係をつくり直す」は水野先生の人生観が具体的に語られているようで貴重です。「毎日、笑顔で」「ポジティブに」働くための生活習慣がいくつも紹介されています。心の病に罹(かか)られた方はもとより、健康な方も、より健康になるため、ぜひ一度ご一読くださいませ。


銀座泰明クリニック
2015.07.05 Sunday 09:30 | - | trackbacks(0) | 

内観療法

それでは怒りや憎しみを減じ、愛や喜びへ変えるにはどうすればよいのでしょう。一つの方法として、日本の伝統的な自己変革的な治療法である「内観療法」を挙げることができます。
 

吉本伊信らが1940年代に開発した自己観察法です。「悟り」(宿善開発、転迷開悟、一念に遭う、など)を開くことを目的とし、「いかなる境遇にあっても感謝報恩の気持ちで幸せに日暮らしできる」ために行います。
 

内観者は6泊7日の「集中内観」を基本とし、内観研修所に宿泊し、「内観三項目」「ご迷惑かけたこと」「お世話いただいたこと」「して返したこと」を母からはじめ、父、兄弟姉妹など、これまでの人生に関わった方々を順々に調べ尽くします。朝5時から夜9時まで、トイレやフロの時間も「1分1秒、惜しんで内観する」。その間、面接者が1−2時間おき、1日に8−10回、約5分の面接を繰り返します。


これにより、人生の不安・苦悩・動揺などから逃げず、目をそらさず、むしろ不安・苦悩・動揺に沈潜し、「生の実相」を覚知します。そして、自分の外部にある富や名誉・社会的地位、そして死などに対し、いわば「無関心」の態度を堅持することで、「自由」「心の平静」を得ることができるのです。


内観療法の治療機序は、内観三項目を想起し、主観的および客観的に自己観察(セルフ・モニタリング)を行うことにより、「自己発見」へ至ります。その際、母性的な「恩愛感」の庇護のもとに父性的な「自責感」を深めることで、「我執から解放」されることを特徴とする、東洋・日本ならではの心理療法です。



銀座泰明クリニック
 

2015.04.30 Thursday 22:29 | - | trackbacks(0) | 

半沢直樹/TBS・ドラマより

[ - ]

バブル期入行世代の葛藤と苦悩に満ちた戦いを鮮やかに描き出す。
基本は性善説。ただしやられたら倍返し!
型破りのバンカー、半沢直樹の伝説の始まりだ!

いまさらですが、堺雅人さん主演のドラマと言えば「半沢直樹」をご紹介しないわけにはいきません。バブル崩壊後の都市銀行を舞台に中間管理職の葛藤と苦悩に満ちたドラマが繰り広げられます。

「部下の手柄は上司のもの、上司の失敗は部下の責任」「銀行は人事が全てだよ」「銀行は晴れた日に傘を貸して、雨の日に取り上げるって」「どんな仕事をしてもええ、せやけど人と人とのつながりだけは大切にせなアカン、ロボットみたいな仕事なんかしたらアカン」「人の善意は信じますが、やられらやり返す、倍返しだ!それが私の流儀なんでね」などの名言が聞かれました。

いずれも地位と正義が交錯するなかで、生じざるをえない矛盾といってもよいでしょう。実社会では分かっていても語られてことのない真実ですが、ドラマではデフォルメされ、セリフとなり語られました。そして半沢直樹に「倍返し」させることで、痛快な物語となりました。

しかし「倍返し」することはよいことでしょうか?上司らは涙を流し、土下座をし、半沢に軍配が上がりました。われわれ視聴者は胸のすく思いでした。ところが実際の世の中へ目を転ずるとそうも行きません。アメリカとイスラムの戦争しかり加害者と被害者は常に入れ替わり憎しみは連鎖します。したがって、お返しすることなく、むしろ「罪を憎んで人を憎まず」という「赦し(ゆるし)」が必要ではないかとも思う次第です。

銀座泰明クリニック
2015.04.29 Wednesday 13:41 | - | trackbacks(0) | 

Dr. 倫太郎/日本テレビ・ドラマより

[ - ]



これはある精神科医の物語。彼の名前は、日野倫太郎(堺雅人)。傷ついた人々の心にとことん寄り添い、その病める心を解きほぐしていく。書籍も出版し、テレビにも出演する。彼の診療を待ち望む人々は増える一方だ。

そんな彼なのだが、自身の恋愛は全く不得手だ。「恋愛とは一過性の精神疾患のような状態である」とさえ言っている。ある日、大学の理事長、円城寺との会食で、一人の女性と出会う。彼女の名前は、夢乃(蒼井優)。新橋の売れっ子芸者だ。

この出会いが彼の人生を大きく変えていくなど、この時の倫太郎は知る由もなかった・・・
 

いよいよはじまりました。半沢直樹で大ブレイクした堺雅人さん演ずるスーパー精神科医のテレビドラマです。第1回目を拝見しました。型破り、それはない、という、コメディ、フィクションですが、そんな精神科医がいてくれたらいいのにな、という願望かもしれませんね。「傷ついた人々の心にとことこん寄り添う」ため、時間を惜しまず、場所を選ばず、診療を行います。第1話では通りすがりの方と飛び降り自殺に心中しました!(クッションの上に着地)。この先どのような展開になっていくのか・・・

倫太郎は夢乃との治療関係を逸脱していきます。医者と患者との倫理的な関係から、男女の情欲の関係に陥っていくのです。といいますのは、「Dr.倫太郎」には原作があり、そのような展開を迎えます(ネタバレを申し訳ありません、楽しみな方は後ほどお読み下さいませ)。「セラピューティック・ラブ」という小説です。「清心海(せいしんかい)」という精神科医が書いたそうですが、相当な実力の精神分析医です。500ページの大著ですが、テレビと合わせてお楽しみ下さいませ。

銀座泰明クリニック

Check
2015.04.22 Wednesday 10:11 | - | trackbacks(0) | 
 | 1 / 8 PAGES | >>
<< August 2016 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>